読書備忘録 『人が集まる中小企業の経営者が実践している、すごい戦略 採用ブランディング』を読んで
3冊目はこちら。
「人が集まる中小企業の経営者が実践している、すごい戦略 採用ブランディング」深澤了。
事前準備のメモ:
・読書の目的を決める:採用ブランディングの概略を理解する
・著者略歴を見てどんなバックボーンの人が書いた本なのか把握する:深澤了氏 長年 採用ブランディングに関わってきた方。リクルートと協業して多くの企業の採用戦略に携わった、採用ブランディングの発明者みたいな方。
・「はじめに」を読んで全体感を把握する: 採用ブランディングの理論から実践まで余すところなく解説している。
・「目次」を読んで全体の流れと論理構成を把握する: 採用ブランディングなら利益も得られる→ コンセプト化→共感重視の採用→ 21の法則→ 5つのポイント
・「おわりに」を読んで読後感の想像を広げておく: ジャイアントキリングの例もいろいろ載っていそう
・最初から最後まで1ページ2,3秒位でめくりながらざっくり全体的にだいたいどんなことが書いてありそうか雰囲気をつかむ:OK
第1章
差別化が難しく、競争の激しいレッドオーシャン(競争市場)を勝ち抜くための方法が採用ブランディングである。
大手企業は親子で学べて楽しめる施設として、安価な入場料でいろんな施設を作っているが、これは知名度向上を狙ったもの。(決してそれだけではないと思うが )
中小企業は、他者との差別化が見事になされた唯一無二の存在として、勝負に勝てる 差別化された市場で採用フローを行うことが戦う秘訣。 他社との違いは、特許技術などじゃなくて「チームワーク」などで問題ない。
ペルソナが具体的でないと、メッセージがぼやけ差別化がしにくくなる。例えばペルソナが給与や休日を重視するとして「他者との違い」を「チームワーク」とした場合、給与や休日を重視する人たちに「チームワーク」をどう訴求していくのか。(これは 納得。ずれてることが多そう。)
ブランディングと言う概念があるのは、企業は継続性を持たなければいけないから。(これは意外と知らなかった考え方。ブランドの存在目的に対する意識がなかった)
理念とは、会社が何のために存在し、社会に対して何をするのかが表されたもの。
社長を筆頭に採用に関わる社員全員が理念を共有し、理念に基づいて自分の言葉で語れる状態を作ることが理念共感採用の第一歩。
(誤植発見 P32 脅威の業績回復→驚異だよね)
採用における課題は、次の4つに集約される。①募集団が集まらない②望む人材が来ない。③途中離脱が多い。④内定、承諾率が低い。
採用ブランディングは、理念・共感を土台にして採用全体を捉える考え方で、実はとてもシンプルな考え方。
採用ブランディングの進め方は次の通り。①ターゲットに近い応募者を集め、②独自性のある先行フローを実施し、 ③フォローや教育を経てミスマッチの少ない採用を実現する(この本のキモは、この二項目に集約されていると言ってよい)
デイビット・アーカーが提唱したブランド・エクイティの4要素は、知覚品質、認知、ロイヤリティー、連想。
第2章
一貫性には「縦の一貫性」と「横の一貫性」と言う2つの方向がある。 全社員が自社の強みを行動に語れてこそ、採用市場で確実な効果が出せる。(遠い道のりと感じる)
結果が出るのは、次の公式に則るから。
B= (b×c)v
B=ブランド構築、b=behavior(従業員の行動) c= communication(パンフレットやウェブサイト、プロモーションなどの非人的部分)v=vision(理念・価値観) 自社の現状を公式に当てはめてみると、どこが欠けているのか、どこを強化したらいいかが見えてくる。(こうやって振り返られるのはありがたい)採用は面接や面談など、個別の接点が多いので、bの比重が高くなる傾向がある。
第3章
母集団至上主義から抜け切れないのは、採用担当者が採用するだけで評価され、定着や活躍まで評価の対象になっていないから。 採用人数ではなく、本来は採用した人がエースになった人数こそが評価されるべき。
確かにたくさんの人が集まれば求める人材に出会える確率は高まるかもしれないが、人数が多ければ多いほど、先行に手間と時間お金がかかる。
採用ブランディングで採用した場合、労働時間や休暇、給与等のスペックで勝負していないので、もっと給与や条件の良い会社に転職したい人と言う人の採用を抑えることができる。
応募者を理念共感マックスの状態にして入社してもらう。これが採用活動のゴール。
第4章
採用ブランディング21の法則を使って進めていく。
全社横断チームを作る。そうしないと「なんでこいつ入れたんだ」と現場と齟齬が生じる。
企業に訪問してワークをしながら企業のブランド化を徹底的に行なっていくが、多くの企業はワークショップを面倒くさがる。
自分たちの強みを出すと同時に、弱みも出す。弱みは隠さず、伝え方を工夫する。嘘はつかず、ポジティブに話す。
採用基準はとことん具体的にする。かかせないmust基準とあれば嬉しいwant基準に分ける。
ペルソナ設定も具体的に。こんな人おるかい、くらいでいい。それぐらいキャラが立っていないと、想像できないから。曖昧なままだと誰にも響かない。
ペルソナは採用基準ではない。少しでも近い人がいたら声をかけよう、という瞬発力を発揮するための基準。
自社の強みは3つに絞る。それぞれはありきたりな強みでも、掛け合わせると他社とそうそう被ることはない。
採用スローガンは腕のいいプロに任せる。
採用フローはMOSEALSモデルを基盤とする(AIDMAの法則みたいなもの)
採用の各施策を連動させる(ホームページとパンフレットなど)。連動や一貫性は大事だが、MOSEALSモデルに則れば、応募者の心理状態は違うので、ホームページとパンフレットの内容は変わってくるはず。
社長は最大の差別化要因。副業が広がり、フリーランス化が進んできた今、企業が何のためにあるのかを考えなければいけない。企業はますますコミュニティー化していき、それでもその企業に属する理由として、理念への共感は重みを増す。
内定者には、「学べるフォロー」で離脱者を防ぐ。ケーススタディで会社の理解を深める、課題を出して進捗報告をしてもらうなど。
第5章
効果の出る制作物のポイント:①理念や価値観を踏まえてコンセプトを明確にすること②ターゲットをつくること③コンセプトを踏まえたコピーを考えること④コミュニケーションの順番を間違えないこと⑤デザインクオリティを高めること
「20代で責任者に抜擢」→「23歳女性が部長に」など具体的に。20代といっても23歳と29歳ではぜんぜん違う
いくら具体的なエピソードが書かれていても、コンセプトに紐づいていなければ意味がない
コミュニケーションには、相手の理解に配慮した順番がある。いきなり本番に入らない
曖昧な言葉は徹底的に問いかけて、具体性をもったものに変える
デザインの二流感がすべてをだめにする
第6章
新しいマーケティングの言葉が作られるたびに、とびついてしまいがちだが、ブランディングの本質は極めてシンプルで、「すべての行程が理念に基づく」ことである
理念共感が高い人ほど、自分の人生への目的意識も高い。
全体の感想
先の2冊(これとこれ)に比べ、クリエイティブ寄りの話が多かったので、コピーライターの自分としては、実際の業務と照らし合わせて、実感を持って読むことができた。首肯することもあれば、「ああ、ふだんの仕事で全然できてないな、甘いな」と思わされることもあった。
デザイン面にも言及しており、「何を言うか」だけでなく「どう言うか、どう見せるか」も忘れずに手を抜いてはいけないということを注意している。事業会社の人事部の人間よりも、広告代理店や制作会社のクリエイティブ職にも読みやすく、実践的だと感じた。
それにしてもこれまで読んだ3冊とも、タイトルが長い。同種の本が多く、どうしてもサブタイトルは必要なのだろうが、ビシッと潔く決めてほしいところではある。勝手だが。
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