舞い上がる噴水と、昇華されない痛み ~光州への旅の記録7
光州への旅の記録1~6の続きです。
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5月の空に向かう噴水の白い水しぶきと、澄み渡る空を見上げた時の眩しい光、それを受けて青々と輝く新緑。
44年前のこの日も、こんな心地よい天候に恵まれた、5月のある日だったかもしれない。
感情を開放させるかのように、勢いよく噴き出す水しぶきの向こうに見えるのは、5.18民主化運動の10日間を記録する「全日ビル245」
ビルには、ヘリコプターから打ち込まれた245発の弾丸の跡が残されていた。
事件当時の一般市民の日常に入り込んできた恐怖。
当時の一般市民を襲った恐怖と悲しみを伝える絵本があった。
その地に宿った悲しみ、痛みを感じずにはいられない。
私には政治的な背景の真実はわからないけれど、どんな政治背景があろうとも、
身近な愛する人を失う悲しみや痛みは、人の共通の感情だ。
「全日ビル245」から見下ろした噴水の水は、止まっていた。
光州にしばらく滞在しながら活動をする山内光枝さんから、
当時の痛みを背負いながら慰霊祭に出席する人もいれば、
その場に出てさえ来れず、痛みを表に出せない人もいる、と聞いた。
水が記憶したその地に眠る感情は、空へと放出され、昇華することができるのだろうか。