光の航路と虹を見た日 ー 釜山にて
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釜山の旅の記録を残します。
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釜山の大学に4年間留学をしていた長女が、卒業を迎えた。
韓国の年度末は2月。
2月に行われた卒業式と、いったん帰国の荷物の引き揚げの手伝いをするため、釜山へ行くことを決めた。
今回の旅は、卒業式と、荷物の片付けと引き揚げの作業だけが目的の、2泊3日の予定だった。
卒業式の前日に釜山入りをするために、博多発の高速船ビートルの博多⇔釜山往復チケットの予約をする。
帰りは長女も一緒に帰国をする。
そして明日は釜山に向けて出発だ、という日の昼下がり、
旅の荷物も揃え終わった時、高速船ビートルの運営会社から、電話が入る。
ビートルの船体の一部に故障が見られ、急遽明日の便が欠航になるという連絡だった。
さあ、どうしよう。
釜山行きの飛行機を調べてみるも、今回の旅は、ホテルの場所や、荷物の関係で、どうしても船便を利用したい。
同じ博多港から釜山へと向かう、大型フェリーカメリアラインのチケットを入手しようと予約の電話番号にかけてみると、残席がわずかにあるものの、前日の予約は港に出向き、窓口で直接チケットを購入するしかチケットをゲットする手立てはないという。
チケット購入受付終了時間は17時、そのとき時計はすでに16時を廻っていた。
釜山行きを諦めるべきか。
でもやっぱり行かなければという、予感が走る。
そして17時ぎりぎりに博多港に到着し、どうにか次の日の釜山行きのチケットを手に入れることができた。
帰りは予約済の高速船ビートルが復活するだろう、その時はそう思っていた。
釜山へ向かう当日がやってきた。
3日後の日本帰国時の検閲では、感染症の陰性証明が必要で、乗船前に検査を済ませ、港へ向かう。
穏やかな日差しの中、釜山行きフェリーカメリアは、博多港を予定通り出港。
予定便の突然の欠航というアクシデントに見舞われながらも、太陽の光に反射する海面のきらめきの美しさに心を打たれながら、博多港を旅だった。
その日の航路は、終始、穏やかな日差しを浴び、光の反射が美しい。
途中、対馬を左手に見ながら、航路を進む。
対馬は私にとって思い入れの強い場所だ。
対馬の南端から北端までずっと、フェリーからその島を眺めていた。
古くから韓国と日本を繋いできた、そして、その要所となってきた対馬の風景を臨む航路はその日、美しい光の航路となっていた。
正午に博多港を出たカメリアラインが釜山港に入港する頃、日が暮れ始めた。
これまで何度か釜山を訪れたことはあったが、いつも飛行機を利用していたので、釜山港を訪れるのは初めてだ。
釜山港から歩いて10分ほどの場所に、釜山駅がある。
今回のステイは釜山駅のすぐ横に位置するホテルだ。
港から駅へと向かう道は、産業道路のような広い道が広がり、脇の歩道を釜山駅を目指してすすむ。
その道のりの周辺は、工事現場だったり、新しいタワーマンションがあったり、この土地は埋め立てられ、現在開発が進行中の土地なのだろうか。
日が暮れた中、初めて歩く道に少し不安を抱きながら、荷物を引き上げる為に準備した大きな空のスーツケースと、進む。
無心で歩く駅までの道、船の脇に飛び跳ねた水しぶきの中に一瞬見えた、なないろの虹が、脳裏に蘇った。
そして長女が釜山への留学を決めた日、対馬の高校の窓から大きな虹を見たことを教えてくれたのを、思い出した。
https://note.com/bijoublanc/n/na5ad31edd1fb
https://note.com/bijoublanc/n/n9fa266d515f2