(D65) 中国は本当に特殊なのか?揺らぐ「民主主義と市場経済」の優位性-1 (2020.1.12) by 野口悠紀雄 より抜粋加筆しました。
⑴ ITによる市場の透明化が持つ重要な意味
インターネットの世界においては、
対面取引の場合よりも、取引相手の信用が難しい。
なりすましなどが簡単にできるからです。
これは、2つ方法で解決されました。
①アマゾンやアリババのように巨大化した主体であれば、信頼を獲得できます。
中国でこれまでeコマースが発展したのは、
アリババが巨大化したからだと考えられます。
②AIによるプロファイリング
これによって取引相手がどんな人かが分かるので、
安心して取引できるようになりました。
信用スコアによって個人や零細企業に融資ができるようになったのは、その一例。
これらは、情報の不完全性の問題を克服し、市場を透明にする機能を果たしています。
ITのプラスの側面は、中国において重要な意味を持ちました。
⑵ しかし、管理社会の危険も
半面で、これはプライバシーの侵害という問題を引き起こしました。
これが、信用スコアリングや顔認証について、現実の問題となりつつあることです。
それは、管理社会や独裁政治を可能とするもの。
とくに中国の場合には、少数民族対策や反政府的な考えの人々を取り締まるために使われる危険が大きい。
これは、中国がこれから直面していく問題です。
ただし、ITやAIがもたらす問題は、
自由主義経済と民主主義政治を基本にする国家においても、問題が生じつつあリます。
ビッグデータの利益は、GAFAを代表とする一部の巨大プラットフォーム企業に集中しました。
これが今問題とされ、ビッグデータ利用の規制やデジタル課税の論議を引き起こしています。
⑶ ビッグデータという新しい問題
なぜこのようなことになったのかは、
ビックデータの性質に起因する面が強い。
利益がGAFAなどの一部の企業に集中したのは、
ビックデータを扱えるのが大企業だけだからです。
ビックデータは、
個々のデータが膨大な量集まれば、そこから経済的な価値を引出すことができます。
このようなことは、
GAFAのような巨大なプラットフォーム企業において初めて可能なこと。
このために、GAFAが利益を独占したのです。
インターネット上の個人データの保有量は、
GAFAによる寡占状態で、各市場(中国を除く)で世界トップシェアを誇っています。
❶グーグル(2019年3月)は、
ⓐ検索エンジン市場の世界シェア:
92.4%
ⓑOS市場の世界シェア:
38.0%
❷アップル(2017年通年)は、
ウェアラブルデバイス市場の世界シェア:
25.4%
❸フェイスブック(2019年3月)は、
SNS市場の世界シェア:
67.4%
❹アマゾン(2016年通年)は、
B2CのEC市場におけるシェア:
米国で33.0%
英国で26.5%
独国で40.8%
日本で20.2%