(Z37) 少なからぬ日本企業が、「知の深化」型の既存部門に注力し、中長期的なイノベーションが停滞する「コンピテンシー・トラップ」に陥っている-2 by 入山章栄 より抜粋加筆しました。
⑷ 革新的なビジネスモデルを生み出した背景に「知の探索」活動があるというエピソードは「知と知の組み合せ」にほかならない。
①注目すべきは、いずれの方々も以下のように、自社の既存の知と「自社の範疇からだいぶ外れた」ところにある知を組み合わせていること。
・自動車生産とスーパーマーケット
・配送と外食
・日本と米国
②革新的なビジネスモデルを生み出す一つの方法は、
このように「内容的、地理的、時間的に遠いところ」から得た知を、
自分の今持っている知と組み合わせることにあるといえる。
⑷ コンピテンシー・トラップは「組織の本質」として備わっている問題のため、組織として両利きの経営を実現するための施策も重要
①米ハーバード大学のマイケル・タッシュマン教授が米スタンフォード大学のチャールズ・オレアリー教授と『ハーバード・ビジネス・レビュー』に発表した組織構造についての論文を紹介。
②新しい事業を探求する部署には以下が重要であるという主張。
Ⓐそのビジネスに必要な機能(たとえば開発・生産・営業)を、
すべて持たせて「独立性」を保たせること
Ⓑ他方でトップレベル(たとえば担当役員レベル)では、
その新規部署が既存の部署から孤立せずに、両者が互いに、
知見や資源を活用し合えるよう「統合と交流」を促すこと
④すなわち、以下。
・新規事業部署にはなるべく「知の探索」を好きなようにやらせる。
・「知の深化」とのバランスを取り、
既存事業分野との融合を図るのは上層部ですべき。
⑸ 予算対立のバランスを取る「リーダーシップ」が不可欠
①たとえば、新規開発を担うチームは、
既存の開発部門の下に置かれることが多いはず。
しかし、その開発部長は他の既存部門との予算獲得競争にさらされる
ことも多く、往々にして、今目に見える成果の出ている「知の深化」型の既存部門に予算が割かれてしまいがち。
これはコンピテンシー・トラップの遠因になっているかもしれない。
②このような事態を避けるため、経営者には3つの「両利きのリーダーシップ」が求められる、とタッシュマン教授たちは説く。
Ⓐ自社の定義する「ビジネスの範囲」を狭めず、
多様な可能性を探求できる広い企業アイデンティティを持つこと
Ⓑ「知の探索」部門と「知の深化」部門の予算対立のバランスは、
経営者自身が取ること
Ⓒ「知の探索」部門と「知の深化」部門の間で異なる、
ルール・評価基準を取ることを厭わないこと
③筆者は少なからぬ日本企業が、
コンピテンシー・トラップに陥っていると考えている。
この状況を打破するには、以下が求められている。
❶「両利き」の組織体制
❷「リーダーシップ」
❸「知の探索」に出ること