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【論文読了】人材戦略 採用難時代を勝ち残る

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2024年9月号のテーマは人材戦略でした。副題として採用難時代を勝ち残ると書かれています。

昨今は人手不足が深刻化していると言われています。どこまで本当なのかとか、企業と求職者の希望のギャップはどうなっているのかなど疑問はありますが。

とはいえいつの時代も人材は超重要です。歴史を見れば、優秀な君主や将軍には優秀な家臣がいるものです。

現代の企業においても優秀な従業員を揃えること、従業員を育てて優秀にすることは欠かせません。

それでは振り返っていきましょう。


これからの人事、これからの役割

人事部の役割は長らくコスト削減だったが、人材不足によって従業員の支援という従来の役割に立ち戻る必要があるという論文です。

非正規雇用やオフショアによって人件費の削減が長らく行われてきましたし、人材をコストとする考え方に疑問を呈する学者もいます。

それを変えて人材を資産として活かす必要があります。

退職理由としてキャリア開発と昇進の機会が欠如しているということが挙げられるそうです。

そして経営陣はキャリアアップの機会を提供していると思っているけど、労働者側はそうは思っていないと。

また離職のコストも軽視されているそうです。人を採用するにも、採用後に教育するにもお金がかかりますからね。

それから近年は従業員のストレス管理も大きな問題です。ストレスチェックを受けさせられている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

さらには従業員教育にも全然お金が使われていないとのことです。

以上のことは、そんなものだと思うようなことばかりですし、現実にはそういう会社が多いから論文で取り上げられるのでしょう。しかしそれでいいわけではありません。

昨今見かける例ですと、管理職のポジションが空かなくても、専門職として管理職と同等の給与を実現できる会社も出てきています。

eラーニングだって普及しているので、教育投資もやりやすいでしょう。

出社とリモートが半々という会社も多いので、会社に集まって勉強会をやってもいいですし、リモートで気軽に社内研修に参加できてもいいでしょう。

重要なことは従業員を資産とみなすことと、教育して育てることです。そして今の時代なら出社とリモートという2つの選択が取れます。

企業はオープンタレント戦略で採用難を克服せよ

フリーランスを活用するタレントプラットフォームが普及してきたため、それを活用する方法を解説している論文です。

オープンタレント戦略と言っていますが、フリーランスという外部の労働市場に溢れる人材を使うからオープンタレントなのですね。

フリーランスというと下請仕事を代行する人をイメージするかもしれません。実際にフリーランスの仕事は自分のペースで企業から切り出された仕事を請けることが多いようです。

しかしこの論文で言っているフリーランスはマイクロ起業家とされており、高度プロフェッショナル人材であり、自分の働き方や条件に関する交渉力を持つ人たちです。オープンタレント戦略ではこの人たちを活用します。

この論文では、オープンタレントを使うためにはCoE(センター・オブ・エクセレンス)を設置し、オープンタレントの取り組みを研究、開発、展開せよと説いています。

パイロットプログラムを実施してみるのがいいようです。

こういう人たちを雇うに当たり、やってもらう仕事をよく考える必要がありますね。自社にないノウハウを持ち込んでもらうなどですね。

あくまでもコンサルを雇うのに近く、外注人材に作業をやってもらうというイメージではないのです。

アメリカではフリーランスが増えて、このようなプラットフォームが充実してきているようです。

日本はそこまで行っているのかちょっと微妙な気もします。しかし副業が解禁されたことで、企業内で主力として活躍している人を活用できる機会も出てきているでしょう。

外部の専門人材を組織に融合させる方法

高度なスキルを持つ人材を社内で確保できない場合、外部から調達することになります。

先ほどの論文ではフリーランスの高度プロフェッショナル人材が充実しているという話でしたので、そういうことが可能な世の中になったということです。

しかしチームで仕事する場合は文化やプロセスが存在します。そしてこれからの時代は従業員とフリーランスの混成チームで仕事をすることになるわけです。

この論文では、ジョンソン・エンド・ジョンソンやセールスフォースが、フリーランス人材に対しても自社の価値観について学んでもらうようにしているという例が出てきます。

一緒に仕事をする以上は、同じ目標に向かってチームで仕事をする必要があるからです。

以前は付加価値が低いかノンコア業務で、人手が沢山必要な業務を、外注として外注先やフリーランスに委託していたでしょう。

しかし今はフリーランスが自社の従業員とともに高付加価値な業務に当たるケースもあるのです。

するとフリーランスの方にも文化や価値観を共有して、チームとしての方向性を揃えることも必要なわけですね。フリーランス人材には面倒くさがられそうな気もしますが。

とはいえフリーランス人材を外注先ではなく仲間として扱うという考えには賛成です。やっぱり仕事は一緒に楽しくやってこそですから。

シニアの退職慣行を見直し、人材不足を解消する5つのステップ

先進国では高齢化が進み、シニア人材の活用は重要な課題となっています。この論文ではシニアの退職慣行と活用が解説されています。

先進国は日本もアメリカも含めて同様なのかもしれませんが、ベビーブーム世代の退職により労働者が一気に減ります。これにより人手不足になります。

かといって昨今は定年しても労働意欲が高いシニアも多いという調査を見かけます。

この論文でもシニア人材は意欲が高い人が多いとのことです。またシニア人材は昨今減少している、献身や忠誠心、熱意などの貴重な特質もあるそうです。これらはあまりいイメージがない時代ですもんね。

一方でシニア人材に対する悪いイメージもありますが、これを払拭する必要性をこの論文は説いています。よくあるこのような話です。

  • 記憶力が落ちて覚えるのが遅い

  • 自分のやり方に固執する

  • テクノロジーに疎い

  • 若手の雇用や権限の獲得、昇進を妨げる

しかしこれは多くのシニア人材に当てはまらないとのことです。確かに私の周りでも50~60代でPCやスマホが扱えない人は滅多に見かけません。

人手不足をリストラに合った他社の中高年人材を採用することで補うとか、アドバイザーとしてシニア人材を活用するなどの方法はあります。

この論文ではベテラン看護師を採用し、リモートで患者対応や書類作成をしてもらった例もあります。リモート、フレックス、アドバイザーなどのキーワードで考えるとアイディアが出そうですね。

マクドナルドは「らしさ」の追求でエンゲージメントを高める

マクドナルドでアルバイトをしたという話は聞いたことがありましたが、聞いたのは効率の話でした。しかしこのインタビューでは人材教育が語られています。

お約束のパーパスやビジョン、ミッション、バリューなどの話をすると、創業者曰くマクドナルドはハンバーガーを提供するビジネスではなく、ハンバーガーを提供するピープルビジネスだそうです。

それを実現するために、従業員が心地よく働ける環境を作ることで、ホスピタリティを提供できるというところに力を入れていると感じました。

従業員をファミリーとして楽しみ、学び、成長する職場と考えているようです。

捉えようによっては20世紀的と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかしサークル的と言った方が近そうと感じました。マクドナルドのクルーは学生からシニアまで世代も広いですから。

またハンバーガー大学を作って店長を育成することで、マネジメントや教育を学んだ人を店長にしています。店長になるための必須条件が、ハンバーガー大学でのカリキュラム履修なのです。

会社は学校じゃないという意見は多いかもしれませんが、私はこの考えが嫌いです。人は勝手には育ちませんし、育てる気がない会社は人を大切にしない会社と従業員に思われます。

だから会社が今まで積み上げてきた知識や経験を形式知にして、従業員教育に使っていくことが大事です。マクドナルドはこれができているわけですね。

終わりに

今回の論文は人材育成、フリーランス活用、シニア活用が主なテーマでした。

いずれも今の時代には欠かせない問題ですね。特に人材育成はずっと昔から問題であり続けていますし、高齢化と人手不足でシニア活用も考えなければいけません。

フリーランス活用の話が出ていたとはいえ、フリーランス側になる人もいくらかはいるでしょう。

そうしたときに、高度プロフェッショナルとして働いた方が融通が利きやすく交渉力もあると考えられます。今回の論文は企業目線でしたが、フリーランス目線にすればそうなるでしょう。

人材育成と人材活用はいつまでも話題になりそうですね。これから働き方が多様化して、もっともっと考える余地のあるテーマになりそうです。

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