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【論文読了】インフルエンサーマーケティングは戦略である

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2024年8月号の特集は「インフルエンサーマーケティングは戦略である」でした。

インフルエンサーという人たちが出てきてから何年も経ちますが、急速に増えた人たちだなぁと感じます。

一方でバーチャル・インフルエンサーなんてものも登場しているようです。変化が激しいですね。マーケティングは流行がよく変わるなぁと思います。


オニツカタイガーの世界観を誰に、どのように伝えるか

最初はオニツカタイガーのブランディングの話でした。

最初はアシックスのサブカテゴリーであり、ブランドがしっかり分かれているとは言えなかったそうです。

これはブランディングの観点からは中途半端でよくないことです。違うブランドとしてアピールしたいなら、しっかりとブランドを切り離すべきです。

しかしこれを簡単にできるほど大企業は甘くありません。このインタビューでは社内の説得や収益化について語られていますので、気になる方は読んでみてください。

収益化の話は大胆なことをしたなぁと思います。直販だけにすると販売数が限られてしまうので、収益は大きく落ちます。一方で利益率は高められます。気になるのは損益分岐点ですね。

これはオニツカタイガーが価格帯の高いブランドだからできることです。オニツカタイガーの価格帯は1~4万円です。スニーカーは1~2万円の商品が多いようです。

https://www.onitsukatiger.com/jp/ja-jp/store/all/shoes.html

低~中価格帯のブランドでやるにはあまり適さない戦略だと私は考えます。価格帯やアピールしたいことを考えた上で直販か卸売りか、それらの組み合わせかを選びましょう。

意外だったのは、Z世代やミレニアル世代はオンラインより店舗で買う人が多いそうです。

子どもの頃からネットで購入できることが普通だからこそ、リアルで手に取ってみたいのでしょうか?

しかしリアル店舗はブランドにとって世界観や商品の特徴をアピールしやすいので、重要です。

インフルエンサー業界が取り組むべき3つの課題

最近はSNSで影響力を持つ人たちをインフルエンサーと呼びます。しかしSNS登場以前からブログなどで知名度を得ていた人たちもいました。

この人たちこそがインターネット時代初期のインフルエンサーですね。インターネット時代より前は一般人がインフルエンサーになることは困難でした。

インフルエンサーという人たちは多くが一般人です。とはいえビジネスとして期待値の明確化や契約内容をしっかり決めよという話が本稿にはでてきます。

つまりインフルセンサーを使うなら、ビジネスとしてしっかりやることが大事ということです。

またクリック数やクチコミ、コンテンツ量など目立つ要素を求めることもよくないです。求めたくなりますけどね。

発注側企業も受注側のインフルエンサーも、価値観が合っているかどうかで仕事をした方がいいとのことです。これは凄く思います。

現実にはお金の問題とか、企業としても目立ちたいから有名な人を使ってクリック数やインプレッション数を稼ぎたいと考えてしまうかもしれません。

しかしそれでは一時的な人気だけです。継続的にブランドを育てるなら、価値観が合うインフルエンサーと長期的に一緒に仕事をしていく必要がありますね。

セレブリティのブランドを成功に導く4つの原則

セレブは昔から広告塔として大きな影響力を発揮してきました。しかしSNSで影響力を得た今、自分のブランドを立ち上げて稼ごうとしているそうです。

SNSのユーザーたちは、企業のいかにもアピール的な宣伝文句よりも、インフルエンサーの言い分を信用しているそうです。

そこでセレブは信用を活かし、SNSでファンと直接交流します。更には昨今はeコマースサイトを作るサービスもありますので、D2Cのハードルも下がっています。宣伝は自分のSNSでやるから、宣伝費もかかりません。

こうしてみるとセレブが自分のブランドを立ち上げてD2Cをやると強いですね。なんじゃこりゃな強さがあります。

そういえばアイドルが自分のアパレルブランドを立ち上げて、従業員数が100人になった話もありましたね。

かといってセレブになれるほどSNSで成功した人なら、誰でも自分のブランドを立ち上げたら成功するわけではありません。やっぱりブランディングが必要です。

特徴がハッキリしていないとか、提供価値が今一だと上手く行かないようです。名前さえ有名なら最初だけ勢いが出そうですが、勢いを維持できないでしょうから。

また自分が使って見せることも大事なようです。熱を入れて開発に取り組むのは勿論、作った商品を自分でも使ってこそのようです。そこまで行くと説得力が違いますよね。

こう考えると、お金を稼ぎたいのはやまやまでも、自分がこういうのが合ったらいいと思う商品を開発する方が良さそうです。それなら熱量も違いますし、自分でも使う気になるでしょう。

儲かりそうだから作るだと熱量も中途半端で、自分でも使わないでしょう。説得力に欠けそうです。

企業はバーチャルインフルエンサーの起用をいかに判断すべきか

なんとバーチャルインフルエンサーなんているのだそうです。それゆえ人間とバーチャル、どちらのインフルエンサーを選ぶかという選択も発生するようです。

人間のインフルエンサーはコストが高いですし、D&I(Diversity & Inclusion、多様性と包摂性という意味)という観点からは多様性があるとは言えないそうです。

この論文によると、ファッションや美容であればインフルエンサーの過半数が白人女性であるなど偏っているわけです。

またインフルエンサーの2/3が白人、他の人種(ラテン系や黒人、アジア人など)は1割程度、中東系やインド系は1%しかいないそうです。

また人間のインフルエンサーはスキャンダルのリスクがあります。メディアも世間も有名人のゴシップが大好きですから。

一方でバーチャルインフルエンサーはコストも人間より安いですし(それでも有名なバーチャルインフルエンサーなら1投稿9,000ドルだそうですが)、スキャンダルのリスクも少ないでしょう。

そしてCGの人物ですので、人種も性別も変えられます。中には宇宙人のような外見のバーチャルインフルエンサーもいるようです。宇宙船に乗って地球を周回しているという設定らしいです。

こうしてみるとバーチャルインフルエンサーのキャラ設定には、マンガやゲームのキャラクター作りを応用できそうでもありますね。

肝心な人間とバーチャル、どちらのインフルエンサーを使うかという選択ですが、組み合わせればいいというありがちな回答です。

上手く組み合わせて、KPIを決めて、実験を繰り返しながらノウハウを積んでいく必要がありますね。

学生アスリートのインフルエンサーを適切に選ぶ方法

最後は学生アスリートのインフルエンサーの活用に関する論文でした。

学生アスリートで有名な人もいるのですね。広告塔にするならプロとして有名な人が真っ先に思い浮かびますが、学生でもスポンサーが付いているアスリートはいるでしょう。

この論文ではポイントが5つ紹介されています。

  • フォロワーの多さは必須ではない

  • アメフトやバスケのような人気スポーツ以外もいる

  • 自然体の写真がいい

  • 競技中心の投稿がいい

  • 際どい表現を避ける

フォロワーの多さは必須ではないのですね。影響力という観点からは多い方がいいように思います。しかしキャラクター重視と後から増える見込みという理由で、現時点でのフォロワーは重要ではないのですね。

特にキャラクターと投稿内容が広告内容に影響してくるので、キャラクターを優先することは理にかなっていそうです。有名でフォロワーが多くても、自社のブランドや商品に合わないキャラクターではダメですから。

競技の種類もアメフトやバスケのような知名度の高い競技の方がよさそうに見えます。しかし実際には様々な競技の選手がいます。

理由があまり書かれていないのですが、ここでも知名度よりキャラクターとか企業が宣伝したいブランドや商品との相性なのでしょう。

自然体の写真がいいとか、競技中心の投稿がいいというのは、カメラマンが意図したポーズや企業が指示した投稿よりも、日常を写して投稿した方が馴染みやすいのでしょう。信頼されやすいそうです。

際どい表現というのはセクシャルな表現やコンテンツだそうです。それ以上書かれていないので、察してくれということかもしれませんね。

全体を振り返ると、学生アスリートの活用はまだ知名度や人気がそこそこの学生を選んで育てるという考えも含むのかなと思います。

学生だからビジネスを知らないでしょうし(スポーツに打ち込んでいれば尚更ですね)、学生だから伸びしろはあるでしょう。

終わりに

今回衝撃的だったのはバーチャルインフルエンサーです。こういう時代なんですね。これもAI技術が進歩したからこそですね。

それからオニツカタイガーの話とセレブのオリジナルブランドの話では、ブランディングを改めて考えさせられました。またブランディングの本を読みたいなぁ。


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