日本語教師日記その155． キャンセルで、何故ちょっと喜ぶのか

私の仕事は掛け算ではなくて、足し算です。
お金を動かしたりする仕事の人たちは、
自分達が体と頭を使って仕上げた仕事にかかった費用の、
その何倍も得ることもある、掛け算のお仕事かと思います。

対して私は、ひとりぼっちで日本語を教えていますので、
1時間につき、決まった授業料。
それを2時間やればその2倍という、経済面から言えば足し算です。

ちょっと本件からはずれますが、仕事にかかる費用や、
今の自分のいるところまで、這うようにしてたどり着いたその投資を考えると、本当に言ってほしくないのは「あれ」。

tamadocaさん、あれでしょ？
英語なんてぺっらぺらでしょう？
私も（俺も）そろそろ、英語ぐらい身につけなきゃと思うんだよね。
友達値段でちょちょっと、教えてくれない？

ってやつ。

むむむ・・・🙉

お酒飲むところで言われると、一番困りますね。

美容師の友達に「ちょちょっと、前髪切ってよ。時間かけなくていいから」。

ネイリストの友達に「簡単なのでいいから、ちょちょっとやってよ」。

あれと同じ。

私たちの仕事に、ちょちょっとできるものはないのですが・・。

そのみなさんだって、証券会社の友達に、
「ちょちょっと株買って、増やしといてよ、無料で」
とかは言わないのでしょうから、本当にやめてくださいませ・・・

足し算業界を代表して、お願いいたしますね。

さて本題です。
1時間やればやっただけ、
やらなければやらないでそれなりに、という収入であるのに、
これが不思議なことに、キャンセルはいると、すこし喜ぶのです。

教えるのは大好きだし、苦労して出会えた生徒さんです。
それなのになぜ。

かつてはそんなことはありませんでした。

昔、若い時、渋谷の交差点で日本語学校の同僚と話していて、
信号が変わったので 渡りながら、

「生徒来ないわねぇ」
「tamadocaさんも？
    この前のチラシのポスティングの効果もなかったわ」
「私なんか、広尾のシナゴーグ（ユダヤ教の教会）まで行って
チラシ貼らせてもらったけど、１件も問い合わせなしよ」
「私も、六本木のフランシスカン・チャペルセンターでもだめだわ」
「何がいけないのかしらね」
「ね〜？」

と話していました。交差点を渡りつつ、

「ここに、こんなに外国の皆さんが渡っているのに、
   もったいなくない？
まさか捕まえて、
『私から日本語 を習いませんか』
なんて、言えないもんね？」

「言えないよね、変すぎるよね」

「ここにこんなに外国の方がいるのにね。ああ〜・・」

いや、嘆いた嘆いた。

ネットだ、オンラインレッスンだなど、全く想像もつかない昔ですから、
生徒を得られない個人の日本語教師の苦悩は深かった・・・。

日本語学校や、当時の東京でも少なかったエージェントに属していても、
いただくものの単価が低く、不安定な仕事で非正規雇用なので、
自分でなんとか見つけてくる生徒さんは貴重でした。

夏休みなどは恐怖です。
子供と一緒に帰省しま〜す、という人は、
2ヶ月ぐらい平気でいなくなってしまいます。

日常的にも、朝・昼・晩ぐらいしかレッスンがない日に、
一つキャンセルが入ると、待ち時間8時間！ 😂などになりました。
家に帰る交通費もこの場合自費。
痛い痛すぎる。
だから、キャセンセルが入ると、心の中で、
「ううう〜〜わ〜〜〜〜」
とうめいたものでした。

時移りて、今は令和。
今の私は、ほとんどのレッスンを自宅で行っています。

今年の春からは生徒来日ラッシュです。
日本でJETプラグラムの先生になって日本に移住しても、
まだまだレッスンを取ってくれるありがたい生徒。

日本で仕事が決まったのでと、レッスンを辞めた人も二人。

でも、その3人以外にも、エアチケットが手の届く値段になったからといって、
今から6月までの間に、家族づれも含めて4人ほども来日します。

私の週末カレンダーは生徒との飲みや花見でじわじわ埋まっています。
地方都市名古屋にいた頃にはなかったことです。

そんな状況で、レッスンのキャンセルがメール、テレグラム（犯罪に使われるから、もう使うのやめたい）、LINEなどで入ります。

すると私、ちょっと喜びます。

やった〜、休める。
やった〜、遊びに行ける。
やった〜、朝風呂入れる。

などと思っちゃうんですね。

長年続けてきたこともあり、疲れもあるでしょう。
自分のキャパを超えた仕事になっているかもしれない。
若い頃ならこなせた時間数が、きつくもなっているのでしょうね。

その日のレッスン数が少なくても、朝昼と、
時間をぐっと開けて夜に入っていれば、真ん中で遊びには行けません。
気持ちがダルダルになってしまい、生徒たちに悪いからです。

一番嬉しいのは、まさに今日のようなキャンセル。
朝9時に二つのレッスンを終えた時に、
残りの三つのレッスンが全てキャンセルになりました。

よし！
遊べる！

まず、この投稿を書いています。

そのあとは、歩いて仙川に行き、ジムでちょっぴり運動します。
久々の美容院（白髪染め😂）。
それから京王線で国領に行き、用事を済ませる。
これで大概、疲れているとは思いますが、力が残っていた場合は、
一度仙川駅に戻り、バスで成城学園前へ。
砧図書館で本を返します。
もう延滞で怒られそうなのです。
まだ力が残っていたら、歩いて祖師谷商店街〜そしがや温泉21。

まだ力が残っていたらカラオケ。

こうして計画を立てている間は楽しいですが、
だいたい3分の1ぐらいしかできないです。

時間があれば、お金をかけずに楽しみまくっていた日は去りました。
キャンセルがちょっと嬉しい、ということに気づいて、
なんだか遠い目をしてしまいました。

ってことで、じゃあ、ちょっと出かけてきます。