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エッセイ138.小さい頃不思議だった物語の世界 (1)メリー・ポピンズ

私の家の本箱に、たくさんの童話の本があります。子供たちがあまりに本を読まないので、「いつも手に取れるところに置いておけば読むようになる」という説を信じて、BOOKOFFで買い続けたものです。

見事に読みませんでした〜。
読めば? 面白い本があるよ?
などとというと逆に読まないかなと思って言いませんでしたが、言っても言わなくても、読まなかったことでしょう。

長女が家を離れ、次女も就職ができれば、家を離れるでしょうから、この本をBOOKOFFの棚に戻すか、役立ててもらえるところへ寄付する日も近そうです。
(しかし、古本を寄付されてもどうしようもないと言う時代がきたそうですが・・)

あれ、もしかしてBOOKOFFの児童書のコーナーって、
「子供に本を読ませたい親がいる時代限定」で、
童話や児童書が出て行ったり戻ってきたりするのじゃないかしら?
そうだとしたら、ちょっと悲しい・・・

昔の子供は、「あまり本を読まない子でも読む本」があったとか、少なくとも国定教科書に載っているお話の、冒頭のところは国語の時間に読まされる、ということがありましたが、今の子は読まない子はびっくりするほど読みません。

というか、「読まない」のがデフォルト。
読む子がいたら逆にびっくりなのでしょうか。

生まれた時にはすでに指の届くところにデバイスがあり、
動画に子守をされる赤ちゃん時代から人生を始める人。
そういう人ばかりに、確実になりますから。
新聞さえ、もうすぐなくなるんですってね。

私の場合は、親がたぶん意識的に本を与えていたと思います。
日本の童話なら、たつの子太郎とか、子供向けにした「怪談」、昔話から始まって、いつのまにか何度も読むような愛読書ができていました。

私は海外の童話や子供、青少年向けの小説をたくさん読んだので、実家から持ってきた、ページの色の変わった本も家にたくさんあります。

ドリトル先生、ムーミン、プーさん、メリーポピンズ、やかましむらの子供たち、長靴下のピッピ。

それらに手も触れず、東野圭吾や江國香織に飛んだ娘たち。
それでいいのでしょうが、子供の頃にお話にどっぷりと浸り、好きなキャラクターといつもなんとなく一緒に過ごすような子供時代がない。

良くも悪くもない、それが新しい時代の子供なんでしょうね。

そうそう、「ハリーポッター」は、全く本を読んだことのない層(子供から大人まで)に、読書の習慣をつけた(少なくともシリーズ刊行が続いている間は)、ということで、とても読書の世界に貢献したそうですね。

それから、ゲーム・オブ・スローンズにはまって、本を読破した人や、ゲームやアニメ、コミックから入って、ファンタジーの原作を読み始めた人も多いことでしょう。

山登りのコースはいろいろありますから、それでいいと思います。
そんなことを言っている私だって、NetflixやYoutubeの放浪を続けて、気がついたら新聞も読まずに積んでおくことがあり、慌てたりします。

本の虫の生徒と話していたら、
「昔に比べて驚くほど本を読まなくなり、罪の意識がある」
と言う点で意見が一致しました。

そう、なんか、大事なことを忘れたような、ないがしろにしたような変な気分がいつもあるのです。あれはなんなのでしょう。
1冊読みきれず、並行して5冊ぐらい、家の中のあちこちに置いてあるのです。
読み切ることができれば、それをきっかけに、またさくさくと読んでいく世界に戻れるような気がするのですが・・。


私もこの秋は、普通に本を読むという生活に自分を引き戻したいです。


さて、ここからは、「昔読んでいて不思議だったこと」です。

一つ目は、「お金ないっていうけど、あるじゃん」問題です。

メリー・ポピンズの雇い主は、銀行に勤めるバンクスさんです。

たくさんあるお話のどこかで、バンクスさんが奥さんに言います。

大きな家で召使いのたくさんあるような暮らしがいいか、
小さな家で貧しいけど、ジェーンとマイケルと双子、みたいな子供たちのいる家庭がいいか。

この通りではないけど、だいたいそんなことを言いました。

奥さんは、子供がたくさんいる貧しい家の方がいいと言ったので、
こうなりましたとさ、と続いています。

これ、お父さんとお母さんが、なれそめを子供に話すときにやりそうなことで、
面白いなと思って読んでいた記憶があります。

つまり、つましくても、貧しくても、
使用人が(たくさんは)いなくても、
子沢山の明るい家庭を選ぶということです。

ところが、本の方はあまり家庭内の挿絵がないために よくわかりませんでしたが、映画となるとびっくりです。

子供心に「ど〜こ〜が!」とはっきりと思いました。

家、でっか〜!

使用人ですがまず。

週に1回しかお休みをとらない「住み込みのナニー」のメリーポピンズがいます。
起きた時から寝かしつけるから一日中やってくれます。

それから、いつもメソメソしているエレンという若いメイドさんと、ブリルばあやという人がいて、二人はエプロンにレースのハットという制服ですから炊事洗濯を含めた家事一切をやっていると思われます。

あと、ロバートソン・アイと言ったかな、ちょっと名前が思い出せませんが、バンクスさんの帽子を靴墨で磨いてしまって怒られている若者。
この人も住み込みみたいです。

少なくとも4人も使用人がいて、
それで奥さんは二人の子供の子育てでノイローゼになっているので、
なんだかなぁなんです。
(メリーポピンズ1冊目の冒頭は、ジェーンとマイケルがやんちゃなので疲れ切り、階段でハンカチを握りしめてヨヨと泣いているミセス・バンクスの挿絵があったと思います)
後年、ジョンとバーバラという双子も生まれますので そりゃ大変ですが、
ワンオペではありませんからね〜🤣

これ、日本のスタンダードで言えば、富豪と言わないまでも、大金持ちです。
門からドアまで、しばらく歩けないと行けませんし。

メリー・ポピンズを読んでいたころは、

外人て、みんなお金持ちなんだな〜

と単純に思っていましたが、そのあと英国のクラスシステムが少しずつわかり、
そういう人もいるが、ごく一部であると知りました。

私は 一時期は東京の英国系企業や銀行に生徒が多くいて、

もともと恵まれた家に生まれ、ボーディングスクールに行き、
オックスブリッジに進み、就職も、首になったとしての転職先も、
学校繋がりで、いろいろ恵まれている人たち

に、実際にたくさん会いました。

あ、これだったのか、とやっと合点がいきました。

本当に、食べるための仕事はしなくてもよく、貴族としての「家」を保つために観光客に田舎の屋敷を公開し、仕事は銀行の頭取みたいな人が、結構今でもいるらしいです。

バンクスさんは貴族でもなんでもありませんが、労働者階級からはすごく離れていて、貧しいと言っても、貧しくなかったんだ、とよくわかります。

その代わり、英国は3K仕事は病院までも含めて、出稼ぎの外国人がすごく多いということですし、バンクスさんのような暮らしのできる層は、たぶん国民の中でも少ないのでしょうね。

英国のクラスシステムがすごくわかりやすいのがこちら。
もうお読みになったかもしれませんが、面白いのでおすすめしたいです。



何も知らずに、「外国=薔薇色・豊か」と思い込んでいた懐かしい昔でした。


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ガラパゴス諸島から来た日本語教師 tamadoca
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