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「インフレーションスワップ市場」から見た2023年の米国

米国は今週から完全に年末モード。
さて、今日は2023年の投資戦略を考える上で欠かせない米国のインフレについて考えてみたいと思います。

多くの経済誌でエコノミスト等のインフレ予測は紹介されていますが、今日、私が紹介するのは「インフレーションスワップ」と呼ばれる市場価格を元に計算する「市場参加者」のインフレ見通しです。
インフレーションスワップが示すインフレ率を把握することで、市場参加者が来年、米国のインフレがどこに向かうと考えているかを知ることが出来ます。

まず、簡単に「インフレーションスワップ」について説明します。
インフレーションスワップは「固定金利」と「インフレーションインデックス」を交換(スワップ)するデリバティブの一種です。

ニュースでよく耳にするインフレ率というのは「前年比2%増」という様に年率換算されています。しかし、元を辿ればこの値は「インフレーションインデックス」と呼ばれる指数の前年比を計算したものです。

インフレーションスワップはCPIの計算に用いられるインデックスと固定金利を交換する取引です。
インフレーションスワップ市場で取引されている価格を見ることで、市場参加者が予想しているインフレ率を計算することが出来ます。

次のグラフはこれまで発表された米国のインフレの実績値と、インフレーションスワップ市場から計算される今後のインフレの予想値です。

繰り返しになりますが、ここで言う市場参加者とはニュースで見聞きするような「エコノミスト」ではありません。ここで言う市場参加者とは機関投資家やトレーダーのことで、将来のインフレを当てることで利益を生む取引を行なっている人たちです。

もちろん、エコノミストの見解も大切ですが、実際にお金を賭けている市場参加者の考えを知ることは更に大切です。
今は米国のインフレが市場を動かしているといっても過言ではなく、他のマーケット(株、為替、金利)で投資を行なっている人たちも、(エコノミストの見通しだけでなく)インフレーションスワップ市場の見通しに影響を受けます。

また、先ほどのチャートにエコノミストのコンセンサス予想を重ねてみると、エコノミストの予想と、インフレーションスワップ市場の計算値には乖離があることが分かります。(エコノミストのコンセンサス予想はBloombergの集計値を用いています。)

現在、市場(インフレーションスワップ市場)が織り込んでいるインフレ見通しは、エコノミストのコンセンサスよりも「急速に下がる」予想になっています。

エコノミストは23年末でも「3%強」のインフレ率を予測しているのに対して、インフレーションスワップ市場は早ければ6月にも、インフレ率が「2%半ば」に下がる見通しとなっています。

ちなみにFOMCのインフレ見通し(FOMCの場合はCPIでは無く、PCEというインフレ指標を用います)も2023年末に「3.1%」とエコノミストに近い予想を立てています。

このことから言えるのは、現在市場が織り込んでいる2023年の米国経済は、インフレという視点に立つと、「エコノミストやFRBよりもだいぶ楽観的な見通しに基づいた投資戦略になっている」という点です。

経済見通しはエコノミストが間違う時もあれば、市場が間違える時も、また、どちらも間違えることもあります。
しかし、現時点ではエコノミストもインフレが下がる見通しを立てており、金融市場は「エコノミストよりも更に」インフレが下がる見通しを元に、投資戦略を立てているという点は押さえておきたいファクターの一つです。

2022年は米国のインフレが上昇することで、金利が上がり、ドルが買われて、株は売られました。
2023年に米国のインフレが低下するのであれば、金利は下がり、ドルが売られると考える人は多いでしょう。(同時にリセッションも予想されているので株式市場には悲観的な見通しが多いですが)

最後に、
これからもマーケットの情報を皆さまにお届けするつもりです。
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