予定日まで4日でついに次男誕生か!ってところに訪れた後期高齢者
コンビニで弁当を買って食べながらの仕事をしていると、午前中リビングのホットカーペットの上でぐったりしていた妻からLINEが。「30分から1時間間隔で腹痛が…」やだそれ前駆陣痛じゃん!心に響く凄まじい爆発音とともに部屋に向かい、諸々を軽く打ち合わせる。
さあいよいよ始まるぞ、約2年ぶりの大勝負!鼻息をふんすかさせて「痛みの間隔が15分になったら病院へ」という分娩基本ルールに則ってまずは待機する。
育休入りまでに仕事終わらん!あれを仕上げないといけないのに…など思いながら、todoを書き出したのちに妻の産後入院期間に手伝いに来てくれる名古屋の母に「そろそろかもだぜ。タイミングきたら連絡するわ」とメールした。
それからはもうエモ散らかして仕方がない贅沢な午後の訪れである。ちょうど同タイミングで公開された「ブレーメン」のすばらしすぎる動画に涙して、それをトリガーとして同じ屋根の下にいる妻に「また京都音博行こうな」的なラブレターを送ったり、これまでの道程を美化してみたり。もう気持ちの上では4人家族の完成である。
それから数時間して、肝心の痛みは穏やかな春風のように凪ってしまう。なあんだよーもー!と思いつつ安心しつつのおれたち。だがスマホに飛び込んできたメールは相変わらず激ロックのままだった。「新幹線に乗りました。5時半に東京駅」とおかん。いや?!まだ早いですが!?
70代を迎え、年明けに風邪が2週間も治らなかった人が、この日新たに数人のコロナ患者を出した街から、密閉空間の乗り物に乗って、向かいにコロナ患者を輩出したビルがそびえ立つ駅に向かっている?!とうてい間に合わないし個人タクシー(新年会は屋形船系)に乗って来られても困るかもなので妻に1歳児のお迎えを頼み、Slackで同僚に謝罪して駐車場に走り、東京駅まで急いだ。
足りない頭はしっかりとパンクしていた。ただでさえ定まらない出産日の中で気がそぞろな中で、最後までしっかりとつわりを繰り返す妻と過ごす中で、仕事をひとつひとつ殺し回ってきた中で、実質ゲストを迎えるスペースのない我が家に、おかんが来てしまう?仲はよくとも妻と母が互いに気遣い、1歳児はわんぱくで、逃げ場がないなんて…!で、しかも来ようにも帰そうにも、70代をコロナが歩いてるかもしれない空間に晒しかねないし…?
「自分のペースで休めないし、食事のペースもあるし…」と申し訳無さそうに妻に言われ、気持ちは12分にわかるが当方も完全にキャパ越えてパニック入りした結果「こういうときは音楽!」と思いながら運転中にSpotifyの再生ボタンを押し、同時にカーステの音量を3倍くらいに。するとランダム再生で出てきたのはトマパイ「ジングルガール上位時代」という、待つ女のホワイトクリスマスソングが流れて「待たせてるのは母だし!」と突っ込む。スキップしたら椎名林檎「正しい街」だったので今度は「あの日飛び出すな!!!!連絡を待て!!!!!」とさらに突っ込んだ。
八重洲口の鉄鋼ビルで母を拾い、一周回って冷静な気持ちで雑談を転がす…と言っても肌感としてぜんぜん予定日に生まれてきそうなのでここ数日をどうやり過ごすかを必死にシミュレーション。とりあえず客間として近くのホテルを取って、今晩はみんなでスシローかな。無事故無違反で自宅に到着した。
「みんなでスシローに行こうと思うんだ」「えっ、鶏肉仕込んでたんだけど」「そうでした……焼こう!」「お子がいる前で焼いたら欲しがって(泣き出す)…」「そうでした…母さん、お子を風呂に入れてやって!」という流れでわんぱく1歳児を母にブン投げ、夫婦のマイペースを取り戻そうとワンクッション入れる。
風呂場から今まで聞いたことのないギャン泣き。どうやら両親のぞんざいを敏感に察知したらしい。風呂場に妻が駆け込み、その後おれも参戦し、結局夜だけどテレビの前に座らせ、YouTubeなどを見せてようやくに鎮めた。爆裂泣きの全裸1歳児、申し訳無さそうな母、体調は万全じゃなくて不安な妻、バグったおれ。家はパンパンだ!どうなる!ご自宅!!!だめだ本当にどうなるかわかんなくなってきた。