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ニコンNew FM2 シンプルかつ使い勝手のいいフィルムカメラ

 ニコンNew FM2は販売終了からかなり経っているのに未だに人気のあるカメラだ。機械式シャッターで露出はマニュアルのみと撮影の基本を覚えるには最適ということで昔は写真学校へ行く人向けのカメラと言われたこともある。

 自分もニコンのフィルムカメラでの撮影が長いのでこのカメラにも長くお世話になっている。

 最初に買ったのは1989年。当時は仕事など撮影のメインはオリンパスのカメラを使っていたがいずれはニコンにしようと思いまずはF2を購入した。予定では次はF3のつもりだったが仕事で中判カメラを使っているうちにこのクラスのカメラも欲しいという気持ちが強くなった。それとF3はストロボのシャッター速度が最速で1/80と遅く日中シンクロをする時には絞りを開けることが出来ないことが多い。一方New FM2は1/250で撮れるので屋外での人物撮影でストロボを使う時に便利だ。全体の性能としてはF3より落ちるがすでにこの時にはF4が発売されていた。F4もストロボの同調速度は1/250。すぐにニコンがメインになるわけではなかったのでフラッグシップクラスのカメラはまだ先のこととNew FM2を購入することにした。

 New FM2は露出計に電池を使うだけでシャッターは機械式ということで電池が無くなってもシャッターは切れる。露出計が使えないと露出が分からないが予備として単体のメーターを持っているのでもしもの時でも問題にはならない。露出表示はLED表示で+○−というシンプルなものだが細かい露出は分かりにくい。しかし露出にシビアでないネガフィルムなら問題はないしリバーサルフィルムの場合は単体露出計を使うことで対応することに。F3も同じ表示だがこちらはファインダーの画面の左上に液晶で小さく表示されるので見難い。会社でF3を使っていてこの点が不満だったのも買わない理由の一つだ。シャッター速度の最速は1/4000と当時1/2000が主流だっただけに1段早いのは人物撮影等で絞りを開けて撮れるなど価格やニコンのカメラの位置づけとしては高性能なカメラだ。

New FM2の良いところのひとつは巻き上げレバーを手前にすればシャッターボタンを押せること。F2はシャッターボタン周りのダイヤルでロックを解除しなければいけないので急にシャッターを切る時にワンテンポ遅れるがこのカメラなら素早く撮影できる。今もそうだが右手だけで撮影をすぐにできるというのは自分にとって必要な条件だ。

 外付けのモータードライブMD-12はフィルムを入れていても外せるのは使い勝手が良かった。F2やF3はフィルムの自動巻き戻しの関係でフィルムを入れた状態ではモータードライブを外すことができないがNew FM2は状況に応じて外すことが出来る。撮影時に必要ない時や予備として持っていく時などフィルムが入っていても本体のみにすることが出来て他の荷物の邪魔にならないのが良かった。このMD-12は秒3.2コマと連写しても2枚目以降のカットは使えなかったりする事が多く連写のためというよりも自動で巻き上げるという程度の効果がしかないのと大きいレンズを付けた時に持ちやすいために使うという存在だった。

モータードライブMD-12を装着。巻き上げ音も大きくあの当時は当たり前だったが今は迷惑な存在か。単3電池を8本も使い重さもかなりある。
背面は電源スイッチと巻き戻しのレバーのみ。F2やF3のモータードライブのように自動巻き戻しは出来ない。
カメラ側のモータードライブの接点(右端)。隣は電池室。

 予備として持って行くことも多かったが一度雪が降った地方での撮影ではメインで使っていたF4の動きが不安定になった。寒さによる電池の影響かと思ったが買って2ヵ月程度ということと初めての症状なので違うと困ることからNewFM2でその後を撮る事にし その場を乗り切ったことがある。

 長く販売されてきたNewFM2も後継機のFM3Aが2001年に発売されることになり製造終了になった。FM3Aはオートでも撮れるがファインダー内のシャッター速度の表示がFE系と同じ左側に小さい文字が並んでいるので見難いしオートを使う事はない。さらに正面のニコンのロゴが今のものになりデザイン的にも酷くなった。そういうことで以前からブラックボディも欲しいと思っていたので新宿のヨドバシカメラに電話すると在庫が3台あるということで1台を購入することにした。今まで使ってきたボディも10年以上となってきていずれはもう1台と思っていたがこれほどの早い決定はこの時だけだ。

ブラックボディ。付けているレンズはAi20mmF2.8S。小型ということと開放f値から一絞りで写りが良かったので他のレンズがAFのレンズをメインで使うようになってもこのレンズは仕事で長く使い続けた。


 やがて仕事での撮影がデジタルになりNew FM2はプライベートでの街中での撮影に使う事が主になった。単レンズや28〜70ミリクラスのズームレンズを付けて首から下げるというスタイルで街中を歩きながら撮るにはこの大きさは最適だ。一時東京の古い街並みを大型カメラで撮っていたことがあったが限られたレンズしかない大型カメラの代わりにいろいろと撮ることもあった。露出にシビアでないネガのフィルムならば細かい露出表示が出来ないこのカメラでも問題なくスムーズに撮影を進めていくことが出来る。

そんなNew FM2だが最近のフィルムの高騰と長年使ってきたことでの細かい不具合から最近は出番なしだ。まだ使えるがこのカメラで撮ろうという被写体が現れるかがどうか。

クロームボディの方が古いので裏蓋の塗装剥がれが酷いと思うかもしれないがこの裏蓋はブラックボディのものだ。2年ほど前からブラックボディの裏蓋が開ける時に硬すぎるのでクロームの方と交換して使っている。2台とも同じように使っていたがこの差。2000年頃のニコンはプラスチックのボディが主流で
塗装の技術が落ちたか。F2も塗装剥がれはほとんどなく「ニコンは壊れない」という神話があった昔のカメラの方がしっかりと作られていたのか。
クロームボディの方は残念ながら故障していて使えないが自分としてはこのカメラはブラックよりクロームボディの方を気にいっている。


フィルムしかない時代はカメラ1台に単レンズ1本で撮影に行くことも多かったがデジタルになってからはズームレンズに。いろいろな画角で撮れるのは便利だしその画角でないと撮れないものもあるだけに仕方のないことだがひとつの画角で撮るという潔しも時々必要なことかもしれない。

 プライベートでの撮影でもNew FM2は良く使った。1990年代に東京都内の祭りをいろいろと撮影したがこの時は首から下げたNew FM2には20mmや標準ズーム。F2かF4Sに105mm(マイクロ),180mm,80-200mmという2台態勢だった。

 今はデジタルが主流になってしまったが町歩きや東京湾岸の埋立地の撮影でもNew FM2は多く使われた。後者では日中シンクロをすることもありシンクロ速度が1/250の効果は大きかった。

モノクロがコントラストの高いプリントで仕上げていたのでそれに合わせて色調を狭くコントラストを高めるためにエクタクロームやフジクロームのISO1600のフィルムを使って撮影した。
東京の下町で昔からの風景を大型カメラで撮っていた時には一緒に持っていき大型カメラで撮れない所を撮ったりした。


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