いつくしみ深き友
『いつくしみ深き』という美しい賛美歌があります。
日本ではキリスト教式の結婚式で必ずと言っていいほど歌われるので、クリスチャンでなくとも、耳にしたことのある人は多いでしょう。
作詞者は、ジョセフ・スクライヴェンというアイルランド人です。
20代前半、スクライヴェンには婚約者がいましたが、結婚前夜に水難事故で亡くなりました。
それから15年後、移住先のカナダで別の婚約者ができましたが、その人もまた、結婚前に病気で亡くなったのです。
一度ならず二度も婚約者を失い、どれほどの絶望に襲われたことでしょう。
その間、郷里から母親が病気だとの知らせが届き、スクライヴェンは母親を慰めるために詩を書いたのですが、それがこの賛美歌のもとになっています。
スクライヴェンは、深い悲しみを経験することによって、神がどれほど自分を愛し、気にかけておられるのか、また、イエスがどれほど素晴らしい友であるかを知りました。
日本語の歌詞は、イエスが愛情深い友であり、私たちの祈りに答えてくださるということに焦点が当てられていますが、原文では、私たちの内側に焦点が当てられています。
つまり、私たちが試練や問題を自分一人で何とかしようとするなら、心の平安を失い、不要な痛みを抱えてしまうけれど、イエスは私たちの悩み苦しみを分かちあってほしいと願う誠実な友なので、祈りによってすべてを主に委ねなさいということです。
また、この賛美歌の原題は、「What a Friend We Have in Jesus(私たちには何と素晴らしい友イエスがいるのだろう)」というものですが、もともとの詩には、「Pray Without Ceasing(絶えず祈ろう)」というタイトルがついています。
というわけで、この賛美歌は、葬式などで歌われ、苦悩にあえぐ人への慰めの歌となってきましたが、日本では、結婚式でもよく歌われています。
それは、「病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も」という結婚の誓いの言葉を思い出させるからかもしれません。
たしかに、順風満帆な結婚生活というものはなく、二人の未来には様々な試練が訪れることでしょう。
そんな時、いつくしみ深き友イエスが自分たちを見守ってくれており、祈りが逆境を乗り越える力をくれると知っておくことは大切です。
そもそも、順風満帆な人生というもの自体がなく、誰の人生にも、喜びとともに、何らかの苦しみや悲しみが運ばれてきます。
「友情は喜びを二倍にし、悲しみを半分にする」という言葉があるように、何でも話せる友だちがいるのは素晴らしいことです。
私たちの友イエスは、結婚式や喜びの場に来てくださるし、死別や悲しみ、苦しみの場所にも、私たちと一緒にいてくださいます。
そして、私たちの喜びを倍にし、悲しみを半分に、あるいはそれ以下にしたいと望んでいるのです。
悩み悲しみに沈む時、すぐそばで私たちを慰めようとしているイエスに話しかけてみませんか。