2023年9月 読書メモ
この月は『サラゴサ手稿』を読み終わりました。他には劉慈欣に手を着けたので、読書が趣味の人にとっては大きな動きがあった月。
アンソニー・ホロヴィッツ 『カササギ殺人事件〔上・下〕』(創元推理文庫)
みんなネタバレに配慮しているのかそこは気にしてないのか、それ以外の理由かであまり触れている人を見かけないのですがこれは作家についての小説では?著者の興味がそこにあるのかは別として結果としてそういう作品になっている。
作家(とそれに関わる人々)の業とか嘔吐を催す面についてであり、でもまあ一番ひどいやつは無事地獄に落ちているので溜飲は下がると思います。
ファニー・ピション『プルーストへの扉』(白水社)
当方すでに『失われた時を求めて』を完走した人間なのでにこにこしながら読みました。本来はまだ手を着けていない人に向けたプレゼン本だと思う。推しのプレゼンの例としてお手本のように面白い。
それはそうと一つ前にあげた本の登場人物が嫌いそうな作品でちょっと笑っちゃった。
劉慈欣『円 劉慈欣短篇集』(ハヤカワ文庫SF)
無事に人類が滅びがちで本当に良かった。現実に起こったら困ることこそフィクションの中ではやっていただきたい。
人類が滅びていない(未来はない)作品だと、「詩雲」が中国だから書ける話でとてもいい。人類の未来はありませんが人類の文化には未来があるので。中国らしいと言えば「月の光」における科学技術の発展にも説得力がある。
ヤン・ポトツキ『サラゴサ手稿〔全3巻〕』(岩波文庫)
ついに完走してしまった。
完訳を通して読むとびっくりすることに伏線がちゃんと回収されておりあのエピソードにもこのエピソードにもちゃんと意味があったことがわかる。本当にちゃんとまとまる。しかし読んでいる最中はそれどころではないので、最終巻巻末の通覧図を確かめながらもう一周したい。
マット・ラフ『ラヴクラフト・カントリー』(創元推理文庫)
面白いのだが主人公サイドが黒人であり1950年代の話なので現実が本当にきつい。異星の怪物より恐ろしい。という時点で宇宙的恐怖が現実に遠く及ばないことが露呈してしまうので、ラヴクラフトファンの皆さんにはぜひお読みいただきたいですね。主人公も彼のファンです。
劉慈欣『流浪地球』(KADOKAWA)
また人類が数回滅亡していてもう大喜びです。壮大なスケールで滅亡したりしょうもないレベルで滅亡したりする。滅亡しないでなんとかなる話もある。
デルフィーヌ・ド・ヴィガン『子供が王様』(東京創元社)
これは今読まれるべき本。キッズインフルエンサーとか動画配信者を扱った社会派ミステリって言ってもいいんじゃないですか。純文学のレーベルから出てる社会派ミステリ。