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2023年7月 読書メモ

各所の話題作をていねいに潰していった感じのある月。並べると笑っちゃうくらい尖っている。

宿野かほる『ルビンの壺が割れた』(新潮社)
真相にはそんなに驚かなかったのだが(こいつ気持ち悪いな……と思いながら読んでいたので)この小説を懐かしく切ない叶わずじまいの恋物語だと思って読むのが一番きもちわるいですよwwwwという作者の意地の悪さが見えたので五億点。別にそういう意図がなく書かれてたのだとしたら5点です。

ピーター・スワンソン『アリスが語らないことは』(創元推理文庫)
ミステリとして面白いんですがハッピーエンドかはわからない。このあと主人公も誰かに対して同じことをするんじゃないかと思った。あまりにも繰り返しが過ぎるので。

エラリー・クイーン『靴に棲む老婆〔新訳版〕』(ハヤカワ・ミステリ)
事件は解決しますがそれだけだと面白みがないので、このあと長女の発明が何かの間違いでヒットしてくれないかな。なんかもうちょっとこう、彼らには世間に一矢報いてほしい。

アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』(創元推理文庫)
探偵を有能だが不愉快な人物に設定し、無能だがある程度常識のある語り手が「現代の常識からかけ離れた不愉快な人物だ」と言うことで不愉快な人物を堂々と登場させつつ現代の常識的な視点をかわす手法、なるほどな~ってなりますね。
語り手は素人探偵としては読者以上に察しが悪い適度な無能さがあるものの、映像業界では脚本家として成功しているのでたまに業界ものみたいになる。が、映像業界目線では探偵がものすごい素人で無能なのでお仕事ミステリにはまだあんまり見えない。

ステファノ・マッシーニ『リーマン・トリロジー』(早川書房)
ちょうど時間が取れたので数時間かけて一気に読んだ。頭の中で舞台化しながら。小説とはいうものの散文詩のような流れで文字数はそんなに密ではなくリラックスして読めた。この一族のつくった会社がどうなるかはみんな知っているわけですが、そんな最終盤の展開は忘れてまずは近現代アメリカ史を鑑賞するつもりで大丈夫だと思う。

円城塔『文字渦』(新潮社)
だいぶびびりながら読んだのだが思っていたよりずっとまともなSFだった。というか小説だった。これなら読んでも正気を失ったりはしないと思います。普通の人間なら。

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