見出し画像

タルマーリー(鳥取)

 ビールとは酵母(イースト菌)で麦芽を発酵させてつくるもの。実はこれは、パンの製法とよく似ていて、本場ドイツではビールのことを「飲むパン」と表現するほどです。

 現在は鳥取県・智頭町に拠点を置く「タルマーリー」は、自家製酵母を用いたパン屋さんとして2008年に、千葉県で産声を上げました。その味とスタンスから、たちまち製パン業界で伝説的な人気を集めたタルマーリーはその後、より良質な環境を求めて2011年に岡山県真庭市に移り、さらに2015年に鳥取へと拠点を移します。

「酵母や麹、乳酸菌など、発酵に関わるすべての菌を天然で賄おうと思ったら、どうしても自然豊かなローカルへ向かわざるを得なかったんです」

 そう語るのは、オーナーの渡邉格(いたる)さんです。天然酵母のパンづくりに邁進するうちに、次第にビールへの関心を高めていった格さん。鳥取移住と同時に醸造機能を実装し、今日では同じく天然酵母を用いたブルワリーとして名を馳せることとなりました。

 共にタルマーリーを切り盛りする妻の麻里子さんは、「ただでさえ人手不足なので、私は反対したんですけどね」と苦笑しますが、野生の酵母だけでビールをつくるブルワリーは国内初(当時)。当然、大きな話題を呼びました。

 ちなみに、察しのいい方はお気づきかもしれませんが、社名の由来は格さんと麻里子さん、おふたりの名前から。
 共に東京出身で、麻里子さんは筆者・友清が暮らす世田谷区内のマンションに「子どもの頃、ピアノのレッスンでいつも通っていました」という奇遇な縁にも恵まれました。

 そんな縁が、こうして「ビビビ。」でタルマーリーの作品が提供できる未来に繋がったのは、僥倖というほかありません。

〈Text By Satoshi Tomokiyo〉

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?