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昔噺【じいちゃん話譚】
物心ついた頃には物語と云う物がとても好きだった。漫画やアニメ、小説、映画、ラジオドラマ、演劇…、ジャンルは何でも良い。取分け今でも好きなのが昔噺だ。思い起こせば幼少期、じいちゃんの昔噺や昔語りが好きだった。静かに低い声で淡々と語る口調に引き込まれたものだ。
寝る前にせがむと必ずしてくれたのが『読み聞かせ』ならぬ『じじ語り』である。レパートリーは『桃太郎・金太郎・浦島太郎』の3つだけだが、ちゃんと童謡のOP(オープニング)から入りSE(効果音)が付くので演出はバッチリである。何度聞いても面白いので順番を変えてせがむのだが、絶対に嫌とは言わずに語ってくれた。『かぐや姫・一寸法師・猿蟹合戦』等もリクエストした事があったが、十八番には敵わなかった。
歳を重ねたある時、自分でも何かしら書いてみようと試みた事があったが、どうにも下手くそな作文の様にしかならなかった。じいちゃんは小学校の先生に成りたかったのだそうだ。文武両道で何でも出来たお人だったので、上手に物を語って居たのも天賦の才の片鱗だったのだろう。
小学校の大きな鉄棒で大車輪が出来た当時60代のじいちゃんは、自慢のスーパーじいちゃんだった。
しかし諦める事なかれ、学生時代、1年間に150本以上の映画を貪りストーリーメイキングについて調べた結果、『ウラジーミル・プロップ』の『昔話の形態学』に辿り着いた。プロップはソビエト連邦の民話研究家で、31のプロットをなぞるだけで比較的簡単に物語を紡ぐ事が出来ると考えた民俗学者だ。ハリウッドではストーリーメイキングの骨子として使われて居た技法でもあるそうだ。勿論日本の昔噺や古事記の研究家でもある心理学者の『河合隼雄』さんにも辿り着き諸々調べ物は進んだが、身になる前に文字が読めなくなり、物語創作からは遠ざかってしまい今に至る。文字として認識は出来るが意味として全然理解出来なくなってしまったのだ。
文字の無い絵本からリハビリを重ね、今ではビジネス書が読めるまでに回復した。今度こそ、人を引き込む物語を作ってみたいものである。