半径10キロカレー
徳島県の神山というところにある食堂でおもしろいランチョンマットを見かけた。そこには今日の献立と日替わりの定食などが書かれているのだが、その横に食材名と数字が書かれていた。それは献立に使われている食材がどこから来たものなのかと、神山で作られた食材がどのくらい今日の献立に使われているかが書かれていた。そして大きく「今日の自給率は何%」と書いてあった。これが日々のメニューや使っている食材で変わっていくのである。私が訪れたときは40数%だったような気がする。その食堂を案内してくれた店舗の方曰く、いずれは自給率を100%にするのが目標なのだとか。
そしてつい先日ご縁あり、三重の多気町というところでもインドの歴史と文化を物語風にアレンジしたコース料理を出す機会があった。最初のプレートはインドにもともとあった食材やスパイスを使った料理を何品か作りプレートに盛り付けた。時代でいうとインダス文明からムガールの時代が始まるちょっと前の時代までを意識してみた。二つ目のプレートは「ムガール帝国」「大航海時代」「奴隷」「植民地」などたくさんの人々が世界をまたにかけて動き、時代が大きく揺れ動いたときを意識したプレートにしてみた。なのでインドにはもともとなく人によって運ばれてきた食材たちオクラ、唐辛子、じゃがいも、トマトなどをメインに使った料理を何品かプレートに乗せて提供した。そして最後のプレートは激動の時代に伝わった食材たちと古来から日本にある食材たちを融合させたプレートにしてみた。
今回の会場となった三重県にあるVISONという場所も酒や味噌、味醂などもそこの施設内で作り、様々なハーブや野菜なども栽培している。作れるものは身近で作るというのが一つのコンセプトになっている。以前訪れた神山と規模や形は違うが似通った何かは感じた。そして提供した様々な料理に地元で栽培されたハーブを使わせてもらった。インド料理やスパイスから作るカレーはどうしてもスパイスという原料を輸入に頼ってしまうが、その場所で取れるもので作るカレーというものもおもしろいかもしれないと思った。アーユルヴェーダの教えでも自分の生活している場所の近くでとれたエネルギーの高い食材を使うのが大事だと言っているし、ガンジーも「自分たちのものは自分たちで作る」を独立運動のときに掲げていた。
カレーを提供する会場から半径10キロメートル以内でとれた食材だけで作る。と決めたカレーを作ってみると新しいアイディアや工夫、広がりが生まれてくるかもしれない。今度そんなカレー作りをしても良いところがあったら作ってみようと思う。「半径10キロカレー」。