スパイスと白神山地
1時間と少しのフライト。機内ではテレビモニターが付いており好きなものを観れるというので観ていたらハーバード大学が研究していることがやっていたのでそれをなんとなく観ていた。なんと75年もやっている研究で700人もの人々を1930年代から現在まで追跡調査しているものだという。何を調査しているかというと「人間の幸福と健康について」。結論からいうと幸福と健康を高めてくれるのは良い人間関係だということが力説されていた。
約20分くらいの番組だったが、このハーバード大学の長年にわたる研究の成果を観終わった後にウトウトとしていたら窓の外には雪で覆われた山々が見えてきた。着陸したのは秋田県の大館能代空港。
迎えにきてくれた車に飛び乗り向かうこと20分。着いたのは白神山地の麓にある藤里町。今回はここでスパイスを生かした商品を作ったりしてほしいとのことで視察も兼ねてやってきたのである。まちつくりの会社を運営されている方が親切に色々と見せてくれた。まばらに雪が残っている田んぼには多くの白鳥の群が次の旅先、シベリアに向けて栄養補給に励んでいた。毎年来るそうなので春の訪れを知らせる風物詩と行ったところだろうか。藤里駒ケ岳を背景に広がる田んぼの景色。白神山地から流れてくる水を生かしたクレソン、わさびやセリなどの栽培。ヤマメやイワナなどの川魚の養殖。移り住んできて羊の酪農家になった方、植物の新芽の栄養価に目をつけ新規に事業をスタートした若者たち。農家民宿を運営する元気な老夫婦。魅力的な人々と壮大な自然。そして急激な人口減少、次世代がいない残すべき職業、過疎化や高齢化が進むのも目の当たりにできる。雪化粧した白神山地の後ろに広がる真っ青な空。
都会の喧騒から離れて農家民宿に泊まりにくる女性は何にも入ってない大きなおにぎりを作ってくれとお母さんに頼むらしい。海苔も巻かない。大きなおにぎり。それを持って白神山地の広い野原に行き、寝っ転がっておにぎりを頬張るのだという。遮るものが何もない大きな空。しがらみも何もない気持ちが良い野原。
藤里町に訪れたのはスパイスを使っての商品作りのため。無くなっていく様々なものを目の前にしながら何ができるかと帰りの飛行機で考えてみる。
スパイスを通しての良好な人の交流。白鳥のように栄養を求めて旅の途中に寄ってくれる。暖かい人々、豊かな自然を求めて遊びにくる人たちが増えるとそこに何か明るい兆しがあるような気がする。その一つの理由にスパイスがあると良いのではないだろうか。