朝早く起きたら良いことがあった
もう何年も前にマハトマ・ガンジーが作ったアシュラムを巡ってインドを旅したことがる。ガンジーに所縁がある方々に施設を教えてもらいながらバスや電車を駆使しながら旅をしていった。グジャラートのヴェッドチ(Veddchi)にあるアシュラムからスタートした。ここでは1週間くらい滞在した。食事はヴェジタリアンの料理を火をくべて毎日作る。チャパティとダールと野菜をスパイスで炒めたサブジなどとアチャールやチャツネなどの保存食と一緒に食べる。薪なども使うが料理の燃料に使っていたのは主に牛の糞と藁などを混ぜて作った燃料であった。日が昇るくらいから料理を作って出来上がった頃にはすっかり朝になっていた。料理をする以外は時間が許す限り綿花から糸を紡ぐ練習を糸車(チャルカ)を使ってやっていた。夜になると電気もあまり使わないので早めに寝ていたような記憶がある。太陽と共に過ごしていた。
ヴェッドチを後にして向かったのはマハラーシュトラ州のナグプールといった大きな町の近くにあるセワグラムアシュラムである。ここはガンジーが長いこと滞在したことでも有名な場所である。ここでも料理を作ることを手伝った。朝はお祈りから始まり、朝食の準備、農園の整備などの自分たちができることを手伝う。ここでの楽しみはお祈りの時間より早く、日がまだ登っていないくらいの時間に起き、セワグラムアシュラムから500メートルくらい離れたチャイ屋に毎朝行くのが楽しみであった。真っ暗で車も人もいないような夜明け前。唯一見えるのはチャイ屋のランプの灯火だけである。チャイ屋をやっていたのは優しい老夫婦だった。チャイの味わいもシンプルで優しかった。セワグラムアシュラム滞在中は毎朝のように通った。
喧騒や混沌が似合うインドの街中で夜があけた早朝の時間は車も人もほとんどいない。時が止まったような特別な感覚を味わうことができる。歩くのも困難なくらい人で溢れていた町に誰もいない。インドを独り占めしているような気分になる。セワグラムアシュラムからランプの灯りを目指していた時。牛の糞を燃やしながら朝食の準備をしていた時。朝という時間が私に特別な空間をプレゼントしてくれた。同じような感覚が王様の朝食と言われる「ニハリ」を求めて南インドから北インドを旅した時にもあった。早朝の4時や5時、あたりは明るくなっているが町にはほとんど人がいない。同じ町の違う世界に来てしまったようでもあった。
「朝早く起きたら良いことがあった」
特別な世界を見せてくれるのは朝が多かった。
少し前から「モーニングカレー」と言うのを毎月開催している。
旬の野菜や肉、魚、豆、フルーツがスパイスで色々と調理され15品から20品くらいがプレートに乗ってくる。
モーニングカレーが食べたいから朝早く起きた。
きっとその朝は特別な世界に連れていってくれると信じている。