カレー列島改造論
国の中心にある豊かな資源や人材、お金を全国津々浦々まで行き渡らせるためにはとてつもないエネルギーが必要である。物資や人を運ぶためにも張り巡らせた線路に整備された大きな道路。飛行機が飛べる航路に飛行場の建設も。経済が著しく変化していった時代、中心にある資源を各地にめぐらせていくために交通網や通信網の建設を急激に進めていったそうである。
それによって得られた様々な恩恵や今になっては弊害となっている問題などを語っているのがラジオで聞こえてきた。
経済を動かす原動力。カレーを美味しくする原動力。資源やお金。食材やスパイス。中心にばかり集まってしまうとぼやけた味になってしまう。やはり美味しさは隅々まで行き渡ったほうがみんなが美味しく食べれるものが出来上がるのであろう。かつて資源やお金をめぐらせるように必要であった道路や線路。カレーでいうとスパイスをめぐらせるために必要なのは油であろう。たくさんの油を熱することでスパイスの香りを引き立たせ、その香りを油にのせて料理の隅々まで香りを届ける。そうすることで世の中のカレーはさらにリッチに美味しく、濃厚になるのである。
「料理の隅々まで油を!スパイスの香りを高めるんだ!」
そうカレー大臣は叫んだ。
人々は拍手喝采。美味しくて濃厚なカレーを求めて多くの人々が様々な油を使い、火力を上げ油を熱しスパイスの香りを極限まで高めたものを料理の隅々まで運ばせていった。
一口目から美味しいカレー。満足感たっぷりのカレーは多くの人々を喜ばせた。
もっと!もっと!とスパイスの香りを高めるために大量の油が注がれ、それに合わせて塩も増やされていった。
油たっぷり、塩たっぷりでスパイスの香りがしっかり活きているカレーを手に入れた人々はもう昔の質素なカレーには戻れなくなってしまった。
豊かなカレーは人々に潤いをもたらしてくれたが、油たっぷり塩たっぷりのカレーは徐々に人々に蓄積していき、みんな大きくなっていった。
熱狂と活気はエネルギーとなり火力を上げスパイスの香りを引き立ててくれた。
しかし今は時代が変わり、多種多様なスパイスの使い方が各地で使われるようになっていった。
大きく、重くなった人々は動きが鈍くなり、病気になるものも現れた。
スパイスの香りを活かすために上質な油を少しだけが求められるようになり、皆が中心にあるものを求めなくなった現在ではスパイスの香りの活かし方が変わっていった。
かつて大人気だったバターチキンカレーが今は様々なカレーの登場により影を潜めていった。
カレー作り、スパイス料理に油は大事である。
今は多種多様なスパイスの活かし方が各地で生まれ、皆が中心にある資源を頼らなくてもよくなったのかもしれない。