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海外ツアー通信 その1 チェーホフの台詞といっしょに歩く外国のまち

『ギャンブラー』フランス・ポーランドツアーも、3分の2が過ぎ、エヴルー、パリ、クラクフを経てラドムにやってきました。地点の海外ツアーは2019年のノルウェー・オスロでの公演以来、ほぼ3年ぶりになります。

今回、メンバーの多くがいつもよりひどい時差ボケに悩まされている様子。久しぶりの海外だからなのか、コロナを経て、子育て中のメンバーも増えたため、夕方17:30には稽古が終わるという完璧に昼型の生活に慣らされていたためか、あるいは歳をとったからなのか……。諸説ありますが、それでもみんな元気に旅を続けてきました。

海外で公演をしていると思い出す、チェーホフ『かもめ』の台詞があります。チェーホフ自身をモデルにしているとも言われる医師・ドールンに、外国の街でどこが気に入ったかを尋ねる場面。

ドールン ジェノアですね。
トレープレフ なぜジェノアなんです?
ドールン あすこの街を歩いている群衆がすてきなんです。夕方、ホテルを出てみると、街いっぱい人波で埋まっている。その群衆にまじりこんで、なんとなくあちらこちらとふらついて、彼らと生活を共にし、彼らと心理的に融け合ううちに、まさしく世界に遍在する一つの霊魂といったものが、あり得ると信じるようになってきますね。つまりほら、いつか君の芝居でニーナさんが演じたあれみたいなね。

チェーホフ『かもめ』神西清訳

ヨーロッパではマスクをする人ももうほとんどおらず、パリのカフェはおしゃべりを楽しむ人々で溢れていて、その様子を眺めているだけで、本当に楽しい気分になりました。一方で、劇場では、コロナ以降の観客の演劇離れ、演劇人の演劇離れ、アーティスト自身がアーティストであることをやめることを選んでいるという事実、燃料不足から冬季の劇場閉鎖の可能性があること、コロナ禍でエッセンシャルワークではないことが証明されてしまった演劇・劇場の直面している厳しい現実についての話もたくさん聞きました。世界中で人々の分断が進行するなか、「世界に偏在する一つの霊魂」というイメージもかなり遠いものになってしまうのかもしれない、いや、もうそうなってしまっているのかもしれない、そんなことをつらつら考えつつ、異国の街を歩いてきました。

旅はもう少し続きます。

2022.10.3 tajima

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