憑いてるしツイてる。
「わたしと演劇とその周辺」というプロジェクトに参加しておきながら、
これまで“その周辺”すぎる周辺のことしか綴ってこなかったわたしですが、
ついに“演劇”の部分のことをお話できる日がやってきました!
というのも先日、演劇公演にて字幕のオペレーションをやってきたからです。
よーし、書くぞ!と意気込んだのもつかの間、
ゲネプロに行った日から左肩がものすごく痛くて、わたしの体は絶不調。
仕事に支障がでるほど痛い。
でも、まったく心当たりがない。
これはもしや、憑いてる?
もうそれしか理由がないので、劇場の人に聞いてみた。
そうしたら、あ〜ここのホールにはいないですね~って。
そうか、それならよかったとひと安心。
…
…ここのホールは…?
ほかのホールはどうなのさと聞きたかったけれど、
もしそうだとしたら、数日とはいえ一緒に過ごしてしまった情もあるし、
ほかのホールからわざわざやって来るくらいのアグレッシブさを持つ彼女(彼かも)。
変に刺激してシャワーの途中に現れでもしたら、冬でもさすがに怖いので考えないことにしました。
さて、気を取り直して本題に。
昨年から本業とは別に、以前勤めていた劇場の演劇公演でポータブル字幕のお手伝いをしています。
ポータブル字幕という言葉にピンとこない方もいると思うのですが、
わたしたちが舞台を観るときに耳で得ている情報を文字で伝えることで
耳の聴こえにくい人にも作品を楽しんでもらえるようにするものです。
劇場や作品によって方法は異なるようですが、わたしが携わっているものは、観ている人の手元にあるタブレットに文字を表示させていきます。
テレビの[字幕]ボタンを押すと画面上に現れるあの字幕表示が舞台でもできちゃうような感じです。
さて、字幕用台本でセリフと同じくらい大事なのがいろんな音の情報。
劇中でかかる音楽やあらゆる音の情報も文字で伝えます。
よくあるのは、ドアをノックする音とか、服が擦れる音などの動作に伴う音。
あとは、鳴っている音楽が有名なものだったらそのタイトルや歌詞、
その音量が大きいのか小さいのかなんかも。
聴こえているわたしたちにも何の音か分からないときは、〇〇のような音という感じでお伝えします。
また、演出の都合上、暗転することがあれば、前もってそれを表示してタブレットを閉じてもらい、作品の世界をより楽しんでもらえるようにしています。
当日はお芝居に合わせて文字をひたすらに送出していく作業がメインですが、準備が本格的に動き出すのは、だいたい本番の1週間前です。
これくらいになると、演出やお芝居も固まってくるのです。
わたしたちはまず、台本を読んで、字幕用台本を作っておきます。
次にリハーサル動画を見て、セリフや音情報を確認。
修正や追加があれば、その都度、台本を変えていったり、
急な変更にも対応できるように別バージョンの台本を作ったりもします。
そして最後にゲネプロを見て、動画では気付かなかった音や情報を確認し、最終的な字幕用台本を完成させます。
本番当日は複数人でオペレーションをすることがほとんどなので、どこでオペレーションを交代するかも考えます。これで準備はバッチリ。
しかし、生ものの舞台。
どんとこい!と準備万端で挑んでも、いざ本番になってみると、“聞いてないよ~!”なアドリブが多発することも(笑)
そんなときは、その場でテキストを打ち直したり、状況が許せばリスピークといってわたしたちオペレーターが役者のセリフを言い直して文字を認識させたりします。
わたしたちは役者のセリフを聞いてから文字を送信するので、
タブレットを持つ人のもとにはどうしても遅れて届きます。
見ている演技とのズレをすこしでもなくせるように、“やや早め”に“リズムよく”出すことを心がけているけれど、これがとても難しい。
普段だって鈍くさいのに、あんなに緊張感のある空間でやるなんて荷が重すぎる。
それでも、やり終えたときには嬉しさの方が上回るから、とても不思議。
とんでもなく緊張してたくせに、あ~楽しかったって思っている。
それはきっと、わたしもこういう活動を通して思いもよらない作品や世界に出会えたりしているからだと思う。とってもツイてる。
まだまだこの地域では利用してくださる人は少ないけれど、
必要な人にもっと広まって、もっと気軽に舞台を観に行く人が増えたらいいなと思う。
それに、聴こえる人も補足的に文字情報があることで作品への理解がさらに深まるというお声をいただいたので、全人類が気軽に利用できるサービスになっていったらいいな。
来月にはわたしの肩が軽くなっていますように!
それではまた。
伊藤友美の記事はこちらから。
https://note.com/beyond_it_all/m/mee22ce06ad90