私的マーケティング論

私的マーケティング論
一概にマーケティングといってもその分野は広く、かつ日進月歩、AIの進化にコロナ禍が後押しする形で遅々として進まなかったDXが動き出し、SNSにも新手の手法が目白押し、こういった目まぐるしい環境変化とともにマーケティングの方法も多岐に亘り、進歩している。玉石混交、バズワードに類するものも多数横行するが、ビジネスパーソンにとって取りあえず知りおくことは悪くない。こういった用語を並べ立てていっぱしのマーケッターを気取る若い人たちが多いのも事実。こういった用語は自ずからネットや最新のテクノロジーに立脚したものが多い。

だから最新用語を知らずに恥をかきたくないという人向けに、毎年更新される簡単解説書が「最新マーケティングの教科書」だろう。ここではKeywordという括りで網羅的に最新のマーケティング用語を分かり易く解説している。更にグーグル検索をすれば、これをなぞるように同じような解説が散見される。例えば最近よく聞くD2Cという言葉。Toを2にもじった表現としては、まずB2Bに始まり次いでB2C。そして今回のD2C。B2Bは言うまでもなくビジネス・トゥー・ビジネス、いわゆる法人マーケティングのこと。ではB2Cはと言えば、単に消費財マーケティングというより、ネットを駆使したエンドコンシューマー向けのマーケティングを指している。より広く消費者向け全般に使うこともあるが、本来はリアルに対するネットという意味だ。では同じようなD2Cとはなにか? 次回ではD2Cについて、様ざまな解説を要約する形でD2Cとは何をさすかをまとめた上で、なんのためにこの言葉があるのか?あるいは、どのような使われ方をするべきか?等々その言葉のもつ意味合いを事例を引いて解説してみたい。

だが待てよだ。日本の物販全体に占めるECを介する売り上げは急成長中とはいえ、経産省によれば2019年ベースで6.7%。一年以上経過した現在でも1割に満たない。ネット発祥の地米国でも精々10数%。音楽や映像に於けるCD,DVDからネット配信、サブスクへという流れに代表されるサービス産業へのシフト、あるいはインターネット広告が全体広告の3割に達したという事実を考慮したとしても、未だリアルのビジネスは健在なのだ。勿論飲食業や宿泊施設に代表されるサービス産業でのネット予約の増加等を加味したとしても、逆にリアルの物販業でもネットビジネスの覇者アマゾンが仕掛ける実店舗の無人化AMAZON-GOのような動きも今後加速するだろう。そもそもAMAZONは4年近くも前の2017年7月に全米最大のオーガニックスーパーであるホールフーズを傘下に収めている。明らかにネットとリアルをどのように統合的に展開してゆくかを模索する両面戦略を打ち出しているのだ。

だから今後のマーケティングを考える上では、ネットがどの分野でどのように浸透してゆくのか、あるいはその意味合いはどうか?と模索することが必要だということなのだろう。そして今後極めて大きなインパクトを持つのが、AIの進化と普及。クラウドを駆使した安価で大量のデータの蓄積と、機械学習、ディープラーニングを用いたデータ分析の精度と利便性向上。IOTの普及によって、無数のセンサーを搭載したモノから収集される豊富な消費者データ。そして政府の掛け声とコロナ禍を切っ掛けに急速に普及段階に入ったQRコード決済によって生み出される豊富な生きた購買情報。
リアルはリアル、ネットはネットではなく、実際の我々の生活にネットやAIがどのように統合的に組み込まれてゆくのか、そのような視点で未来の顧客を洞察し、ビジネス従事者はどう行動すべきかを示唆することがマーケッターに求められている。


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