体のなかは、涙でいっぱい〜島田明宏「ありがとう、ディープインパクト」を読んだ。
トップ画像は、2006年のジャパンカップの発走前のもの。
ディープインパクトは、この一度だけしか生で見られませんでした。2005年、ディープがクラシック三冠をとった年は、仕事の都合で日本にいなくて。
2006年ジャパンカップ、当日の東京競馬場の入場者数は12万182人だったそうです。
そのうちのひとりになれたのは、とても良い思い出。
自分にとって、何度でも見直したいレースのひとつが、このジャパンカップです。
こちらの本は、2007年出版。
育成時代、そして競走馬としての現役時代の様々なエピソードが時系列に綴られています。種牡馬となり大成功したストーリーはのちの話ですね。
池江調教師のジャパンカップ後のコメントに、ジーンときました。
凱旋門賞3着入線が、のちに禁止薬物の検出により失格処分となり、また、年内での競争生活引退が決定した直後のレースがジャパンカップ。まさに、正念場というレースでした。
そのレースを、ディープインパクトは見事に勝利。
“体のなかは涙でいっぱい”、とても素敵な表現ですね。
この本は、池江調教師、主戦の武豊騎手、金子真人オーナーはもちろん、育成時代のスタッフ、競走馬となってからのスタッフである調教助手、厩務員などのディープにまつわる苦労や喜びの話、想いなどが過不足なく盛り込まれていて、ディープインパクトがどんな競走馬だったのか理解が深まり、読んだあとに凱旋門賞やジャパンカップなどのビデオを見直すと、新たな感慨がありました。
個人的に好きだったのは、凱旋門賞遠征時、ディープインパクトを無事にパリに送り届けるための、人事を尽くした輸送体制。ホースストールという、競走馬専用のコンテナがどのように貨物便に積まれたか、その間ディープがどんな様子だったかまで詳しく描かれています。
ひとつのレースに関係者が人智を集結させる、その情熱が伝わってきて、気持ちが高まりました。
ディープインパクトというと、ほぼ完璧に近い成績で、あまり挫折とか、苦労とかのイメージをまとっていない感じもしますが、あれだけの名馬だったからこそのファンからの大きな期待があり、それに伴う並外れなプレッシャーと対峙する日々、新しい挑戦の日々があったんだなと思いました。
一方で、ディープインパクト自身はと言えば、ダービーのレース直前の輪乗りの時に、足をたたんで寝ようとした、というエピソードも収録されており、そんな愛嬌のあるところもまた魅力的。
少し古い本ですが、日本のトップホースの最高レベルの競争生活を知ることで、競馬への理解が深まり、楽しむための引き出しが増えました