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「孤高の人」読了。〜摘読日記_62

山岳小説の名作、新田次郎「孤高の人」を読了。

1969年出版
「山と渓谷」に連載された。


上巻を読んだところでの感想も記事にしていました。


読み終わってみると読みやすい小説だったと思うのですが、下巻でペースダウンしてしまいました。

下巻は、主人公で実在した登山家・加藤文太郎の会社での人間関係、最後の山行でパーティーを組む宮村武との関係性の変化、そして結婚など・・人付き合いに絡む場面が多く、少し退屈してしまい読むのがしんどかった。

好みとしては、山との格闘部分が良かった。

とはいえ、下界での人付き合いでの悩みや苦しみの描写があるからこそ、山行部分がより輝くのだろうな、とも思いました。

公私とも人付き合いが苦手だった主人公が、結婚を機に家庭の幸せを知り、単独行専門だったのに人生で初めて組んだパーティーで悲劇に遭う・・。皮肉な結末。

実は本を読みながらWikipediaで加藤文太郎の生涯を知ってしまったので、最後どうなってしまったかわかっていながら読み進めたのですが、それでも引き込まれました。


山行部分以外でも、新妻・花子がけなげで愛らしい。

結婚前に染みついたルーティン、リュックザックに石を詰めて出勤しようとする文太郎への、花子の素朴な疑問「なぜ、石を背負って会社へ行くの?」が可笑しかった。

他にも、登山のせいで結婚式に遅刻したり、結婚初夜に妻より先に爆睡したり、奇行の数々。

孤高の人は、奇行の人でもあったと言えそう。

このような人物が実在した、というのが驚きです。

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