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「空きっ腹と乗馬靴」を読み、若手騎手引退のニュースに触れ思うことをつらつらと。
最近、こちらの本「空きっ腹と乗馬靴 競馬学校の青春」を読み終えました。
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スポーツライターの阿部珠樹さんが競馬学校やそこで学ぶ若者たちに取材を重ね、
競馬学校の教育内容や、そこで学ぶ若者たちの実像に迫った内容。
主な取材対象は、競馬学校・騎手課程第9期生、10期生の当時の「騎手の卵たち」。
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吉田豊騎手、幸英明騎手、岩部純二騎手はまだ現役ですね。(この記事のヘッダー画像は最近パドックで見た幸騎手とエイシンワンド号です。)
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この本については、興味深く読み終えたものの、読書感想記事を書こうとは思っていませんでした。
ところが、今日のニュースで、規則違反を犯し裁定待ちで騎乗停止中だった永野猛蔵騎手という4年目のホープが突如引退してしまい、本の内容に絡んで、少し考えさせられてしまいました。
JRAの発表によりますと、永野騎手の規則違反に対して、12ヶ月の騎乗停止処分を伝えたところ、本人から免許取消の申請があったそうです。
この、「本人から辞めたい」というのがどうにも引っ掛かります。
違反の内容は以下2点。
・調整ルーム内に1台目を偽装して2台目を持ち込み、1年4か月間に渡り継続的にスマートフォンを使用していた事。
・骨折休養期間中に親族に対して馬券予想行為を行っていた事。
違反についてはしっかり反省して、戻ってくればいいのに、自分で引退を決断してしまったんですね。
個人的に、永野騎手は若手の中では個性も感じられ、馬券的にもけっこう狙わせてもらってたんだけど・・本当に残念。
競馬界では若手騎手のスマホ持ち込み事件が頻発しており、藤田菜七子騎手も先月突然引退してしまいました。
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最近の問題を掘り下げる気はあまりないのですが、この「空きっ腹と乗馬靴」を読むと、騎手候補生本人たちの努力はもちろん、競馬学校の努力も並々ならぬものがあることが分かります。
競馬学校を作って以来、騎手を育てる方針は、「入試の時点で人材を選りすぐり、3年間で騎手としての基礎を身につけさせ、全員を騎手としてデビューさせる」というものになったそうです。
それ以前は、騎手養成課程を経て騎手になる仕組みだったのですが、免許試験を受けても不合格になる者も多かったとのことです。
かつて、競馬学校ができる以前、騎手養成が馬事公苑で行われていたころは、講習を受けてもすべてが騎手の免許試験に合格するとは限らなかった。短期講習などは、不合格になるもののほうが多かったほどである。厩舎の「下乗り」として修行を積みながら、免許試験に合格できず、騎手を断念した若者も数多くいた。それだけに、なにがなんでも騎手になってやるという気持ちは、現在の騎手課程の生徒たちよりも強かったといえる。
この本は30年も前のものですが、少数精鋭の騎手の卵たちを競馬学校で預かり、育て、ともかく全員デビューできるまで鍛える・導く、という方針は今も同じだと思います。
入試を「狭き門」にする代わりに、一定の技能を身につけさせ、免許を取らせ、デビューまで導く、というところに競馬学校としてコミットしているのだと思います。
そうしてデビューを果たした若手騎手たちが数年で辞めてしまうというのは、学校から送り出した教官たちも辛いのでは?
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上記引用しましたが、今回の永野騎手の違反や他の若手騎手の違反に触れると、「なにがなんでも騎手になってやる」という気持ち、ひいては、「石にかじりついても騎手を続けてやる」、という気持ちは薄まっているのかもしれない、と感じます。
また、競馬界に限らず、多くの業界で、ハングリーさというものは現代の気風に合わなくなっているのかもしれない、とも思います。
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話が逸れてしまった感じもしますが、それにしても、これだけ若手騎手がぽんぽん辞めてしまうと、業界としての先細りは心配です。