鉄道開業150年によせて:一本列島の発展そして継承2022
汽笛一声新橋を… はや我が汽車が離れてから一世紀半が経った。明治黎明の先進技術の結晶体たる鉄道も、いまや日本の高い技術力を象徴する世界に誇る交通機関の代表格とまでなっている。
さて、今秋JRの主要各駅を訪れると、どこかで鉄道150年記念キャンペーンの文句を見聞きしたことだろう。とくにJR東日本では、現在同社路線のひとつとして在る、東海道線の新橋横浜間の開業から丁度一世紀半ということで、大々的にプロモーションを展開している。
思えば本邦における近代化とは、交通やインフラ整備において欠かせなかった鉄道の歴史そのものといってよいだろう。明治初年から鉄道黄金期にかけてあまりに大きな役割を果たしたことは今さら言うまでもない。陸蒸気がやっと高輪の築堤を越え、桜木町の初代横濱ステンショに到着したときから、ゆうに一世紀半ものあいだその歩みを止めなかった。とてつもなく永く、波乱万丈の道程。
いよいよ来たる鉄道150年という大記念を祝して、文句なしの万歳三唱といきたいところだが、一方でこれからの時代、まさに未曾有の激変期とされるいまだからこそ、もう半世紀後の鉄道200年というころには本邦交通はどうなっているのだろうか、などと考えるも無理ない。
江戸時代に五街道を往来した旅人が、いまや時速300㌔㍍で走り抜ける新幹線をみたらなにを感ずるであろうか。きっと同じ日本の交通とは思えないだろう。半世紀も経てば、もはや鉄道そのものが過去の遺産になりつつあるかもしれない。
産業構造の転換期にあって、これからの鉄道そして交通の行く末を案じながらも、一方でまずは開業爾来一世紀半もの長久の歴史を噛み締め、近代国家建設に奔走した先人の上に立つ現代人という思いを胸に、次の150年を創造せねばならない、と決意新たに秋を往く。