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宮本浩次氏エレファントカシマシ感想Ⅱ

 「歌うことは天職だ」と宮本浩次氏は何度か語っている。私の知るかぎり、もっとも穏やかに、もっとも深くそれを語ったのは、日比谷公園でメンバーたちと受けた映像インタビューである。

 氏は大意としてこう言っていたと記憶している。自分が歌うことを天職だというのは、だれよりも一生懸命歌えるからだと。ごく単純な言葉だがこれはものすごい認識だと私はずっと思っている。

 まずこの言葉は彼の稀有な歌唱力を歌う理由としていない。透明な高音から爆発するシャウトまで。七色の歌声を誇るアクロバッティックな天才的な歌唱力は天職の条件としては副次的にすぎないとでもいうようだ。

 また「だれより」の比較の対象はどこまでのひろがりをもつのか。アーティスト全員とくらべてそうなのか。飛躍のチャンスに賭けるアマチュアやピュアに全力に歌う幼児とくらべてさえ一生懸命なのかもしれない。

 エレファントカシマシを視聴しよう(公式)。映像はレコーディングの撮りおろし(ただし別テイク)だが、この「約束」(『MASTERPIECE』所収)の宮本浩次の姿に私はくりかえし感動している。

THE ELEPHANT KASHIMASHI official youtube channel「約束」PV映像

 この映像に目立つ大きな動きはない。頭をうつむかせ、顔をあげ、目をつむり、目をみひらく。そのひとつひとつが、歌うその瞬間の「ことば」に注力している。そのさざなみのような没頭がいつか大きなうねりを生む。

 一生懸命歌うことは心だけのことでない。心を言葉に、心を音にする。そのつよい繊細なちからを身体で刻一刻とかなえる困難な歩みのことだ。だからこういおう。渾身というのは、たとえば宮本浩次氏が歌う姿をさすのだ。


 

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