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通訳ガイドのススメ―英語が「話せる」ようになりたい人へ
第2回 リクエストは「忍者に会いたい!」
新城宏治(株式会社エンガワ 代表取締役)
行く先々の英単語をマスター
通訳ガイドとゲストの出会いは一期一会です。
もちろん、とても親しくなってその後もやりとりが続いたり、再来日した際に連絡をくれたりするゲストもいるのですが、多くの場合は恐らく二度とは会わない人たちです。それだからこそガイドは、ゲストに日本や日本人にいい印象を持ってもらいたいし、日本滞在中にいい思い出をたくさん作って、笑顔で日本を離れてほしいと思うわけです。
遠路はるばる日本に来るぐらいですから、多くのゲストに共通しているのは「好奇心旺盛」なことです。日本滞在中は、時間のある限りいろいろなところに行きたい、経験したいと思っています。前日にニューヨークから13時間かけて成田に着いたばかりだというのに、翌朝5時に豊洲市場に行ってマグロのセリを見るのも、朝6時に相撲部屋に行って朝稽古を見るのもへっちゃらな人もいます(これが連日だとガイドの方はきついですが、、、)
ゲストが豊洲市場をご希望であれば、ガイドは魚や食材に関する単語や表現などを前日のうちに調べておくでしょう。そうしておけば、翌朝、市場で魚の名前を聞かれてもサラサラと答えられます。必然的に「調べる→覚える→使う」の好循環を繰り返すことになりますので、いろいろな場所をガイドすればするほど、ボキャブラリーも増えていきます。
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相撲部屋も同様です。土俵、まわし、まげ、親方、ちゃんこ鍋、さまざまな決まり手など、使い慣れない英単語ももちろんですが、好奇心旺盛なゲストはここぞとばかりに、力士についてあれこれ聞いてきます。「なぜこんなに朝早くからトレーニングをしているんだ?」「どうやってあんなに大きい体を作るんだ」「昼間は何をしているんだ?」……英語と一緒に、自然と大相撲についても学べます。これもガイドの楽しみの一つです。
想定外のリクエスト
ゲストとのやりとりは、ガイドからのメールで始まります。最初のメールでは、ゲストのリクエストを聞きます。
ゲストのリクエストは千差万別です。どんなリクエストが来るかなと思っている時は楽しい時間です。案の定、予想を超えるリクエストが来て(笑)、それをどうやったら実現できるかあれこれ調べるのもガイドの醍醐味です。
日本のアニメ好きの子供連れの場合は、具体的なキャラクター名を挙げてグッズが欲しいというリクエストが来ます。正直、オジさんガイドは見たことも聞いたこともないようなキャラクター名ですので、必死に調べます。
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ポケモンが好きな子供も多いです。ポケモンの名前を言ってくれるのですが、調べてもそのポケモンが見つかりません。後で分かったのですが、ポケモンの中には日本名と英語名が全く異なる場合があります。
おみやげに包丁が欲しい人、中古の腕時計が欲しい人、昔流行ったテレビゲームソフトが欲しい人、、、ショッピングだけでなく、アニマルカフェに行きたいという人も多いです。猫や柴犬はもちろん、うさぎ、ふくろう、カピバラ、ハリネズミ、爬虫類、、、日本のアニマルカフェは、ありとあらゆる動物に出会うことができます。
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先日は「忍者に会いたい」というゲストもいました。残念ながら、こればかりは望みをかなえてあげることができませんでした。
ゲストを通して日本を再発見する
どんなリクエストが来ても、大抵のことは調べれば何かしらの情報が出てきます。
調べてみて、正直、こんなお店があったのかと驚くことも多いです。そして、ゲストからのリクエストがなければ、決して足を踏み入れないようなお店に足を運びます。これもガイドの楽しみの一つです。ガイドした数だけ、自分の世界が広がっていくような感覚になります。
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わかりやすく、時にはユーモアを交えて説明します
私もそうですが、大抵の人は自分の日常を持っていますので、そこから一歩出るという機会は意外と少ないように思います。行ったことのないお店で、買ったことのない物を買い(実際に買うのはゲストでガイドはそれをサポートするだけですが)、店員さんと「コロナが明けて、ようやく旅行客も戻ってきましたね」などと世間話をするのは、楽しいものです。
できるだけゲストの希望をかなえてあげること、それがゲストの満足につながり、ガイドのやりがいにつながります。
この記事を書いた人:新城宏治
1965年生まれ、千葉大学文学部史学科卒業。株式会社アルクで30年間、語学書の編集に携わる。2020年に独立して株式会社エンガワ創設。現在、株式会社エンガワ代表取締役のほか、大学の非常勤講師、NPO活動などにも関わる。
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