![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/152333208/rectangle_large_type_2_60eaed390a761049e4f7d697a6086f77.jpeg?width=1200)
KPIの運用_Vol.3 KPIでフォーキャストする
「KPIで予算達成度とその再現性を高めよう」シリーズとして、前回はKPIを活用したPDCAにおける”KPIを活用したCheck”「KPIの運用_Vol.2 KPIでCheckする」について書きましたが、今回はそれを踏まえたフォーキャストについて書いていきます。
部門間のセクショナリズムやサイロ化を防ぐ
各部門で、それぞれが自部門のKPIを達成することに集中するあまり、部門同士であつれきが発生することがあります。
たとえば、マーケティング部門のKPIが「リード数」を増やすことだった場合、その後のフォローも考えず、ひたすら営業部門にリードを受け渡すことのみに執着しているとします。
それを続けると「リードの質が悪すぎる」と営業部門の不満爆発につながりかねません。
こういった部門間のあつれきがないかチェックし、それを解消することも大切なポイントです。
たとえば、マーケティング部門のKPIが「リード数」、それを引き継いで商談する営業部門のKPIが「商談数」の場合、マーケティング部門のKPIに「商談数」を加えることが1つの解決策になりえます。
これにより、マーケティング部門は後続の部門である営業部門のKPIも自部門の目標として追うことになります。
そうすると、マーケティング部門だけでそのKPIを達成できず、営業部門の活動の影響を受けることになります。
その結果、マーケティング部門は「自部門が獲得したリードが商談につながっているのか」と、自ずと後続の営業部門のプロセスに関心を持ち、コミュニケーションをとり、営業部門に受け渡す「リードの質」を意識した活動につながります。
その他、カスタマーサクセスチームに既存顧客からの商談創出の目標を持たせるなど、部門横断的なKPI設計と目標設定をすることで、部門間のセクショナリズムやサイロ化を防ぎ、部門間連携を促進することができるはずです。
このように、KPIを活用して、部門間のあつれきを乗り越え、部門間のコミュニケーションや連携を促進する「仕組み」をつくりましょう。
フォーキャストで予算達成の再現性を高める
その仕組みの1つが予測(フォーキャスト)です。
工場で言うと、1工程が遅れたらそれを2工程が知って未来を予測して準備や対策を取る必要があります。
売上獲得におけるマーケティングやセールスのプロセスについても同じです。
そこで活用すべきなのがKPIです。
これまでも何度か書いてきた通り、KPIにはKGIに至るプロセスの中で、成果に近い結果指標と、成果から遠い先行指標があり、できるだけ先行指標を設計して把握できるようにしておけば、早め早めに成果をコントロールできます。
例えば、Webリード数の実績が計画に対して減っているとなれば、商談の獲得率が計画通りだとしても、そのうち商談数が減りそうだと予測できます。
さらに、商談数が減ってしまえば、成約率が計画通りだとしても、そのうち契約数が減りそうだと予測できます。
そうなれば、契約単価が計画通りだとしても、そのうち売上が下がるということが簡単に予測できるので、「別の方法で商談数を確保しよう」といったように「売上が下がる」という結果が出る前に先手先手でコントロールをしやすくなります。
つまり、先行指標をもとにKGIを予測して、そこからの逆算でマネジメントしていきます。
部門連携という視点でみれば、たとえば、マーケティング部のWebリード数の不足を、セールス部がリカバリーするという構造になります。
このようにすることで、部門間の連携をより深めていくことも可能でしょう。
このように、
まずは未来を予測する。
次に、その予測結果と目標とのギャップを知る。
そして、その差分を埋めるにはどうするかを考えて実行する。
こういったサイクルを早めることができれば、予算達成の再現性は高まるはずです。
KPIによるフォーキャスト
さて、このフォーキャストについて掘り下げてみましょう。
これまで、KGIやKPIの実績の分析について説明しましたが、そういっ た「結果の分析」をする目的は何でしょうか。
過去を分析すること自体が目的になってしまっているケースもあるか もしれません。
しかし、本来は「これから何をすべきなのか」を意思決定するために過去を分析しているはずです。
つまり、「未来に向けた意思決定」をするために過去の結果を分析しているといえます。
未来に向けた意思決定を適切に行うためには、「魚の目」で時の流れ を見て、「今のままだったらどうなるのか」を知ることがとても大切です。
以下では、KPIを使って過去を分析し、その結果を報告するだけで終わるのではなく、それを踏まえて、KPIを使って未来を予測し、ビジネスにおける意思決定に役立てることを考えてみます。
そこで、「年単位」の計画達成に向けた「月単位」で逆算思考について整理します。
過去からの成り行きで日々行動していて、「このままで年次計画が達成できるのか」がわからないまま日々を過ごしている会社が多いです。
これは、現状のままだと年度末の着地見込がどうなるかが見えておらず、年次計画との比較ができないことが1つの原因です。
KPIツリーをつくることで、日々の活動がKGIにどのようにつながるのかを可視化しました。
つながりが見えることで、日々の活動に紐づくKPI数値が、どのようにKGI数値に影響を与えるのかがわかりやすくなりました。
その結果、想定される各種のシナリオ(改善案)を実行したらどうなるかを数値でシミュレーションして予測し、どのシナリオが最も効果が出そうかを確認して、合理的にシナリオを選択できます。
その具体的な方法について以下で見ていきます。
まずは、年度末までをKPIのプロセスに沿ってシミュレーションします。
以下の表の例で、1月から6月までは実績値、7月から12月までは計画値が並んでいるとします。
![](https://assets.st-note.com/img/1724890046787-6rCtG5t8z6.png?width=1200)
このように、実績の推移を見ながら、その後の見込みをシミュレーションし直します。
1月から6月までの実績推移を見ていると、7月以降の計画を見直した方が良さそうです。
そこで、たとえば、次のようなシナリオを考えてシミュレーションし直したとします。
① テレアポ数の実績推移を見ると、今の人員数では当面の間は計画の達成が難しそうなので、7月以降のテレアポ数の見込みを下げよう。
② アポ獲得率は、計画に近い水準で推移しているので、いったん計画のままにしよう。
③ 「 ① × ② 」の結果として、商談数がシミュレーションできる。
④ 成約率は、逆に計画を上回る水準で推移してきているので、7月以降は全体的に見込みを少し上げつつも、⑥の契約単価が上がるにつれて少しずつ下がっていくと想定してみよう。
⑤ 「 ③ × ④ 」の結果として、契約数がシミュレーションできる。
⑥ 契約単価の実績推移を見ると、計画通りのアップセル・クロスセルは当面難しそうなので、年度末に向けて少しずつ当初の計画値を達成できるようにしていこう。
⑦ 「 ⑤ × ⑥ 」の結果として、売上がシミュレーションできる。
その結果が以下の表です。
![](https://assets.st-note.com/img/1724890086451-33KLPp45ca.png?width=1200)
KPIツリーの下階層から上階層に向かって、KGIに向うKPIのプロセスが続いていきます。
このKPIのプロセス(=KPIツリーの下階層から上階層へのプロセス)に沿って、KPIツリーの下階層から順にKPIの実績値の推移を見ながら今後の予測をして、それを積み上げていってKGIの予測をしていきます。
1月から6月の実績と、7月から12月の予測の結果を合計したものを年度末の「着地見込」と呼ぶことにします。
そして、その着地見込と当初計画を比較したところ、次の表のようになったとします。
![](https://assets.st-note.com/img/1724890111635-EuyhRJACW9.png?width=1200)
これを見ると、次のことがわかります。
① 今のままだと売上の未達成が2,150千円になりそうだ。
② その原因としては、契約単価と契約数が、ともに少しずつ未達成になりそうなことが原因だ。
③ 契約数が未達成になりそうな原因としては、成約率には問題がなさそうなので、商談数が大幅に未達成になりそうなことが原因だ。
④ 商談数が未達成になりそうな原因としては、アポ獲得率には問題がなさそうなので、テレアポ数が大幅に未達成になりそうなことが原因だ。
やり方としては今までと同様、KGIをスタートにKPIツリーの階層構造を下っていきます。
その上で、当初の計画を達成するために、次のような具体的な施策を考えて、再度シミュレーションをし直します。
① テレアポ数を7月から12月の残り6ヶ月でリカバリーして増やす必要がある。
② ただ、急に増やすにはリソース面でも限界があるので、アポの取り方を見直してアポ獲得率を少しでも高める施策を考えよう。
③ 成約率は今のところ問題ないので今のままのアクションを続けつつ、その成約率を下げないようにしながら、アップセル・クロスセルによって契約単価をもう少し上げていく必要がある。
これを繰り返して、着地見込が当初の計画に限りなく近づく、または当初計画を達成できるシナリオと施策を見つけていきます。
見つかれば、そのフォーキャストに沿って施策を実行していきます。
以上で述べたことは、以下のステップに集約できます。
これらのステッ プを繰り返すことで、予算の達成度は上がるはずです。
Step.1 今のままだったらどうなりそうかを KPIツリーにそって予測する。
Step.2 その予測と計画との差をはっきりさせる。
Step.3 その差をどのようにして解消するかを考えて行動する。
KPI の有効な活用方法は、先行指標をとらえて未来の成果をコントロールすることに他なりません。
先行指標の KPIを使って結果指標の KPIを予測し、 その予測と計画の差をはっ きりさせて、その差を解消するためにやるべきことを決めて行動するというように、未来予測からの逆算でマネジメントすることが大切です。
未来を予測して先手先手で成果をコントロールしましょう。
次回に向けて
今回は、予算達成度とその再現性を高める方法として、KPIを活用したPDCAのうち、Actionのフェーズにおける「フォーキャスト」について書きました。
その結果、「どのKPIから改善していけばいいのだろう?」という疑問が出てくると思うので、次回はそれについて書いてみたいと思います。
「KPIの運用_Vol.4_どのKPIから改善するか?」をぜひご覧ください。
当社では、予実管理の精度を高めるクラウドシステム「Scale Cloud」を提供しています。
一般的な予実管理システムとの違いは、①結果指標だけでなく先行指標のKPIも集約してPLの予実管理と紐付けられ、②KPIの設計と運用のコンサルティングサポートがついていて、③料金は2分の1以下(月額10万円から)です。
Scale Cloudが管理部と事業部の共通のプラットフォームとなり、予実の達成や未達成の要因がどの部門のどのKPIにあるのかの共通認識を持ちながら議論し、一緒に予算達成に向けてPDCAを促進することができます。
少しでも興味を持っていただけたら、ぜひWebサイトをのぞいてみてください。
書籍を出版させていただいています。
起業してからの約17年間で多くの企業とお付き合いさせていただきましたが、成長する企業や組織には、「数値の大切さを知っている」という共通点があるように思います。
単に知っているだけではなく、数値を使って事業の状況を客観的に見て、考え、意思決定して行動することが習慣化(仕組み化)されていました。
本書では、KPIという数値を活用して、ロジカルに、スピーディーに、組織的に、PDCAをまわす仕組みを書いています。
事業目標を達成するための仕組み、さらに、その目標達成を一時的なもので終わらせるのではなく、継続的に達成し続けることができる仕組みづくりを、具体的に実践することにこだわって書いていますので、少しでもみなさまのご事業のお役に立てれば幸いです。
![](https://assets.st-note.com/img/1724890374593-U2Hvms3lem.jpg?width=1200)
X(旧Twitter)のフォローもぜひよろしくお願いします。https://twitter.com/hirose_yoshi