KPIの設計_Vol.3 KPIツリーはどこまで細分化する?
「KPIで予算達成度とその再現性を高めよう」シリーズとして、前回はKPIツリーをつくるにあたっての「KPIの設計_Vol.2 トップダウン?ボトムアップ?」について書きました。
今回は、実際にKPIツリーをつくる際に必ず出てくる、「どこまで細かくつくっていけばいいのか」ということについて書いてみたいと思います。
KPIツリーを細分化しないことのデメリット
KPIツリーをつくっていくと、「どこまで細分化すればいいのだろう」という疑問が出てくると思います。
そこで、まず、KPIツリーを細分化しないことのデメリットを考えます。
複利の効果を得られにくい
KPI管理を始めると、「それぞれのKPIをそこそこ達成しているのになぜかKGIが達成できない」と感じる場面が出てきます。
それは、KGIに至るプロセスを細分化できていない、つまり、KPIツリーの階層が少ない(=KPIツリーを細分化できていない)ことが原因であることも多いです。
KGIを受注数として、受注につながるKPIのプロセスを例に考えてみます。
たとえば、次の例ではKPIツリーは3階層になっています。
ケース1
売上 5,000
契約単価 100
契約数 50
成約率 50
商談数 100
この状態で、現状が上記の数値だとして、契約単価、成約率、商談数が、それぞれ1.1倍になると、次のように売上が6,600になって、現状の5,000に比べて1,600(32%)増えます。
ケース2
売上 6,600
契約単価 110
契約数 60
成約率 55
商談数 110
それぞれのプロセスをさらに細分化するとどうなるでしょうか。
KPIツリーをさらに細分化して以下のようにしたとします。これで4階層です。
ケース3
売上 5,000
契約単価 100
契約数 50
成約率 50
商談数 100
商談化率 50
リード数 200
より細分化したKPIであるリード数、商談化率、成約率、契約単価が、先ほどと同じようにそれぞれ1.1倍になるとどうなると、次のように売上が7,260になって、現状の5,000に比べて2,260(45%)も増えます。
ケース4
売上 7,260
契約単価 110
契約数 66
成約率 55
商談数 121
商談化率 55
リード数 220
現実のビジネスはそんなに単純ではありませんが、事業のプロセスを細分化してKPIツリーをつくり、それをもとに課題を発見して改善策を考えて実行し、それぞれのKPIの数値を愚直に1%でも0.1%でも上げていくと、複利のようにKGIの数値に大きなインパクトをもたらすことが見てとれます。
KPIツリーを見ても何をすべきかよくわからない
KPIツリーをつくっても、KPIの分解が十分にできていないと、「何をやるべきなのかがよくわからない」となりがちです。
上記のケース1とケース3のどちらのKPIツリーも、「商談数」というKPIまでの分解は同じです。
しかし、ケース1のKPIツリーは「商談数」までで分解が止まっていますが、ケース3のKPIツリーはさらに「商談化率」と「リード数」に分解しています。
「商談数を増やそう」とする場合、「どうやって増やすのか」まではケース1のKPIツリーの中に盛り込まれていないので、人によってアクションが変わってしまうかもしれません。
何をすればよいかわからない人もいるでしょう。
つまり、商談数を増やす方法がその人任せになり属人化してしまいます。
あるいは、商談数が増えたとしても、なぜ増えたのかという原因がブラックボックス化してしまいます。
一方、ケース3のKPIツリーであれば、商談数を増やすためには「商談化率を高める」か「リード数を増やす」かのどちらかだとわかります。
そうすれば、「商談化率を高めるために、○○しよう」「リード数を増やすために、☓☓しよう」というように、具体的な行動につなげやすくなります。
もちろん、この「リード数」をさらに分解することもできます。
このように、KPIツリーをどんどん分解することで「何をやるべきか」が明確になっていきます。
日々の行動に迷いがなくなるくらいに細かく分解していくことで、「KGIを達成するためには何をすべきか」がよりはっきりするので、KGIを達成し続けるノウハウが溜まり、事業の再現性が高まるのです。
先行指標となるKPIまで分解できていない
ケース1からケース4のKPIツリーの共通点としては、右から左へと時間が流れています。
つまり、右にいけばいくほど日々の「行動」で、左にいけばいくほど行動した「結果」になっています。
ケース3でいえば、リード獲得という行動をした結果、商談数という結果につながり、商談という行動をした結果、契約数という結果につながるという関係になります。
KPIツリーの右に行く、すなわち時の流れをさかのぼるほど、結果に対して先んじて影響を与える要素である「先行指標」となります。
出てしまった結果はコントロールできません。
なので、コントロールすべきは時系列の早い先行指標です。
たとえば、ケース3のKPIツリーでは、「リード獲得→商談→契約→売上につながる」という流れになっていますが、先行指標であるリード数が減れば、そのうち商談数が減り、さらにそのうち契約数も減って、結果として売上も減っていく可能性が高くなります。
先行指標をもとに結果を予測して、結果が出るまでに先手先手で行動することで、結果をコントロールすることが重要です。
これがKPIを活用することの大きな利点です。
次回に向けて
さて、次回はKPIツリーを細分化する時のコツについて書いていきます。
「KPIの設計_Vol.4 KPIツリーを細分化するコツ」をぜひご覧ください。
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