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KPIの設計_Vol.2 トップダウン?ボトムアップ?

KPIで予算達成度とその再現性を高めよう」シリーズとして、前回はKPIツリーをつくるにあたっての基礎知識「KPIの設計_Vol.1 KPI設計のフレームワーク」を書きました。
今回は、実際にKPIツリーをつくるときに、トップダウンで作る方がいいのか、ボトムアップで作る方がいいのかについて書き進めていきます。


トップダウンで作るかボトムアップで作るか

KPIツリーをつくるにあたって、トップダウンとボトムアップのどちらで作るべきかについて、それぞれのメリットとデメリットは以下のとおりです。

トップダウン 

● KPI ツリーをつくるときの関係者が少ないのでスピーディー につくりやすい。 
●トップの意図を反映しやすい。
●現場の納得感が得にくく、現場の 視点が漏れて実務と乖離したものになりがち。 

ボトムアップ 

●現場の納得感を得やすい。 
●現場の視点が入って実務に即したものになる。 
● KPI ツリーをつくるときの関係者が多くなって、意見の食い違いなどからつくるのに時間がかかる。 
●トップの意図が反映されにくい。


トップダウン方式で進めるのであれば、その後の運用の中で、現場の意見を聞きながら、 KPIツリーを柔軟に改変していくといいでしょう。

ただ、スピード重視でない場合は、ボトムアップ方式でつくることをオススメします。

理由としては、「チーム・組織・会社としての目的・目標(業績や生産性など)を達成すること」を目的にKPI管理をはじめる場合が多いので、KPIツリーをつくるのに時間がかかったとしても関係者全員の納得感が得られて、かつ、実務にそった内容にKPI設計することで、短期的にも長期的にも効果を得やすいからです。

また、「KPIの数を増やす」などのアップデートもしやすくなります。

トップダウン方式で最終目標と中間目標を設定する場合、最終目標に向けてやるべきことが固定化し、現場の社員が自ら「最終目標を達成するためには何をどうすればいいのか」を柔軟に考える力が低下する可能性があります。

さらに社員が「決められたプロセス通りに行動していればいい」と考えたり、経営者が目標やプロセスを決めないと行動できなくなるおそれもあります。

ボトムアップ方式でKPIツリーをつくることは、このデメリットに対して有効です。


関係者が集まってつくることの重要性

では、ボトムアップ方式でつくる場合、どのようなメンバーに集まってもらってつくることが有効でしょうか。

たとえば、マーケティング部・営業部・カスタマーサポート部がある企業の場合、KGIを事業全体の「売上」にすると、その目標達成に対して3つの部門のいずれも強く関係していることから、3つの部門の部長、または各部門の状況を把握しているメンバーが集まってKPIツリーをつくるとよいでしょう。

また、KGIを営業部の売上にした場合は、営業部のリーダーや主要メンバーに集まってもらってKPIツリーをつくるとよいでしょう。
このように、決めたKGIの関係者が集まって意見を出し合い、共通認識を持ちながらつくることが大切です。

設計したKPIの数だけそのデータを取らないといけないので、KPIの数が増えれば、データ集約に時間と手間がかかります。
それには各部門、各メンバーの協力が必要です。
すでに存在するデータなら集めてくるだけでよいですが、存在しないデータの場合は取得できるように業務フローを見直さなければなりません。

関係者が集まってKPIツリーをつくることで、「なぜそのKPIが必要なのか」が理解されやすくなります。
関係者がコミットしやすくなることで、業務フローが改善され、運用が容易になるはずです。

クロス・ファンクショナル(部門横断的)なプロジェクトとして、関係者でいっしょに取り組むようにしましょう。
このように進めることで、KPIの設計に対して現場の納得感が得られないという失敗を防止しやすくなります。

「経営者がKPIを設計して現場に落としていった」「管理部門でKPIを設計して事業部門に通知した」「部長がKPIを設計して部内のメンバーに指示をした」というように、トップダウンでKPIを導入する場合は、現場のメンバーに対して押しつけになりがちです。

現場がKPIマネジメントを納得して受け入れない場合、他人事として捉えて主体性をもてなかったり、なぜそのKPI設計なのかの理解が浅くなったりして、しっかり運用できずに効果が出にくいおそれがあります。

また、現場からのKPIデータを取得するのに手間がかかったり、不正確なデータが提出されたりすることもあります。

そうなると、運用の手間がかかる一方で、運用効果が見えてこないことでさらにKPI管理に本腰が入らなくなるため悪循環です。

なお、この場合のデメリットは、「関係者が多くなればなるほどKPI設計に時間がかかる」ということです。
そもそも全員が集まって議論するための日程調整にも時間を要しますし、異なる意見が出やすくなるので全員合意するのに時間を要する可能性が高いためです。
ただし、この点を考慮しても、関係者が集まってつくるほうがいいでしょう。

次回に向けて

次回は、KPIツリーをつくるときに、「どこまで細分化してつくればいいのか」について書いてみます。
KPIの設計_Vol.3 KPIツリーはどこまで細分化する?」をぜひご覧ください。

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