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KPIの運用_Vol.1 KPIでPlanをたてる
「KPIで予算達成度とその再現性を高めよう」シリーズとして、前回までの5回に渡る「KPIの設計」編で、目標(KGI)と、それに至るまでのプロセス(KPI)がKPIツリーで明確になったら、次にKGIの目標値を達成するために必要な各KPIの目標値を明確にします。
この目標値の立て方、つまり、Planの立て方には逆算型と積上型があります。
今回は2種類のPlanの立て方とそれぞれのメリット・デメリットについて書いてみます。
逆算型Planのつくり方
年単位や月単位でのKGIの目標を達成するためには、KPIツリーで抽出した各KPIが、それぞれどれくらいの「数値」に達するべきなのかを逆算で導き出す方法です。
そのためのステップは以下です。
なお、この「KPIの運用」シリーズでは、KGIを「売上」として書き進めます。
Step.1 KGIの数値目標を決める
まずは、KGIである「売上」の数値目標を決めます。
会社または事業部での売上予算が決まっているのであればそれがKGIの目標数値となります。
Step.2 KPIの数値目標を決める
KGIの目標値が決まったら、次はKPIの目標値を決めます。
KGIが最終的に達成すべき目標の数値であり、KPIはその目標値を達成するために、そのプロセスの途中にある中間地点で達成しておくべき数値です。
KPIの目標値があると、プロセスの途中にある各中間地点のどこに課題があるのか、そのプロセスごとにどれほど頑張る必要があるのかといったことが把握しやすくなるので、PDCAを早く回せるようになります。
逆に、KGIの目標値しかなければKGIの結果が出るまでPDCAが回せなくなってしまいます。
具体的な方法は以下のとおりです。
売上 1,000
契約単価 10
契約数 100(= 売上 ÷ 契約単価 )
成約率 20
商談数 500(= 契約数 ÷ 成約率 )
商談化率 50
リード数 1,000(= 商談数 ÷ 商談化率 )
売上(KGI)の目標値が1,000で、対象サービスの料金が10だとすれば、契約数は逆算で100になります。
このようにKGIから上記のような逆算の計算式を組んでおき、KGIからの逆算で、上位階層から下位階層に向かって目標値を決めていきます。
なお、目標値を決める際には、KPIごとに直近の実績値を集計してみます。
そして、その実績値を参考にしながらKPIごとの目標値を決めます。
その過程で、自分自身の現状を数値で客観的に把握することができて、目標を達成するためには何が足りないのかが理解できるようになります。
ただし、実績値がない場合もあります。
その場合は、一旦仮の目標値を設定しておき、運用しながらその目標値を修正していきます。
逆算型のメリットとデメリット
逆算型のメリットは、KGIの目標値が決まっている場合に、各KPIの目標値を定めやすいことです。
つまり、上記では1,000というKGIの目標値から逆算しましたが、仮にこれが社内売上予算として1,100と決まっていたとしても、そこからの逆算でKPIごとの数値目標を決めていきやすいということです。
一方のデメリットは、後述する「積上型」のメリットの逆で、KPIごとの数値変化によるKGIのシミュレーションがし辛いという点です。
詳しくは「積上型」のメリットを確認してください。
積上型Planのつくり方
年単位や月単位でのKGIの目標を達成するためには、KPIツリーで抽出した各KPIが、それぞれどれくらいの「数値」に達するべきなのかを積上げで導き出す方法です。
そのためのステップは以下です。
Step.1 KPI の数値目標を決める
それぞれの KPI にどのような数値目標を設定すべきかを考えていきます。
売上 1,000(= 契約数 × 契約単価 )
契約単価 10
契約数 100(= 商談数 × 成約率 )
成約率 20
商談数 500(= リード数 × 商談化率 )
商談化率 50
リード数 1,000
このようにKPIツリーの下階層から上階層に向かって目標値を積み上げていった結果、KGIは1,000になったとします。
これがKGIの目標値として適切であればこれで目標設定は完了です。
一方、KGI の目標値として適切でなければ、つまり、KGI の目標値をもっと高く設定したい場合は、次のステップに進みます。
Step.2 KPI の数値目標を見直す
Step.1 では、売上は 1,000になりましたが、達成したい目標値は1,500だとします。
そこで、売上が 1,500になるように KPI の数値目標を見直します。
売上 1,500(= 契約数 × 契約単価 )
契約単価 10
契約数 150(= 商談数 × 成約率 )
成約率 25
商談数 600(= リード数 × 商談化率 )
商談化率 60
リード数 1,000
見直すことで、KGI の目標値を達成できるKPIごとの目標値がきまります。
このように、Step.1 で KGI の目標値に足りなければ、「どの KPI の数値目標を高めるべきか」「どの程度高めていけばいいか」というように、最終的な KGI 目標値を達成するための KPI ごとの数値目標を検討します。
積上型のメリットとデメリット
積上型はビジネスのプロセスの流れに沿っているので感覚的に理解しやすいです。
先ほどのKPIツリーであれば、「リード獲得→商談→契約→売上」というプロセスになりますが、このプロセスに沿って、
① リード数を1,000獲得してそこから商談化を60%できれば600の商談が作れる。
② その商談600のうち25%を成約できれば契約数は150になる。
③ その契約150の契約単価が10なら売上は1,500になる。
という具合で、積み上げていきながらKGIをシミュレーションできます。
この積上型のメリットは複数シナリオでシミュレーションしやすいということです。
たとえば、リード数が1,200になった場合、成約率が30%の場合、値上げして契約単価を15にした場合など、いろいろな場合(シナリオ)ごとに各KPIの数値を変更することによって、その後のKPIおよび最終的にはKGIのシミュレーションがしやすくなります。
その結果、Planをつくるにあたって、標準的な計画、社内向けのアップサイドの計画、社外向けのコンサバな計画など、複数シナリオの計画をつくりやすくなります。
また、「KPIの運用」シリーズの後半で取り上げる「フォーキャスト」をする際にも役立ちます。
一方のデメリットは、すでにKGIの目標値が決まっている場合は、ピッタリとアジャストさせることが煩雑になるということです。
たとえば、上記のStep.1で1,000という売上が算出されましたが、すでに社内の売上予算として1,100と決まっていた場合、KGIが1,100になるように各KPIの目標値を修正していくことになりますが、すんなりとぴったり1,100にならないケースが多いです。
その場合は、どのKPIかで端数調整するか、ぴったりではないことを許容するかになります。
次回に向けて
今回はKPIをつかったPlanの立て方について書きました。
次回は、このPlanに基づいてDoした結果のCheckについて書いてみます。
「KPIの運用_Vol.2 KPIでCheckする」をぜひご覧ください。
当社では、予実管理の精度を高めるクラウドシステム「Scale Cloud」を提供しています。
一般的な予実管理システムとの違いは、①結果指標だけでなく先行指標のKPIも集約してPLの予実管理と紐付けられ、②KPIの設計と運用のコンサルティングサポートがついていて、③料金は2分の1以下(月額10万円から)です。
Scale Cloudが管理部と事業部の共通のプラットフォームとなり、予実の達成や未達成の要因がどの部門のどのKPIにあるのかの共通認識を持ちながら議論し、一緒に予算達成に向けてPDCAを促進することができます。
少しでも興味を持っていただけたら、ぜひWebサイトをのぞいてみてください。
書籍を出版させていただいています。
起業してからの約17年間で多くの企業とお付き合いさせていただきましたが、成長する企業や組織には、「数値の大切さを知っている」という共通点があるように思います。
単に知っているだけではなく、数値を使って事業の状況を客観的に見て、考え、意思決定して行動することが習慣化(仕組み化)されていました。
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事業目標を達成するための仕組み、さらに、その目標達成を一時的なもので終わらせるのではなく、継続的に達成し続けることができる仕組みづくりを、具体的に実践することにこだわって書いていますので、少しでもみなさまのご事業のお役に立てれば幸いです。
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