KPIの設計_Vol.4 KPIツリーを細分化するコツ
「KPIで予算達成度とその再現性を高めよう」シリーズとして、前回はKPIツリーをつくるにあたっての「KPIの設計_Vol.3 KPIツリーはどこまで細分化する?」について書きました。
前回ではKPIツリーを細分化しないデメリットについて書きましたが、今回はKPIツリーを細分化するときのコツについて書いてみます。
KPIツリーを細分化するコツ
KPIツリーを細分化するコツは、KGIまでのプロセスをWhat? Why? How?を使って細分化することです。
見込み顧客からWebサイトを通じて問い合わせがあり、それに対して電話してアポを取り、商談して契約につなげるというプロセスのKPIツリー(ケースA)が以下です。
ケースA
売上
契約単価
契約数
成約率
商談数
商談化率
Web問い合わせ数
ケースAのKPIツリーに対して、商談のプロセスを細かく分解したものが次のKPIツリー(ケースB)です。
見込み顧客と商談をした上で「見積書を提出してから契約に至る」というプロセスを加えて細分化しています。
ケースB
売上
契約単価
契約数
成約率
見積提案数
見積提案率
商談数
商談化率
Web問い合わせ数
さらに「Webサイトからの問い合わせ」というプロセスを遡って、「Webサイトへの訪問(セッション)」というプロセスを加え、細分化すると、次のKPIツリー(ケースC)になります。
ケースC
売上
契約単価
契約数
成約率
見積提案数
見積提案率
商談数
商談化率
Web問い合わせ数
コンバージョン率
Webセッション数
このように、まずはKGIに至るプロセス全体の流れを整理してから、徐々に細かく分解していくとよいでしょう。
細かく深掘りしてKPIで分解するときは、「What?(何を向上すべきか?)」「Why? (なぜ向上しないのか?)」「How? (どうやって向上させるか?)」を考えて分解していきます。
以下のようなKPIツリー(ケースD)があるとします。
ケースD
売上
契約単価
契約数
成約率
商談数
このケースDのKPIツリーで、「商談数を増やすには、何を(What?)増やせばよいのか」と考えます。
そうすると「今はWebサイトからの問い合わせに対して電話をかけてアポを取っているので、Webサイトからの問い合わせ数を増やせばよい」「仮にWebサイトからの問い合わせ数が増えても、アポが取れないと商談にはつながらないので、アポの獲得率を高めないと商談数は増えない」と整理ができたとすると、ケースAのように分解できます。
次に、「なぜ(Why?)商談が増えないのか」と考えます。
ケースAのKPIツリーで、「Webサイトからの問い合わせに対して電話をかけて商談アポを取るようにしているが、そのWebサイトからの問い合わせに対して電話対応しきれていない」ことが原因だったとすると、ケースBのKPIツリーの「商談数」と「Web問い合わせ数」の間をさらに細分化できます。
つまり、Web経由の問い合わせ数に対してどれくらいの割合で電話対応ができたのかという「架電対応率」と、その結果、どれくらいの数の電話対応ができたのかという「架電数」に分解できます(ケースE)。
ケースE
売上
契約単価
契約数
成約率
商談数
商談化率
架電数
架電対応率
Web問い合わせ数
さらに、ケースAのKPIツリーで、「商談数を増やすには、どうやって(How?)増やせばよいのか」と考えます。
「Webサイトからの問い合わせが中心になっているが、それ以外にも、セミナーや展示会、代理店などのチャネルからも商談をつくっていく」という対策を考えたとすると、次のように分解できます(ケースF)。
ケースF
売上
契約単価
契約数
成約率
商談数
セミナー経由の商談数
展示会経由の商談数
代理店経由の商談数
Web経由の商談数
商談化率
Webセッション数
このように、自問自答しながらKPIツリーを細分化していきましょう。
KPIツリー細分化時の注意点
さて次に、KPIツリーを細分化する際に注意する点についてです。
KPIツリーにイレギュラーな要素を盛り込まない
KPIツリーをみて何をすべきかがわかるようにKPIツリーを細分化することは大切ですが、一方で、イレギュラーな要素を盛り込みすぎるのは危険です。
「テレアポをして商談につなげ、契約を獲得していく」プロセスで、「知人からの紹介で商談につながることがあるので、それをKPIツリーに盛り込もう」「商談してから契約に至るまでに見積書を出すことがあるので、見積書を出す場合と出さない場合に分けてKPIツリーをつくろう」といったように、「イレギュラーなケース」をKPIツリーに盛り込んでしまうと、どんどん複雑化していきます。
ビジネスにイレギュラーはつきものですが、次の点に注意しながらKPIツリーをつくるのがオススメです。
イレギュラーをできるだけ除いた基本のプロセスにフォーカスしてKPIツリーをつくる。
現時点ではイレギュラーだけれども、今後は基本のプロセスとして再現性を高めていきたい場合は、KPIツリーに盛り込んでおく。
単価を細かく分けすぎない
「売上=契約数 × 契約単価」というように、ほとんどの場合で「単価」(またはそれに類するもの)が登場します。
この単価は、①商品/サービス/プランごとに単価が異なる場合、②同じ商品/サービス/プランでも単価のボラティリティが高い場合(例 受託開発で100万円の契約もあれば1,000万円の契約もある)など、さまざまなケースが存在します。
①の場合、商品/サービス/プランごとにKPIツリーをつくることは可能ですが、以下のように複雑になります。
売上
Aサービス
契約単価
契約数
成約率
商談数
商談化率
リード数
Bサービス
契約単価
契約数
成約率
商談数
商談化率
リード数
Cサービス
契約単価
契約数
成約率
商談数
商談化率
リード数
このようなKPIツリーにすれば、たとえば、リード数や商談数も、Aサービス/Bサービス/Cサービスの区別がつくように各KPI数値を集計できるようにしないといけないので、データ管理が複雑になり、KPIツリーも商品/サービス/プランの数だけ膨大なものになりがちです。
もちろんそれで問題なければ上記のKPIツリーでいいですが、問題があるということであればその解決策としては次の通りです。
解決策A 商品/サービス/プランごとに管理しない
解決策ではないですが、契約単価が複数の商品/サービス/プランの「平均単価」になることを許容することです。
つまり、上記のようなKPIツリーではなく、以下のようなシンプルなKPIツリーで管理します。
売上
契約単価
契約数
成約率
商談数
商談化率
リード数
解決策B 商品/サービス/プランの契約単価をKPIツリー外で管理する
KPIツリーとしては下記のシンプルなものにします。
売上
契約単価
契約数
成約率
商談数
商談化率
リード数
一方で、この場合の契約単価が複数の商品/サービス/プランの「平均単価」になるので、その変動状況を把握するために、KPIツリーとは別に以下のような指標を別途管理します。
Aサービス
契約単価
契約数
Bサービス
契約単価
契約数
Cサービス
契約単価
契約数
なお、②の場合も上記と同様です。
ただし、②の場合の解決策Bは、①の場合に比べて数が多くなる(例 案件が100あれば100案件ごとに契約単価と契約数を可視化する)ので、現実的には解決策Aを取りつつ、平均契約単価の変動が大きい場合に、その詳細データ(例 SFAの案件別データ)を確認するという実務フローになることとがほとんどだと思います。
次回に向けて
このようにKPIツリーを細分化していくと、必ずKPIの数が多くなってきます。
次回はそうしたときのKPIの優先順位のつけ方について書いてみたいと思います。
「KPIの設計_Vol.5 KPIの優先順位をつける」をぜひご覧ください。
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