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KPIの運用_Vol.4 どのKPIから改善するか?

これまで「KPIで予算達成度とその再現性を高めよう」シリーズとして、「KPIの設計」と「KPIの運用」についてシリーズで書き進めてきましたが、今回はこれまでの内容を踏まえて、「どのKPIから改善するか」について書いてみたいと思います。


目先の結果ばかりを追いかけない

結果指標のKPIと先行指標のKPIは、どちらが重要でしょうか? 

答えは「どちらも」です。

ただ、「重要の意味」が違います。

結果指標は今月の売上目標を達成するために重要で、先行指標は来月以降の売上目標を達成するために重要です。

4月のテレアポ数を増やしたとしても、リードタイムを考えれば4月の売上獲得につながる可能性は低いでしょう。

4月の売上目標が未達成になりそうであれば、結果指標である「契約数」を増やす、または「契約単価」を上げる施策が即効性があり重要です。

一方、そうした結果指標ばかりを追いかけ、テレアポ数のような先行指標がおざなりになり4月の計画に対して未達成になると、リードタイムを考えれば、5月の商談数が減り、その結果6月の契約数が減る可能性が高くなります。

5月に十分な商談数を確保できていないので、6月の売上獲得に困って、目先の結果指標ばかり追いかけることになりかねません。

そうなると、またテレアポ数がおざなりになる悪循環に陥りがちです。

結果指標の計画達成は目指すべきですが、商談数やテレアポ数といった先行指標の重要性を理解し、来月や再来月の売上獲得に向けて、先手先手でコツコツと達成していけば、毎月の売上の計画達成に向けて再現性が高まり、計画達成の精度も高まっていくでしょう。

このように、毎月、目先の結果ばかりを追い求めずに、KPIで先を見ながら行動することが大切です。


量のKPIから改善する

KPIの設計_Vol.5_優先順位をつける」で、「量のKPI」と「質のKPI」について書きました。
そして、「KPIの運用_Vol.2_KPIでCheckする」で、KPIツリーに沿った分析について書きました。
この分析の結果、「量のKPI」と「質のKPI」のいずれもが「改善が必要」となった場合、どちらを優先的に改善していくべきでしょうか?

まずは、「量」のKPIから改善していきましょう。

Checkのフェーズでは、実際に行動してみた結果を振り返ります。

「今月は目標未達成だった」というだけでは、「なぜ未達成だったのか」が分かりませんが、プロセス(行動)を数値化していれば、「今月はテレアポの数が目標に対して未達成だった」というように、客観的に自分自身の行動の「不足」を把握することができて、次に必要な行動が見えてきます。

そして、「不足」しているKPIが複数あれば、まずは「量」のKPIから改善していきます。

しかし、行動の「量」を改善して増やしていくと、どこかの段階で限界がきます。

たとえば、1日にテレアポできる数はどれだけ工夫して頑張っても**件以上は増やせないといった具合です。

つまり、「量」のKPIのほとんどは時間(工数)の制限があります。

そこで次に改善すべきが行動の「質」になります。

ただ、「量」が不足していれば、改善策としてはシンプルで、その量を増やすということになります。
たとえば、テレアポの数を増やすといった具合です。

一方「質」が悪化していれば、その原因と対策は複雑になるケースが多いです。
たとえば、成約率が悪いという場合、「商談時のプレゼンが下手」という可能性もありますが、「商談相手がそもそもターゲット外」という可能性もあるといった具合です。

このように、「量」の方が客観的に原因を特定して改善策もシンプルであることが多いので、まずは「量」の改善を優先的に取り組み、その次に「質」の改善を図るといった順になります。

「質」より「量」のKPIから改善していく理由としては3つあります。

1 コントロールのしやすさ

質よりも量のKPIの方がコントロールしやすいという点が挙げられます。

たとえば、契約数の構成要素が商談数と成約率だとしたときに、成約率(質)よりも商談数(量)の方が自分の頑張り次第でなんとかなる部分が多い、つまり、コントロールしやすい、というように、質よりも量の方がコントロールしやすいケースが多いです。

成約率は、とてもいいプレゼンをした(コントロール可能な領域)としても、商談先が忙しすぎて検討する時間がない(コントロール不可能な領域)という理由で成約しない可能性があります。

一方の商談数は、相手先が忙しくてなかなかアポが取れない(コントロール不可能な領域)という状況はあるでしょうが、他の相手先にアポを取る(コントロール可能な領域)といったことでリカバリー可能かもしれません。

いずれもコントロール可能な領域と不可能な領域はあるものの、一般的には、量(ここでは商談数)のKPIの方がコントロール可能な領域が大きいことが多いので、優先的に取り組む方がいいです。

2 改善策の考えやすさ

質よりも量のKPIの方が改善施策を特定しやすいという点が挙げられます。

たとえば、商談数の構成要素がアポ獲得率とテレアポ数だとしたときに、テレアポ数の数値が悪いときは、原因はシンプルに「電話をかけれていない」ということなので、それに対する改善策も考えやすいでしょう。

一方、アポ獲得率が悪いときは、トークスクリプトが悪いのかテレアポ対象のターゲットがずれているのか電話をする時間帯が悪いのかといったように原因の特定が難しいのでそれに対する改善策を考える難度が上がります。

3 数値のブレやすさ

「数」(=量)が少ないときの「質」の計測は難しいです。

たとえば、商談数が20社で、成約率が25%とすると、契約数は5社になりますが、仮にこの成約数が6社になれば、商談数が20社のままだとすると成約率は計算上30%にもなります。

つまり、契約数が1社増えただけで成約率は5%も上昇したことになります。

このように、量が少ないと、パラメーターが「1」変動した時の増減がとても大きくなってしまうので、「5%も成約率が改善した」と喜んでいいかどうかは微妙です。


以上の3つの理由から「量」のKPIから改善していくほうがオススメです。

「量を優先させよう」という話をすると根性論のようなニュアンスで捉えられるかもしれません。

たとえば、いまの就業時間が8時間なので、それを11時間にするというように「制限」を増やして「量」を増やそうとするならば根性論かもしれませんが、就業時間8時間という「制限」を維持しながら「量」を増やすことをまずは考えるべきでしょう。

もちろん一時的に11時間になる場合もあるでしょうが、それが継続しないように試行錯誤することは、ここでいう「量」をまず増やそうという論点とはまた違うもののはずです。

限られた時間の中で何を優先させて、何をしないかを随時調整していきます。

そして、最終的には量と質をバランスよく考えてPDCAをまわしましょう。


トレード・オフの関係に注意する

量と質のバランスを考えながら改善すべきKPIについて決めるとき、トレード・オフの関係に注意する必要があります。

トレード・オフとは、たとえば、「テレアポ数を今のキャパシティいっぱいまで増やすと、テレアポのクオリティが下がってアポ獲得率が下がる可能性がある」といった関係です。

このようなトレード・オフの関係が各所に生じる可能性に注意して、量と質のバランスを意識しながらPDCAをまわします

なお、KPIツリーをつくると、多くのケースで量と質がセットで登場します。

たとえば、売上をKPIツリーで分解すれば「契約単価(質)」と「契約数(量)」がセットで登場しますし、成約数を分解すれば「成約率(質)」と「商談数(量)」がセットで登場します。

このような構造で常に状況把握することで、常に量と質をセットで考える習慣がつきます。

次回に向けて

今回は「どのKPIから改善するか」について書きました。
これまで「KPIで予算達成度とその再現性を高めよう」シリーズを書き進めましたが、1人、または1部門では、予算達成度とその再現性を高めることはできません。
社内を巻き込んでいくことがとても重要になります。
そこで、このシリーズの最終回として、次回は「KPIの運用_Vol.5 社内で浸透させるには?」という内容で書いてみます。

当社では、予実管理の精度を高めるクラウドシステム「Scale Cloud」を提供しています。
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書籍を出版させていただいています。
起業してからの約17年間で多くの企業とお付き合いさせていただきましたが、成長する企業や組織には、「数値の大切さを知っている」という共通点があるように思います。
単に知っているだけではなく、数値を使って事業の状況を客観的に見て、考え、意思決定して行動することが習慣化(仕組み化)されていました。
本書では、KPIという数値を活用して、ロジカルに、スピーディーに、組織的に、PDCAをまわす仕組みを書いています。
事業目標を達成するための仕組み、さらに、その目標達成を一時的なもので終わらせるのではなく、継続的に達成し続けることができる仕組みづくりを、具体的に実践することにこだわって書いていますので、少しでもみなさまのご事業のお役に立てれば幸いです。

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