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#08. コロナ禍のメーカー知財部のお仕事

 私はいわゆるJTC(Japanese Traditional Company)に勤めているのですが、来週からは出勤する生活に戻りそうです。この2か月弱、人生で初めて在宅ワークを行ったのですが、この在宅ワーク生活を振り返ってみます。

 まず、私が普段どんな仕事をしているかは前回の記事をご参照下さい。

1.効率が上がった業務

 まず、効率が上がった業務は、『出願書類の作成』です。この仕事は在宅向きです。

 発明者からもらった実験データを基に、図面を作って、クレームを立てて、明細書を作って、図面を修正して、クレームを修正して・・・と。細かいところは発明者にメールで問い合わせて、返信が来たら、また直して読み直しての繰り返しです。

 人にも依りますが、私は普段から『出願書類の作成』を行う期間は、ほかの仕事をしないようにスケジューリングしています。けれども出社していると、電話がかかってきたり、急に打ち合わせを入れられたりと、なかなか思うように作業時間を確保できないことがストレスになります。しかし、在宅だとそのストレスがありません。多少、周りで子供が賑やかにしていようが、慣れてしまえば問題ありませんでした。

 また、『中間処理の書類作成』も効率は上がりました。この仕事も在宅向きです。もう一度、自分たちの発明を確認したのちに、審査官の拒絶理由を読み、審査官が引用した文献を読んで、差異を考え複数の応答案を考える。複数の応答案のメリットデメリットを考えて、その思考の記録を残しながら反論のための書類を作る。だいたい1件4~5時間くらいかけるため、普段から集中してやりたいのですが、これも電話やら打ち合わせやらがストレスに。ただ、在宅だと昼休みの時間を多少コントロールできますよね。だから、集中して調子が出てきたときに作業を一気に進めたりして、出社しているときよりトータルの作業時間は短くすることができました。

2.より作業効率を上げるために

 私の自宅PCは15.6インチのノートです。会社では15.6インチのノートにディスプレイをつけてデュアルディスプレイとしているので、ディスプレイを自腹で購入すべきだったな、と思いました。

 弁理士さんはディスプレイを3台にしている人も珍しくないと聞きます。確かに、『出願書類の作成』なら1台目にword作業画面を、2台目に図面の画面を並べて、3台目にメーラーを立ち上げも良いと思いました。『中間処理の書類作成』は、頭を使う時間は効率が上がったのですが、このディスプレイ問題は文章を作る作業としては、作業遅延につながった感があります。

 また、普段は初めて読む引用文献は紙に出力して読む習慣だったので、ディスプレイで文献を読むのにも最初は一苦労でした。出力するときは図面と文書を分けて印刷し、常に図面を参照しながら文章を読む習慣なので余計に苦労です。まぁ自宅でも印刷すればよかったのですが、ちょっとケチってしまいましたね。ということで、『中間処理の書類作成』はディスプレイを2つ乃至3つにした方がいいですね。ただし、私の自宅の作業机には3つもディスプレイ置けないですけど。。

3.進まなかった業務

 新たな発明を発掘する業務がほとんど進みませんでした。これは大問題です。発掘できないと新件の出願ができないからです。今回は早い段階で、いつも私が担当している部署のキーマンたちにメールを送って、Web会議使って打ち合わせをやろう!と声をかけていたので、数件はフェーズを進めることができましたが、通常の出社しているときと比べると明らかに件数は減少しています。また、新しいアイデアの相談は皆無でした。

 私たち知財部のアプローチの仕方に、もっと新しいやり方があったのかもしれません。ただ、今回は開発も出社禁止となり、通常業務をどう進めるかに頭を使ったために特許業務の優先度が大きく下がったことが主原因かな、と思っています。

 とはいえ、今回の在宅ワークをきっかけに発明発掘のところは仕事のやり方を見直す機会が来たと思っています。テレワークが当たり前の時代になっても、発掘が進む仕組みを作らないといけません。

 私はこれまで、開発の皆さんがお客様で、そのお客様から①人間的に信頼を得るため、②開発の最新の状況を得るために、F2Fのコミュニケーションをとることを大事にしてきました。チームの誰よりも開発の居室や実験室に足を運んできました。

 しかし、今後は、そうもいかなくなってくるので、重要視するテーマとそうでないテーマで負荷バランスを大きく変えたり、重要視するテーマについては開発の状況を雑談ベースで聞きに行くのではなく、週報会に参加させてもらったり、より近い距離に立ち位置をもっていかないといけないな、と思いました。

 また、開発を教育し、自発的にアイデアがどんどんと出てくる環境づくりの整備も急務です。例えば、このnoteを使って、その教育に使えるコンテンツを揃えたり、とか。まぁ、この具体的なやり方は、また考えて、記事にしていければよいかなと思います。


 最後に余談となりますが。先日、私が参加している某外部団体の打ち合わせがあり8社8名でTeams会議をしました。その中で一人が、そもそも知財の仕事って、原則、家でできますよね??と言っていました。そういう人たちは開発とのコミュニケーションを普段どうしてるんでしょ?

 実は、今回書いた話は、いままで在宅ワークをやってこなかった会社(JTC)の人間にしかない悩みなんですかね。。。

記事を読んでいただきありがとうございました。 支援をいただければ、また新しい記事を書くモチベーションに繋がります。よろしくお願いします。