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親父の健康にトン子も僕も必死。 数年寿命が縮んでも、美味いものを喰いたいという望みは叶えるつもりだけど、それで苦しかったり、痛かったりが出たら、本末転倒だ。

暫くは上手く回っていた、時々、惨子、ノン子から指示メールだとか、罵倒電話は入る もっともらしいが、全くとんちんかんで、科学的な裏付けが無く無用どころか邪魔、無視する。

親父が寿命を日々、楽しく楽に安心して過ごせれば良い、それをポリシーにしていた。

ただ、やはり糖尿病で有るから、食材は自由に、料理も望みのものを提供するにしても、カロリー計算はした。

お替りも出来る限り、叶えたが他を減らしてバランス。

病院で血液検査、尿検査をしても、毎回、成績の良い数値だった。

親父が好きな慶應義塾出の女医さんに漢方を処方してもらっているお陰だと、トン子と話していた。  介護士の惨子は、漢方を全部捨てろと言ったが、僕たちはメモリー外来の降圧剤が惚けの一因の可能性が有ると、僕の同級生の医者に聞き、その分を漢方で補っていた。

ただ、排便の管理が難題だった。 市販のイージーファイバーを入れたり、キャベツ多め、こんにゃくなども提供し、あっさり食べたのだが、便秘がちに成る。

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           にゃんづまり♪

そこいらも十分調べてメニューも作ったのだが、3日出ないのは当たり前、どうかすると1週間も出ない、そうすると本人も苦しいだろうが、部屋自体も異様な臭いに成る。

トイレに籠ったと想うと、うめき声が聞こえる、自分で肛門に指を差し込み、かちかちになった便を穿る。

あーれま
僕は、右手の爪を綺麗に深爪に切り、石鹸で洗いアルコール消毒をした、親父を風呂場へ連れて行く。

元々、介護用の風呂だから、あちこちに捕まるところがある、親父と二人じゃ色気も無いけど、後ろを向かせて、尻を石鹸で洗い、力を抜くように言ってから、指を入れる。
テトラ型の2センチ角の便、なんとか取る、1つ取ると、降りてくる、そんなのが3つ。 風呂の床に落ちて かんっと音を立てる。

うわっ 声が出た。
僕も裸で付き合えばよかった(笑)
栓が取れた常態で、バナナ状のが出て、OKと思ったら、そんなもので済むわけが無かった。  下痢状の便が 本当にどどっと。
僕のパンツまで便を浴びた。

風呂場に置いてあるバケツ7Lのに便を手で掬い始末していく 満杯のバケツ1つと半分、本当に見た目 10Lの便が出た。

自分と親父でシャワーを浴び、脱衣所に何枚もバスタオルを置き、何とか清潔にして、親父にパジャマを着せる。

僕は素っ裸のまま、親父を寝室に誘導した、直ぐに寝息を立てた。
なんて安らかな顔をしてやがる(笑)

バケツの便をトイレへ持っていったが 流れない 上からバケツで3杯の水を流してやっと流し、もう半分。

風呂場も脱衣所も塩素消毒をして、タライで塩素消毒をしたタオルやパジャマを洗う。

糞尿の始末は、生き物だから仕方ないと、意識が割り切っている。
我ながら手際は良いと想う。

うんこを浴びると あったかいんだからぁ♪


トン子と相談して、ラテックスのメディカルグローブを買った。 テーノー未熟病院の主治医にも相談した。 ホームページに病院で摘便も出来ますと書いてあったのだが、検診の時に相談したら、何故か、ジャニーズ系優男の主治医木村くんは 怒気を含んだ声で、丁寧な言葉だが、そんなん知らないと言い放った。 困り果てていたら、ナースが摘便は入院時にナースがしますと言いに来た。

別に誰がやってくれても構わないし、木村くんにやってくれと言った覚えはない。

ちなみに木村くんは 親父が好きな病院内のレストランで見かけた時、肘を突いて飯を喰う躾の悪い仔の典型で箸も握り箸だった。

親父が患者として、儲からないグレードの低いところだから、テーノー未熟病院で、こういう主治医なのだろうかと疑った。

大物政治家や巨人軍との契約では教授が出てきて、名医がサポートして成果を出しているのに(笑)


どんなに気を使って、気を付けても、親父の便秘は続いた。 運動をさせても、解消しない、腿上げや、金魚運動、腸に刺激を与えるスクラッチなどを、あちらこちら聞いて試したが、快便 便秘 下痢 快便のサイクル。

うーむっ

トン子が看に来ている時はトイレに付き添い、
「お父さん、お腹に力を入れてくださいね 良いですか ぶぅーですよ」
「ぶぅうううう」

「あんまり力んで、脳の血管が壊れてもいけないので、ときどき ぶぅううですよ」
「ときどきぶぅううう どきどきぶぅううう♪」

ときどきぶぅうう♪は その年の流行語大賞に成った。

そして、ある日、原因が解った。
それまでも、買い物から戻ると、キッチンでバターの香りを嗅いだ事が有り、ちょっとおかしいなとは思っていたのだが、真夜中にバターの香りで目が覚めると

「しゃうしゃうしゃう」 咀嚼音がする。
キッチンへ行くと エプロンを着けた親父がバターをたっぷり塗ったトーストを喰っていた。 ほんに美味そう(笑) 皿にはトーストが、もう一枚。

そして、親父は何故か全裸でエプロンだけ、僕は生まれてはじめて、裸エプロンなるものを拝んだ、しかも87歳の父親の(笑)

「君も食べるかい?」
親父は皿を差し出してきた、やばい事は理解しているのだ。 怒られたくないって顔に書いてある。 僕は牛乳をマグに入れて、レンチンした。

「水分を一緒に摂らないと、また糞詰まりになりますよ」

最初の入院から1ヶ月で 誤嚥性肺炎で入院。  食べ物は気を付けて、食事の時は寄り添い、嚥下も看ていたのにと思っていたが、謎が解けた。

僕やトン子の目を盗んで、こうしてトーストを喰っていたのだ。 水分を摂らずにグルテンを摂ると、便秘に為りやすい、誤嚥性肺炎だって可能性が上がる(笑)

なまじ、一所懸命介護をして、運動をして、体調が良くなったものだから、もちまえの食いしん坊が復活した。


それから、朝はブリティッシュスタイルにした、ベーコンエッグ、ベークドトマト、スープ ソーセージ、トースト(笑)


そして、便秘、摘便はケアマネージャーさんが解決してくれた。
訪問看護師さんが 週に2回来てくれることに為り、僕は親父の肛門から開放された。

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