なんでも毛虫に見える・・・毛虫目の女
大事なミッションがあって横浜まで出かけ、帰ってきた次の日、いつもの朝顔の水やりをしていると異変に気がついた。
「なんじゃこりゃあ」
毛虫だ。庭仕事をしていると出会うこともある、しかしあまり出会いたくない輩。この白い毛の生えた毛虫は、アメリカシロヒトリの幼虫だ。
見つけると、ごめんなさいして、踏み潰す。あ~!なんて野蛮。嫌!!しかし、嫌なんて言っていられないほど、その数が多いのだ。
イヤダイヤダ嫌だ〜庭に出たくない!
しかし、そんなこと言っていられない。手帳を調べる。庭の木にアメリカシロヒトリの痕を見つけて、処理。そしてすぐ、薬かけを同級生庭師に依頼したのが8月初め。それ以来、庭は、一見平和に見えたのである。
その時、次男とホームセンターに行って、毛虫用の殺虫剤を買ってきてはあったが、すぐなくなってしまうのだ。次男の家の周りでも毛虫が異常発生してるとのことで、また殺虫剤を買いに行く。
早速そのスプレー式の薬を毛虫を見つけた辺りにかける。お向かいの方が話しかけてくる。
「家内がお花を育てているんだけど毛虫がいっぱいついて。生け垣にもいっぱいいて、これから薬をまくんです。」
ああ、やっぱり、わが家だけじゃないんだなぁ。そういえば、りんごの街にアメリカシロヒトリが異常発生していると言うニュースを見た。散歩で歩く道々にも、被害にあっている木を見かける。
すると、大きな音がして、大型トラックが一軒隣の家に止まる。そして、その家の桜の木を切り始めた。えええ~。ものすごい音だ。
確かにいつも葉が毛虫に食われ放題になっている木である。でも、毎年きれいな桜が咲いていた。かなりの時間をかけて木は切られ、大きな切り株だけが残っていた。
毛虫の発生について、同級生庭師に相談する。
「おたくの庭は、大きな木があるから、スプレーはすぐになくなってしまうでしょ。自分で機械を持って、薬をかけるようにすれば、安くすむよ。」
これは前から言われてきたことだけれど、なかなか自分でやる勇気が出なかった。
「そうするなら、ホームセンターに一緒に行って、用意すればよいもの一式を教えるよ」
ここまで言われて、私も重い腰を上げた。
その日の夕方、仕事を途中で抜けてきたという庭師と一緒にホームセンターへ。ちょうどホームセンターで買わねばならぬものがあるのだと言う。
ホームセンターは、先日買ったばかりのスプレー式のものが売り切れたのか見当たらなくなっていた。そして、やはり、毛虫に困っているらしい人がホームセンターの人に色々聞いている。わかる、不安だよね。どうにかしたいよね。
庭師に言われるままに、噴霧機、薬、薬を固定する液体を購入。
「ユーチューブで、薬の薄め方やかけ方やってるから、見ればいいよ。」
「わかった、まず勉強する」
「薬と言っても毒だから、頭には、帽子、マスク、ゴーグル、長袖、手袋して、体を守る。終わったら、全て脱いで洗濯。」
「向かいの方、いつもの格好でかけてたけど。」
「予防したほうが安全」
なんだか聞いているうちに、やっぱり怖くなってきた。自分にできるかなぁ。
でも、毛虫も怖い。庭の植物を守るためにも努力は必要だし。
お散歩クラブが再開し、久しぶりに仲間に会った。
「近所の家の木にアメリカシロヒトリがついていて、うちにまで毛虫が来てさ。」
最近、自宅を平屋に建て直した清原さんが言う。
「うちの町会では、今度の日曜日に薬かけするの」
と明星さん。
「でもさ、いつも桑の木に毛虫ついている家の人は参加しないの」
あ~町会あるあるだ。せっかく町会で動いてくれるのにそういう人もいる。家一軒だけでやっても、町会でやらないと毛虫退治は成功しないと庭師も言っていた。
お散歩クラブでは、りんごの街の公園を歩くのだか、きっと桜の木の管理に苦労しているだろうなぁと思った。毛虫が落ちてくることはなかったが、毛虫の死体は見た。誰も何も言わなかったけど、私はしっかり見た。毛虫だ・・と、言うか、毛虫の死体だ!
毎日毛虫を見ているからか、何でも毛虫に見える。朝顔のガクのうぶ毛のような毛、ミントの白い花、わかっているけど、毛虫に見える。毎日、ビクッとして、ホッとする。これ、毛虫目っていうのかな。
散歩していると、相棒には見えないのに、道を歩いている毛虫が目に入る。毛虫に敏感になっている。
あ~やだやだ。