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よいマネージャーとは、または上司
よいマネージャーとは、思考停止させたチームメンバーを作らないよう尽力する人のことだ。
このnoteは10分で読めます(4115字)
なぜこんな話を書こうと思ったのか
社会人2年目になり、まだまだ至らないながらも、仕事というものに責任を持って季節を一巡させた。
別に部下ができたわけでも、今の上司の愚痴を言いたいわけでもない。自分を俯瞰してみた時に、自分が組織の一員として最適に振舞うためにどんなことを意識していたらよいだろうと、ふと考えた。
それを逆説的に考えると、よい組織を運営するためにマネージャーが意識することを自分も意識すればよいのではないかと考えた。
自分の中に理想のマネージャー人格を作り、私自身を管理するのだ。
それによって現実のマネージャーの質によって左右されない、再現性のある組織の理想行動に繋がると考えた。
マネージャーにはよい仕組みを作る責任がある
私はあまり怒らない。
全部システムや、仕組み、世界の構造が悪いために引き起こされた結果だと思う。だから、過去の結果よりも、どうすればその不都合を改善できるかの話の方に興味がある。
私自身の行動も例外ではない。私は私が選択した行動に対して基本悪いとは思わない傾向がある。不都合な結果を引き起こすことを許すシステムの方が悪いのだ。(これでよく友人とかに怒られる。ただなんで怒られているのかよくわからなくて余計に怒られるのでタチが悪い。以前「お前は絶対に謝らないよな」と言われ、手段と目的が入れ替わっていないか?、謝らせることが目的だったのだろうか?と思ってしまった。)
組織において、能力が足りなく「使えない」と言われてしまうメンバーがいるだろう。しかし、実際ほとんどの「使えない」メンバーはマネージャーのマネジメントが悪いがために、そのレッテルを貼られてしまっているにすぎない。
冒頭にも書いたように理想のマネージャー、または上司とはチームメンバーの思考が常にドライブするように配慮しなければならない。逆に思考がドライブされていれば、何もしないことがマネジメントになる。
では、なぜ思考停止が悪なのか。それは単純に人間が思考する生き物であり、単純な作業をやらせるだけなら機械の方が効率的だからだ。
人が複数集まってやることはただ1つ、考えることだ。考えることをやめた人が1人いるということは、1人分の労働力が減っているに等しい。
もし上司に向かって「はい、その通りだと思います」としか言わないメンバーがいたら、その上司はマネジメントに失敗している可能性を考えた方がよい。
3つの思考停止
メンバーの思考停止を避けることがマネージャーのやるべきことだとしたら、思考停止の種類を知り、それぞれ対応していく必要がある。
私は思考停止を3つに大別した。
・パニックによる思考停止
・他人事による思考停止
・学習性無力感による思考停止
もしかしたらもっとあるかもしれない。考えついたら追記する。
パニックによる思考停止
初見のことに直面した時や、複数同時にタスクが発生した時に脳内のメモリを使い切って思考が停止するという経験は誰にでもあるだろう。特に新人に多い。
脳のメモリの大きさは結構個人差がある。経験によって1つ1つのメモリ消費量を減らすことはできるが、なかなかメモリ自体の拡張をすることは難しい。なので、新人だからというだけではなく、個々人の得手不得手で気を配る必要がある。
このタイプの思考停止に入ったら思考を整理する作業が必要になるが、マネージャーは整理を手伝うことと、自力で突破する技術を身につけさせること、両方をする必要がある。
これは大切なことだが、思考をドライブさせることにおいて、懇切丁寧に介抱することが正解じゃない。全てをマネージャーがやっていたら、それこそメンバーは考えなくなってしまうからだ。
大切なことは使える道具を与えること。道具を使うのは各個人がやることだ。
まずは整理を手伝おう。どんなタスクを抱えていて、それぞれの優先順位は何で、タスクの粒度を自分が扱える範囲まで分解してみて、何がわかっていて、何がわからないのか、どんな情報や経験があればそのタスクは前に進めるのか、といったことを見える化しよう。
あとは優先順位に従って順番にコツコツ タスクをこなしていく。
この作業はざっくりいうと、マルチタスク(のように見えるもの)を扱えるサイズのソロタスクに分解していくということになる。
自力で突破する技術というのはこれらのことを自分だけで進めるというわけだが、それではつまずくポイントがある。
それはわからないとはどういう状態なのか、必要な情報や経験を得る方法はどうすればいいのかということだ。それについては仕組みを作ってあげる必要がある。
Googleの15分ルールもよいが、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ社の20分ルールが使いやすいかと思う。
20分ルールとは5分考えて(検索したりして)わからなかったものはわからないとし、10分使って自分が「何がわかってないのか」を考え、最後の5分で誰にどう相談するか考えるルール
このようなルールを定めることによって、無駄な時間をお互い使わずにすむようになる。
同じ人物から「わからなかったら早く質問しに来い」と「少しは考えてから質問しろ」と言われるバグが世の中にはよくあるが、わからないとはどういう状態か、考えるとはどういうことかを、きちんと定義できていないマネージャーの怠慢だということは心に留めておいてほしい。
ちなみにケンブリッジの20分ルールの話はこの書籍に書いてある。参考までに。
他人事による思考停止
人はわざわざ自分のことじゃなければ考えたりしない。考えなくていいことフォルダにぶち込まれて終わりだ。
個人ならそれは構わない。わざわざ関係ない他人のために時間を使うより、自分の人生を生きた方がよい。
しかし組織では違う。というより、組織において自分のことしか考えていない部分最適な考えは全体最適を妨げる因子になる。仕事において自分の担当範囲の最適化ではなく、最終的な全体の最適化を目指すべきであり、組織における個人とはその一部だからだ。
プロジェクトはリーダーだけが責任を持ち、メンバーは言われたことをこなすだけではいけない。それぞれがそれぞれの担当に責任と意識を持ち、その担当のリーダーとして全体の一部を担っているという認識で努めるべきである。
仕事においては誰でもリーダーであるタイミングがある。責任と意識を持った時点で小さなリーダーなのだ。
ここでマネージャーがすることはどんなに小さいことでも責任を与えること、そして全体の中のどういう位置づけなのか、メンバーにはっきり意識させることである。そうやってメンバーの自分ごとの範囲を広げていき、考えなくてもよい領域を減らしていくよう働きかける。
具体的に自分ごとにしていくよう働きかける手法はコーチングが参考になる。絶版だが、ジョン・ウィットモアの「はじめてのコーチング」という本はよかったのでオススメしたい。
学習性無力感による思考停止
学習性無力感とは長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、たとえその後に困難を乗り越えられる力を獲得したとしても、過去の無力感からその状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象のことである。
つまり、「何を言っても無駄なんだ」と悟って考えなくなることである。
マネージャーがメンバーの言葉に真摯に耳を傾けてないことによって引き起こされるよくある悲劇である。
行動するだけ無駄、考えるだけ無駄となってしまったら最後、もうチームからクリエイティブなアイデアはでない。
そうならないためにマネージャーができることは真摯にメンバーの意見や報告に耳を傾けることである。そしてそれに対して(例え見当違いなアイデアや、ミスの報告でも)怒ってはいけない。
なぜなら怒られ続けたメンバーはそれを学習して、よい仕事をするためではなく、いかに怒られないかを目的としてしまうからだ。その仕事はユーザーのためにやっているのか、それとも上司や社長のためにやっているのだろうか、ここを踏み外すと手段と目的が入れ替わってしまう。
失敗の報告をして怒られたら、メンバーはそもそも報告すること自体しなくなってしまうかもしれない。事態が悪化してから気づく方が何倍も回収コストが高いことをマネージャーはよく理解しなければならない。
メンバーからの報告には適切なフィードバックを与え、意見にはできる限り行動で答えるべきである。それができなければ、できなかった理由をちゃんと返すこともセットで押さえておきたい。
管理主義と放任主義、どちらがよいのか?
マネージャーといいながらマネジメントをしてはいけない。冒頭でも触れたようにメンバーを介抱するでも蹴り飛ばすでもなく、自走するための手助けをするポジションだ。
管理主義が行き過ぎるとメンバーは思考をしなくなってしまう。「結局全部マネージャーが決めていることに従っているだけじゃん」いう風に。
では放任主義がよいのかというとそうでもない。なぜなら、思考とは一見して思考しているのか、思考停止しているのか判別がつかないからだ。
思考が止まっていることを察知する必要がマネージャーにはある。それがどのタイプの思考停止かよく観察して、適宜コミュニケーションの時間をとる必要がある。
完全にメンバーの思考がドライブしていたら、放任主義よりに切り替えていこう。
思考がドライブしていくチームはきっとめんどくさい
チームの思考がドライブしていくとは、つまり、新たな課題や選択肢がたくさんでてくるということだ。
その中で最適な課題解決の手法をリソースや納期などを考慮し、妥協点を模索するのはマネージャーの役割だろう。
だから選択肢や課題が次々とでてきたらきっと忙しくなる。
でも、そこでそのプロジェクトの本来の目的が誰のためのものなのかに立ち返ればきっと答えは明白だろう。
個人の頭の中にある「俺が考えた最強の理論(笑)」を通すか、組織の総合力を信じるか。
よいマネージャー、または上司なら。
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