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Are you human?

over-friendly なれなれしい
***
「あなたは人間ですか?」と電話の相手に尋ねる出来事があった。この夏、学会出張のためシカゴに行き、Marriott系列のホテルで宿泊した時の話である。アーリーチェックインができるか問い合わせるために電話をかけると女性スタッフが出たのだが、どうも何かが妙だった。

「アーリーチェックインはできますか?」
「チェックイン時間についてのお問合せですか?」
「時間は知っています。早めにチェックインできるか知りたいんですが」
「チェックイン時間の情報は当ホテルのサイトでご確認いただけます。よろしければご利用の端末に情報をお送りできますが、いかがでしょうか」

話が噛み合わない。話し方は自然だが、もしかしてAIか。どうもアーリーチェックインをすんなりとさせてくれる設定はないらしい。

「人間に代わってください」と言ったが、すぐには代わってもらえなかった。少し長めの文章でこちらの要望を伝えてみる。すると「すみません、もう一度仰っていただけますか」と言われた。同じことを繰り返す。すると戸惑ったトーンで「本当に申し訳ございません。言い直していただけますか」と返事した。

戸惑う様子は芸が細かくて結構だが、それなら対応内容の設定をもっと頑張ってほしい。結局相手は根負けし「別のスタッフにお繋ぎします」と電話を転送した。最初からそうしとけ、と思った。

「はい、どのようなご用件でしょうか」
男性の声だった。まさか、こいつもAI?

こちらの希望を伝えたところ「確認いたします。ホテルはどちらですか」と質問された。

「シカゴです。あなたはシカゴのスタッフではないのですか?」
「いいえ、こちらはニューヨークのセンターです」

どうやらホテルのAIを困らせると、罰として遠くへ飛ばされるらしい。どうしても聞きたくなり尋ねた。

「ホテルに電話したらAIに対応されて、話も噛み合わなかったんです。あのぅ、あなたは人間ですか?」

Are you human?
僕が義務教育を受けていた頃の教科書に載っていたら、This is a pen.並に「いつ使うの?」と疑問視されたであろう英語が出た。これも時代の流れか。

「はい、人間ですよ、my friend」

マイフレンドかい。なれなれしい設定の人間だな。

そこからこの人は、顔も見えない赤の他人の日本人に対してマイフレンドと呼びかけながら、あれこれ調べて対応してくれた。

「この番号にかけてください。直接人が対応してくれるはずです」
「どうもありがとう」
「幸運を、マイフレンド」

AIの時とは異なる種類のモヤモヤを感じながら僕は電話を切った。

教えてもらった電話番号にかけたら女性が出た。この声、聞いたことがある。嫌な予感がして確認してみると、最初に僕が使った番号だった。おい、振り出しに戻ったぞ、マイフレンド...

イライラした僕はAI相手に関西弁で八つ当たりをすることにした。どうせAIだし。

「あんたはええねん、はよ人間に代わりや」
「すみません、もう一度仰っていただけますか」
「時間の無駄や。日本語わからんやろ」
「あの、すみません、もう一度お願いします」
「AIが戸惑ったフリせんでもええから」
「別のスタッフにお繋ぎします」
関西弁だったからかAIは前より早く諦めた。それでも「手間取らすなや」である。

またニューヨークに飛ばされるのか。長時間のフライトの後、たらい回し in the USAはツライなと思っていたら今度はちゃんとホテルの人間に繋がった。高い料金を取るホテルの割には喋り方が雑で、間違いなく人だと断言できたが、微妙な気持ちになった。担当者の男性はやる気のない感じで調べて、残念ながら掃除がまだ済んでおらずアーリーチェックインはできませんと述べた。

「悲しいぜ、マイフレンド」と言いたかった。

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