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2022年6月の記事一覧
詩18「こもりうた」
汗をかいたオレンジ絞って昔の話をした
ワインとクラッカー割れた鏡
朧げな記憶が心地よくて
そのまま眠りそうになる
全て肯定するよ君の話を
砂の中の都の大冒険も
君の天使が磔刑にあった話も
全てが心地よい子守唄
痩せたロバがいななくまで
続けてくれ酒はあるから
おじいさんが乗ってたプロペラ機は
藤の色だったと聞く
真偽はいいんだ残ってないし
君を乗せる夢を見ていいだろう
なんて幸せな夜
私は幸せな亡
詩13「カサブランカ」
雑然とした庭だった
百合が雑草のように咲いていた
ある日通ると百合の首は全部持ち去られてた
首を無くした百合の茎は真っ直ぐ伸びていた
その家にはおばあさんが一人住んでいた
夜中おばあさんがぱちんぱちんと切り落としたのか
花泥棒が楽しむには花だけすぎる
それからすぐ家は更地になった
布団の周りに百合を撒いて
その中で眠るおばあさんを思った
それは復讐のようだ
カサブランカを女王のように従えて
死に
詩12「ビー玉を投げる」
黒い海にビー玉を落としてかさを増す
何にもならないのメタファー
でも一日はそうして積もってく
海の底では低音のギター聴こえて
もう動けなくなりそうだけど
ギタリストの指が魅力的だから
魅入られる前に浮上する
工業地帯の真ん中に顔を出し
クルーズ船をやり過ごし
私だけの工場を見る
炎と煙の城は夜も生きている
退屈すぎる夜はアオサギについて歩く
わたしの焼けた城を見た鳥は一人
かつて女王だったわたし