親は子を殴る
普通の家庭では、どれくらい頬をはたかれるんだろ。
頭をぺしっとはたかれることはよくあると聞くけれど、その頻度や重さはきっと家庭によりけりだろう。
私の感覚では、うちはよくはたかれる家だった。
少なくとも私は小さい頃、ビンタやゲンコツをされない日はなかったと記憶している。あと、めちゃくちゃつねられた。つねられるのはすごく痛いんだ。
とにかく、大なり小なり毎日よく痛い思いをした。
中にはピアノの重い蓋を手の上で閉められたり、母が怒って投げた空き缶が私の目に直撃してまぶたが切れたり(そこだけ今でもまつげがない)、怪我レベルのものも少なからずあった。
一番痛くて悲しかったのは、指が切れて縫ったこと。
その日は運悪く平日の夕飯どきに怒られ、ご飯の入ったお茶碗を洗い場に叩きつけられてしまった。私のお茶碗はきれいに割れて、3つくらいの破片になった。ご飯は濡れた洗い場でまだ食べられそうだった。
もったいなかった。
お茶碗もお米も。
私は泣きながらお茶碗の破片を成形して、手で包んで割れたところを押さえながら、そのなかに濡れたお米を入れた。それならなんとか食べられると思った。
そうしたら母に
「誰が食べていいって言ったのよ!」
と、殴られ吹っ飛ばされた。文字通り。
お米は飛んだ。お茶碗も破片になって飛んだ。
私も飛んだ。
お茶碗の破片で左の小指がざっくりと切れ、血だらけになり、びっくりして涙が止まった。
そうしたら今度は母がなぜか泣きそうな顔になって、「もうっ!!!」と深いため息をついた。
そのあとは夜間病院で何針か縫うことになった。
夏どきで、その夏は学校のプールに参加できなかったのがひどく悲しかった。