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【エッセイ】義父の枝豆

夏の暑い盛りでも、夜になると涼しい風が入ってくる日も時にはある。
我が家は、古い団地の12階にありベランダから団地に囲まれた公園が見える。
近頃、夜になると公園で遊ぶ子供の声が聞こえてくる。
日中は暑すぎて危険だからだろう。涼しくなった夜の8時9時頃になって賑やかになる。
そんな気持ちの良い夜に我が家で恒例となっているのが、夕食を終えた後の二次会だ。

キャンプ用の折り畳みチェアを二脚と小さい机をベランダに出し、
それぞれ好みのドリンクとつまみを用意する。
今日こんなことがあったとかくだらない話題から、家庭に関わる真面目な議題まで、夫婦の語らいの時間になっている。

そんな時に、語らいの最高のお供が枝豆だ。
しかし、スーパーで枝豆を買うことは滅多にない。
買う気が起きないのだ。
義父の育てた枝豆を食べるようになってから、滅多にスーパーで枝豆は買わない。

妻の両親は東京近郊に暮らしているのだが、リタイアしてからは近所の畑をかりて、家庭菜園を楽しんでいる。
収穫があると、お裾分けをいただけるわけだが、中でも一番嬉しいのが枝豆だ。
不揃いでプロの農家が作ったものに比べたら見栄えは悪いけれど、その日の朝にとれたばかりの枝豆はムッとするような土の匂いがする。
土を洗い落として、塩で揉んで、茹で上がると、食欲をそそる香りが辺りに立ち込める。

枝豆の味がしっかりと感じられるのは、朝採れたばかりの新鮮さのおかげだろうか。
枝豆に限らず、スーパーの野菜たちは野菜本来の味が薄れてしまっている。
それは大量生産の結果だろうか、収穫されてから時間が経っているからだろうか。
その野菜の旬によらず、いつでも手に入るスーパーマーケットは、とても便利だが、こうして新鮮なものをいただいて旬を感じると、自分の中の季節の体内時計が調整される感覚がある。

近頃は猛暑続きで我慢していては体を壊してしまうが、
かといって連日冷房の効いた部屋で過ごしていては、それはそれで夏に体が追いつかず、なんだか体の調子もいまいち。
少し暑さの和らいだ日には、外の風に当たって、旬の枝豆をあてにビールを飲むに限る。


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