音もなく ふいに落ちてく 夏模様
2021.8.27(金曜日) at the end of summer.
花とお菓子を買いに行く。
なぜだろう、私の家族はみな夏に死んだ。父、母、義父、義母。偶然だろうと思うが、漠然と私や夫も夏に死ぬのかもしれないと思っている。個人的には冬がいいと思っているのだけど、こればっかりはそううまくはいかない。今日はその中の義母の命日である。義母はとてもわかりやすい人だった。好き嫌いがはっきりしていて、誰に対しても裏表のない付き合いをする人だった。好物もはっきりしていて、洒落たスイーツではなく喫茶店で食べるイチゴショートケーキが好きだった。それともうひとつは花。それも薔薇のような派手な花が好きだった。私に対する最後の言葉は「イトカズちゃん、M(夫)のことよろしくね。あなただけが頼りなの」だった。その言葉を聞いてしまったものだから、その言葉通り今もよろしく夫と暮らしている。
赤い薔薇とイチゴショートケーキを写真の前に置く。
*
暑いけど不快ではないのは湿気がないからだろう。カラカラッとした風が吹いている。これは秋からのちょっとした思わせぶりなプレゼントだろうか。でも「まだまだ君のものにはならないよ」という秋特有のプライドの高さは否めない。私は秋というより晩秋が好きで、冬まであと何秒?とカウントダウンが始まるくらいの季節が好きだ。もちろんその後の冬も好きだ。カウントダウンまでには程遠いが、今日のような思わせぶりな秋の風を感じられることがちょっと嬉しい。
今読んでる本の中に、『昭和の時代の夏にはどこにでも咲いていたクレオメという花があって、それはまさしく昭和の夏という光景だったけど、今はどこにも咲いていない』というふうなことが書いてあって、私も昭和生まれだけどクレオメなんて花は聞いたことがないなと気になってネットで調べてみた。それは菜の花をピンクにしたような花で、やっぱり見たことはなかった。著者は東京出身だということなので、東京に多く咲いていた花なんだろうか...私にとっての夏の花といえばセイタカアワダチソウだ。これは今でも公園の空き地や住宅の裏なんかでよく見ることができる。子供の頃は自分の背丈よりもはるかに高く育つセイタカアワダチソウが少し怖くもあった。綺麗とか可愛いという花ではなくてどんな荒野でもたくましく生きる花というイメージだ。照りつける太陽と喧しく鳴く蝉とセイタカアワダチソウ...私の中ではそれが昭和の夏のそのものだった。
もうすぐ夏も終わる。
良いか悪いかは別として...