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油断した夜、ラブリーさが滲み出る
一歩進むごとに、過去の一歩が失くなっていく。
いつかこの場所もゼロになってしまうのだろう。
『霜柱を踏みながら 21』
私はまだ20代前半という年齢だったにもかかわらず、胃・十二指腸潰瘍を患っていた。原因はおそらくストレスだろうと医者に説明された。その医者の説明には1ミリも反論はなかった。その時は自覚できなかったが、今から思うと相当なストレスも抱えていたのだろう。それを紛らわすためにお酒も飲んでいた。友人たちはに「おじさんの病気みたいだね」とからかわれた。それに対しても1ミリも反論はなかった。すでに十二指腸からの出血が始まっていて、その痛みで眠れない日々を過ごしていた。完全な食事療法と薬で2ヶ月半で完治した。かといってすべてのストレスがなくなったわけではなかった。
さて、恋の話をしよう。私のようなものでも恋くらいは何度かした。恋をするということは人生に必要不可欠とまでは言わないが、ある程度人生に楽しみやコクを与えてくれるのは確かなようだ。でも恋をするというのは楽しいだけではなくてうまくいかない時は苦しみや悲しみをもたらし、時にはそれによって命を落とすことさえある。それを覚悟の上で(覚悟できない人もいるが...)恋をするのだから人間ってとても勇気のある生き物だと思う。
私はその当時、好きな男性がいた。同じ仕事場の人で外観もなかなかのものではにかみながら笑う顔は女性たちを虜にしていた。私はそういう人を好きになることはそれまではなかった。いつもはモテる人の影に隠れてちょっと卑屈になっている人に心を惹かれるタイプだった。それなのにどうしたことかそんなキラキラな人を好きになってしまったのが不運の始まりといえば始まりなのかもしれない。最初は私の片想いだった。それからしばらくしたら食事に誘われたり誘ったりするようになり、ひとり暮らしだった私の家に泊まっていくこともあった。そのことが会社で噂になり同僚から冷やかされたりもしたが、それはそれでまんざらでもなかった。かといって「付き合おう」と言われたわけでもなく流れでそういう関係になっていたので、私は「これって付き合ってるんだよ」と自分自身に言い聞かせることで納得していたような不安定極まりない関係だった。
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[私小説] 霜柱を踏みながら
私小説です。時系列でなく、思い出した順番で書いてます。私の個人的な思い出の物語です。
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