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うつでダウンして、バンブル無双した女の休職生活。#14

国家試験にも頻出する事案

順調だったのに急に眠れなくなり、初めて診療日を前倒しにして担当医ではない先生に診てもらい、頓服薬を貰った。

その日、私は何気なくお薬手帳を開いて驚くことになる。

私が飲んでいた薬の注釈にこう書いてあった。


<服用に関して注意すべき事項>

  • セルトラリン錠25mg

    • アルコールを含む飲料水はこの薬の作用を強くしますので、医師の許可が出るまではアルコールを控えてください

    • この薬を服用中はセイヨウオウギトウ(セント・ジョーンズワート)含有食品をとらないでください


急いで私は薬剤師さんに聞いた。
「このセイヨウオウギトウを飲むと、どうなるんですか?」
薬剤師さんは眉に皺を寄せて、丁寧に説明してくれた。

「薬が効きすぎたり、副作用として不眠、不安、口渇感、めまい、消化管症状、倦怠感、頭痛などが出ることがあります。
まぁでもこのセイヨウオウギトウって、セントジョーンズワートってお茶に入ってたりすることが多いんですけど、普通のハーブティーには入っていなくて、本当一部のお茶屋さんとかでしか売ってないやつだからそんなに心配することはないと思うんですけどね。」

私の頭の中でパズルが完全に繋がった。

私はセントジョーンズワートを飲んでいた。


厚生労働省のホームページにも説明記載がある。

セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ、St. John's Wort)は、黄色い花を咲かせる植物で、古くは古代ギリシャ時代からヨーロッパの伝統医学に使用されてきました。セントジョーンズワートという名前は、6月下旬の洗礼者ヨハネの祝日の頃に花が咲くことから、洗礼者ヨハネ(St. John)にちなんでいるようです。
歴史的には、セントジョーンズワートは、腎臓や肺の病気、不眠症、うつ病など、さまざまな症状・症状に用いられ、傷の治癒を助けるとされてきました。
現在では、うつ病、
更年期の症状注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder :ADHD)、身体症状症(身体症状に対して極端で誇張された不安を感じる状態)、強迫性障害などさまざまな症状・疾患に対してプロモーション(宣伝・販売促進)されています。セントジョーンズワートの局所使用(皮膚への塗布)は、外傷、打撲、筋肉痛などのさまざまな皮膚症状に使用されています。

https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c04/43.html

ただ、同じページに書かれている。

これまでに解明されていること

うつ病に対するセントジョーンズワートの使用と、薬との相互作用については、広範な研究が行われています。その結果、セントジョーンズワートはさまざまな薬と危険な、時には命を脅かすような相互作用を引き起こすことが明確に示されています。

https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c04/43.html


セントジョーンズワートの存在を知ったのはTwitterからだった。
よく眠れる様になる。
お茶でも、サプリメントでも販売されている。手に入れるのはそこまで難しくない。

初めてうつが寛解した後も、睡眠に対しては敏感だったのでこういった情報はかき集めては手を出せる範囲から試していた。セントジョーンズワートのハーブティーはネットで購入した。
大量に入っていたのでそこまで飲んでも減らず、ずっとキッチンの奥にしまってあった。

また病院に通い始め、睡眠をしっかり見直さないとと考えた時に、「そうだ、セントジョーンズワートを飲もう」と思い出した。

だから寝る前にもしっかり飲んでいたし、眠れなくてソワソワした時にも落ち着こうと思ってまた1杯飲んでいた。
自分の首をそのお茶で締めているとも全く気が付かないまま。笑える話だ。

薬剤師の友人にも連絡を入れた。
友人は真面目だから、私の近況を聞いて次の日にしっかり自分で調べた情報を教えてくれた。

「やっぱり、セルトラリンとセントジョーンズワートの相性は最悪だね。メリッサが急に眠れなくなったのは確実にそれだと思う。セルトラリンを飲まなくなるまではそのお茶は飲まない方がいい。
これ、薬剤師の国家試験でもよく出る頻出問題なんだよね。やっぱり実際本当に症状出るんだね。勉強になったわ。」

国家試験にも出るような、大事な問題を私は生活の中で、気づかず、何も考えずにやってのけていたのだ。


睡眠導入剤でも命は落とせるのか

この出来事と同じくらいか、少し経った後だったか、某歌舞伎役者が両親の自殺ほう助で逮捕された事件が大きな話題になった。

あまりこの手の暗くなるニュースは好きではなく避けている私の耳にも、この報道は入ってきた。
そして私の関心を強くひいた報道内容があった。

彼らは"睡眠導入剤を大量に摂取して"自殺を図った。という文言だ。


ひっかかった。
自殺をするときに使うのは"睡眠薬"では無いのか。"睡眠導入剤"でも人は死ぬのか。

私が処方されているのは睡眠導入剤にあたる薬だったから余計にひっかかった。


薬剤師の友達に直接連絡を入れて聞いてみた。

「この事件なんだけどさ、睡眠薬じゃなくて睡眠導入剤って書いてあるよね?睡眠導入剤でも人は死ぬの?」

「導入剤も同じ様なこと考えられるよ。飲んでる薬によってもその程度は違うけど、睡眠導入剤も脳に抑制かけるから、それがかかりすぎると呼吸系の中枢にも働きかけたり、血圧低下の症状が出ることがある。」


そして人によっては、睡眠薬≒睡眠導入剤としている医師や薬剤師も多くいるらしい。

睡眠導入剤と睡眠薬で定義を分けるとすれば「睡眠導入剤は睡眠薬の中で作用時間の短い薬を指す」ということになります。具体的に言うと、ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の薬の中で超短時間作用型が睡眠導入剤となります。

https://clinic.dmm.com/column/insomnia/306/


それでも、睡眠薬や睡眠導入剤で死ぬにはよっぽど大量摂取をしなければいけないとのことだった。

それでも私はショックだった。
自分が常飲している薬の危険性を知って、恐怖を感じていないといえば嘘になる。それでも、これが無いと今の生活は保てない。

早く治したい。そんな思いが強くなった。

薬に頼って良かったと思う一方で、薬に頼って良かったのだろうかとずっと思う自分もいる。

でもこれは、おそらく精神疾患を抱える患者さん全員が一度は頭をよぎることかもしれない。
その日も薬を横に、私の休職生活はトントンと営まれていた。

メリッサ

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