幸せの在り処
お久しゅうございます。いかがお過ごしでしょう。
大人になったからといって許されることが減るのは勘違いでありましょう。
そうでないと、とにかくそうでなければ。
誰かの記憶の中に在ることは、魔法使いではない限り許容していくしかありませんね。
きっと、それが、それこそが「生きている」ということなのでしょう。
過去の文章などを読み返し、何だか首を傾げてしまいたくなり修正を重ねることもまた、生きた年月の証なのでしょう。
気に障ることも、恐れも、不安も、絶え間なく湧き水のように溢れ出てくるもの。
まったく、終わりのないことにございます。
それでも貴方は、やはり、生きていらっしゃる、といったところでしょうか_____
本の頁をめくれば、どこからともなく風が吹き、オレンジが香りましょう。
魔法使い達はマントを翻し、
『さあ、君はもう"大方"大丈夫だ。秘密の呪文を唱えよう!』
『いいかね?必要のないことには見向きもしない。大丈夫でなくともこうしてウインクなどしておれば大抵のことは大丈夫になるのじゃ。多分、じゃ。』
『まあ、青林檎のような顔色をなさって!ご安心を。とっておきの秘訣を教えて差し上げますわ。
"貴方が一生懸命選んだ道"そこにだけ咲いている特別なお花のこと、そのことだけを考えて下さいな。貴方が貴方らしい道を選ぶ限り、そのお花は常に貴方のそばに咲いておりますのよ、保証しますわ。』
『………地図がないのは心細いかもしれない。が、そんなものは所詮、不測の事態には役に立たない鎖のようなものだ。……..最初から持っていなければ、その鎖に縛られることもない。君なら、大丈夫だ。』
『う〜ん。役に立ったものも、必要なくなったらさっさと置いていけばいいんだよ。結局、必要なものは、必要な時に現れるんだからさ。』
『出発してからわかることもある、ということさ。ありきたりだと思うかい?寄り道が必要なこともあるだろう。君は自由に羽ばたける。君の心はそのことを、本当はよくわかっているね。』
『さあ、こちらへどうぞ。ここから先、貴方が生きたい場所、貴方なら何処へでもいけるでしょう。ただし、ひとつだけ約束を。
"貴方は、貴方だけで幸せになれること"
このことは、この先どんなに悲しく孤独な時であっても、決してお忘れになりませぬよう。
貴方がそれさえ覚えていて下されば、我々、いえ貴方の周りの"存在"は、いつだって力を授けることができましょう。
『そばにいないようにおもわれる者も、貴方を月から見守っているのですから。』
『君に!
お主に
貴方に
…君に
きみに
君に
貴方様に
_____祝福を』
君が、どんなところにいようとも、どんな風になろうとも。
そう魔法使い達が呟けば、辺り一面にオレンジはいっそう強く香り、
それはもう目眩がする程に強く、
真夜中の暗闇の中にさえ思い出すことができるように思われ、
そうして貴方の心の中にも、暖かいオレンジ色の木漏れ日が差し込み、
その鬱蒼とした木々の間を、
強くて、優しい、優しい風が吹くのでありました。
その時だけはまるで、永遠のように。
2024.2.14 (2022.4.4〜)