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日本の病院へ久しぶりに行って見つけた、アメリカと日本の小さくて大きな違い


日本のかかりつけ医に出会えた経緯


もう10年以上定期的に顔を出している精神科/内科がある。
思春期にはきちんと対応してもらえる場所が少なかった。薬物療法をせず環境を変えましょうとか、親との対立を避けましょうとか、適当なことばかりいう医者だらけだった思春期外来は正直意味がわからなかった。親との確執、将来への漠然とした不安、友好関係の築き方なんてものの対処法を知りたくて行っている…わけではなく、もちろんそれも含める場合もあるが自分がどうしたらいいか、どんな治療があるのかを探しにいっていたのにいつも答えは「親と話しましょう、家族セッションをしましょう」という私には無理難題である事柄ばかり押し付けてくる。だからなんとなく思春期と名前の付いた診察室は嫌いだった。

そんな時に親の友人から紹介されたのが今の精神科医で、この人はかなりの凄腕。ひとりひとりに時間を割いて話をきいて、たまにわかり切っている対処法も話すが薬物投与もしっかりしてくれる。これが合わない、と次に伝えればすぐに似たような薬を考えて提案してくれる。いやだったら処方はされないし、患者第一に考えていることがよくわかる。電話でも対応をしてくださるし、障害年金や障害者手帳、自立支援制度についての説明もきちんとしてもらえる。受付の方も患者の負担費用がどうしたら減らせるか考えて助言をくれるので大変助かっている。内科としても機能しているので、なんでも話せるお医者さんだ。

病院で何を話すかテンプレを作る患者への反応

さて、日本の病院で何を話すか、私はいつも戸惑う。感情ばかり伝えても相手は困るだろうし、かといって淡々と事実を話しても相手にはうまく伝わらない。では医者がどんなものを求めているか、私、つまり患者が何を伝えたいかをどうまとめたらいいだろうと考え辿り着いたのが、いつも投げかけられる質問に対しての回答をまとめてメモしていくこと。
今回は自分が何を伝えたいのか、どんなことを尋ねられるのか忘れていたのでこのテンプレを使った。

https://www.anshin-kokoro.com/Portals/0/resources/tool/memo_dl.pdf

生活リズムや食事についてはかなりのバロメーターだと思うので、最新の体重も伝えてから、薬の影響を伝えていく。
今飲んでいるのはこういうものです、海外でこれを処方されています。あなたが処方してくれたこれらは飲んでいません。と伝える。
これが割とうまく行った。先生も喜んでくださって、まとめられているとやりやすいと教えてくれた。

これをアメリカでやると、逆効果なのである。
何せ感情が先に来るお国柄なので(こうやってまとめてしまうのは日本人すぎるということぐらい自明)、とにかくどれくらい辛いのか、まるでアクターになったかのように伝える必要がある。もちろんメモは大切だが、症状なんかは病院のサイトから患者用ページにアクセス、この中でメッセージ機能が使えるので連絡ができる。つまり、事柄を伝える時はメッセージ、何かがどれくらい大変で、と伝えたいときは対面が良いというのが今のところ大きな差異である。

処方されている薬が海外調剤である場合、医者はもちろん困惑する。

これは毎回ぶつかるので、両国合わせて考えてみたい。世界それぞれの国の医療基準があって、処方できるもの、劇薬として処方しないもの、案外簡単に処方されてしまうものはそれぞれ存在する。

日本の精神薬はアメリカに存在しないものばかり


まず日本人がよく聞き慣れたデパスは、アメリカだと認可されていない。つまり処方してもらえない。どうやら研究目的の利用以外許可されていないらしい。ベタナミンもまた死亡例が出たので処方なし。
つまり、日本で使う精神科のほとんどの薬はアメリカだと劇薬指定みたいなもので、とにかく処方されないものばかり。
決してアメリカの薬全部が弱いわけではないが、ロキソニンも処方されないし、ロラゼパムもだめとなるといよいよ慣れている薬がなくなってくる。
大体決まって処方されるのは日本でもお馴染みだがクエチアピン、レクサプロあたり。サインバルタも処方されたことはある。
では今回何にぶつかったかというと、処方可能な分量と種類。
ゾフランとミドドリンである。

ゾフランとはなんぞや。

効能または効果
○抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)
○術後の消化器症状(悪心、嘔吐)

医療用医薬品 : オンダンセトロン

簡単に言えば抗がん剤治療を受けている人の吐き気の時に処方される薬である。
そりゃ簡単に処方できるわけがない。代わりになるものを探してくれたが、これまた私にとって敵のような薬だったのでやめた。代わりにプリンペランが処方されたが、しばらくゾフランの残りを使う予定である。
アメリカでもおいそれと処方するものではないが、低体重で栄養失調、EDSによる消化器の問題などを考慮してこれが渡されたので、診療所のような立ち位置の日本の医師には確かに処方が難しいのかもしれない。
ただ、ゾフランは確かに助かるので早めに大きな病院で処方してもらいたい。

ミドドリンとはなんだ。

ミドドリン(別名メトリジン)は起立性調節障害に使われる薬である。

効能または効果
本態性低血圧、起立性低血圧

医療用医薬品 : ミドドリン塩酸塩

血圧を上げるような効果があるような、ないような薬である。以前何処かの医者がミドドリン/メトリジンを見て「血圧はこんなので上がらん」と言っていたが正直医者の感想はわからないことが多い。
これらが、日本だと”重症の場合は1日8mgまで増量できる”らしい。
しかしアメリカでは、タブレットは1mg/5mg/10mgがあり、1日3回の服用なので最大が30mgという計算になる。私の場合、15mgで日々やりくりしているので、日本の最大8mgだと効用がほぼない。
しかし規則は規則であるし、医師は仕方なく上限まで処方してくれたが、もうこれは仕方がないのかもしれない。大学病院なんかに行けば、新たな方法があるかもしれないがこれが精一杯である。

アメリカはオンラインで主治医と繋がり、検査結果/カルテも見れる

これは割とありがたいことだと思う。完全予約制で「今日ふらっと整形外科へ行こう」が不可能なアメリカでは、かかりつけ医と今までかかったことのある医師と簡単に連絡を取れるシステムが存在する。
大体有名なのがMyChartというもので、ログインしたら医師が書いたカルテ、受診時の身長体重やバイタル、今までの検査結果まで、知りたい情報が全て集まっている。これを医師同士でも共有していくわけだが、患者の私ももちろんそれが見れるので便利。医師が話を聞きながらカタカタとタイピングするのは若干「聞いてる?」とは思うが、しっかりヒアリングをタイピングして医師の所見まで付随したサマリー(その日の要約)が受診後数時間でここにアップロードされるのである。

MyChartを通して連絡をすれば24-48時間以内に医師から返事がくる

彼らに今の具合や薬の副作用、それ以外の緊急を要さない話をここで送付すれば、すぐに返事が帰ってくる。そして合わない薬をやめたり、新たに違う薬を処方してくれることもある。
わざわざ次の通院まで待たなくても新しい薬を処方してもらえるし、必要なアドバイスは一通りもらえる。もしそこで訴えた内容が緊急性高めだと判断されたら近くのWalk-in (その日に行ける診療所)へ行くことを勧めてくれるので、割とフランクにコミュニケーションは取れるのである。内科の医師も抗うつ薬を処方できるので、ちょっと病んだらすぐに…とよく言われる「アメリカは抗不安薬/抗うつ薬をキャンディのように飲んでいる」は結構本当である。とりあえずこれで耐え忍んで、次対面で診察した時に次どういった治療をするか考えよう。という魂胆だと思う。

処方箋は渡されない

日本でなかなか面倒だなと思うのが、処方箋を紙でもらってそれを薬局に届けにいって、おくすり手帳を出して、保険証を、という動作である。アメリカでは医師が処方したものはこちらが指定した薬局にメールされるので、患者は自分が指定した薬局から「薬できたよ」のメッセージを受け取ったら薬局へ顔を出して、もらっておしまい。
きっと便宜上以外の問題があるのだろうし、ここは色々と文句をいう立場ではないと思う(以前行っていた日本の病院はファックス制度を導入していたし)ので、やめておく。

薬局の説明と質問がなかなかな問題説。

日本で処方箋を受け取る時に一つ思ったのが、
「今回湿布が出ていますが、何処か怪我ですか?」
「この薬が出ていますが、どんな症状なんですか?」
である。
アメリカでも確かに説明を受けるし、何に使うのかは質問されることもあるがかなり個室寄りのスペースでの質問、受け取りなので周りに説明を聞かれることもない。
日本のだだっ広い薬局で大声で「ああ、実は難病の痛みで」とか、「それは摂食障害の薬で」なんて、あんまり言いたくないと思う。日本とはそういう国だろうし、人にプライベートなことを聞かれるのはどちらの国の人もやはり嫌だと思う。
かなり広い土地を持って、かなり大きな薬局で薬を受け取れるアメリカでさえわざわざ声の響かないような作りの場所で渡されるのだから、日本もそれくらいの配慮してみたらどうかなとは思う。
ああやって質問するのは意味があるのだろうし、ただの雑談だとは思わない。きっと把握してもらえるのだろうし、アドバイスももらえる。ただ、あんなに開放感のあるオフィスで説明されたい人は、多分、いない。


以上、なんとなく感じたそれぞれの差異。これからもまたぽつぽつと書いていくかもしれない。
紹介状争いとか、アメリカの医療の粗雑さとか色々と面白いことはあるのだが病人からしたらちっとも面白くない。お粗末な連絡網についての愚痴はたぶんもう書いたし、またどこかで書くだろう。



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