BTSとキングスマンの共通点
BTS(以下バンタン)がキングスマンのセットで舞う。これはキングスマン好きにはたまらない光景なのではないでしょうか。しかも、それは忘れた頃にやってくる。ハイブ(バンタン所属会社)の巧妙な仕掛けにオタク悶え苦しみます。
でもそれはきっと、ハイブの気紛れでは無い。ちゃんとしかるべき理由があるはずだと思っていたので、殴り書きのメモですが、オタクの主観ありありのうんちくを聞いて頂けますでしょうか。
2015年に公開された「キングスマン ザ・シークレット・サービス」は、エグジー《ポテンシャルが高く才能はあるけれど、環境のせいで上手くその能力を発揮することが出来ずプスプスしていた労働者階級の少年》が大成していくシンデレラストーリーです。
公開当時の2015年頃のバンタンも、小さな事務所から誕生したのち、周りの逆境に耐えながらも、素晴らしいポテンシャルを持った7人の少年達が努力を重ねぐんぐん成長している真っ只中にありました。
BigHit(当時のバンタン事務所名)は、これからのバンタンの辿る道をエグジーの成長になぞらえていたのでしょうか。キングスマン公開後、翌年のシーズングリーティングのモチーフにキングスマンを取り入れることを決定します。
アジア圏(主に韓国と中国)で爆発的な人気があったキングスマンを取り入れるという選択は、マーケティング戦略としてごく自然であるし、「逆境に打ち勝ち大成する」というキングスマンのカラーが当時のバンタンの反骨精神と合致したのでしょう。
そしてもう少し深く切り込んで見てみると、キングスマンもバンタンも、ファンの間でカップリング文化が盛んにあったという共通点が見えて来ます。この文化はエンターテイメントの世界で成功するための1つの大きなポイントでもあり、同じファン層を獲得出来た要因でもあったのでしょう。
キングスマンの監督マシュー・ヴォーンは生粋のオタク監督です。そしてB級映画を昇華させる天才です。「キック・アス」の監督だと言えばその個性が分かりやすいでしょうか。
オタクが何にときめくかをこちらが浮かれるほど良く分かっているので、「キングスマン」ではガジェット要素あり、スパイ物のオマージュあり、そしてファンが自由にカップリング出来るシーンの演出にも卓越していました。「英国の宿舎」や「自分のボスと24時間共に過ごさなければならないテスト」もそういった文化を計算した上で成り立っていたと思います。観客を虜にし、ヴォーン監督の手のひらの上で転がされるどころか起き上がって踊ってしまうのです。
【ペップセ(silver spoon)という共通点】
2016年にバンタンから発表された『ペップセ(silver spoon)』。いわゆる『銀の匙』は、欧米では「生まれた身分で人生全て決まる」というネガティブな階級論の象徴として存在していました。映画の中でもエグジーが 《silver spoon》という言葉を用いて、上流階級のイギリス英語を話す諜報員ハリーに、下町の言葉(いわゆるラップの様なリズム)で激しく楯突くシーンがあります。
そのセリフが含む深い怒りと悲しみの色が、成長するためにもがきながら様々な軋轢で苦しんでいただろうバンタンの『ペップセ(silver spoon )』と滲んで重なりました。
【その後のエグジーとバンタン】
その後のエグジーはというと、なんと王女様と結婚。労働者階級の少年が王国の女王と結ばれた希望に満ちたシンデレラストーリーです。
現在のバンタンも、ご存知の通り輝かんばかりの無双状態。アジア人初のBillboard HOT100 4週連続1位、グラミーノミネートなど様々な音楽業界の記録を塗り替え、韓国の特別使節として国連でパフォーマンスもするなど、あどけない少年だったメンバーそれぞれが、血の滲むような努力の末、世界に影響力を持つ素敵な男性に成長しています。
しかし、キングスマンブームが落ち着いてもなお、たびたび美術セットとしてキングスマンを登場させているのはなぜでしょうか?
この映画では「環境が変わっても変わらぬ心」の部分をとても大事にしています。エグジーもメンバーも、どんなに大成しても素朴な心はずっとそのまま。
「マナーが人をつくる : manner makes man 」
というキングスマンのテーマ(決め台詞)は、身分や階級に関係なく、心が紳士であることこそが人間を作っていく、という人生の真理を説いたメッセージです。
バンタンがキングスマンに今なおこだわる理由、それは実はこの部分が大きいように思います。
心はあの頃のままだよ、と。
「今なお」というより、「今こそ」なのか。
ハイブの手のひらの上で転がされている私は、まんまと「そうよね。」と思ってしまうのです。
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